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バスケットボールによる怪我について

WJBL(バスケットボール女子日本リーグ)による外傷調査では、膝関節・足関節が圧倒的に多いと報告されています。試合での発生率は練習の10倍以上リスクがあり、新人選手の7割に下肢のケガをした経験があるとされています。成長期のケガでは小学生では男女共に膝関節が第1位となっており、原因の半数がオスグッド病となっています。中学生20358人を対象とした調査では女子では膝関節・足関節の外傷が有意に多く、膝関節の前十字靭帯損傷の発生率が男性の2~7倍とされています。
女子選手の膝関節の怪我の発生頻度は高い傾向にあります。バスケットボールによって発生する外傷・障害は下肢に圧倒的に多いと報告されていますが、体幹での発生も比較的多いとされています。様々な競技のアスリートに対する海外のアンケート調査では、バスケットボール選手が最も腰痛症を抱える割合が高いと報告されています。バスケットボールは下肢での外傷が最も多いとされていますが、腰痛症の発症リスクが高いこともわかります。

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怪我の種類

足関節捻挫

カッティングやジャンプからの着地、急激なストップ動作により発生します。足関節捻挫は一度発生すると繰り返しやすい怪我とされています。捻挫により足関節周りの靭帯は緩むため再発しやすいとされています。再発を繰り返すと足関節の可動域低下や筋力低下などを生じる可能性があります。

前十字靭帯損傷

人とぶつかったり足が絡んだりする接触型損傷と、誰とも接触なく生じる非接触型損傷に分類されます。前述したように膝関節の怪我は女子に多く、前十字靭帯損傷は非接触型がほとんどとされています。足関節捻挫と同様にカッティング、片脚での着地動作、片脚でのストップ動作でバランスを崩して膝の痛みを生じて発生するとされています。
男性と比較して筋力が低いことや筋量の低下、膝が内に入りやすい、動作の際に重心が後方に残ることなどが原因として挙げられます。

腰痛

多くはX線検査などで異常が見つからない筋筋膜性腰痛とされています。動作の仕方に問題があったり、関節の可動域の減少や筋力の低下も原因となります。

腰痛の種類

腰痛には特異的腰痛と非特異的腰痛と分類することができます。特異的腰痛とは医師の診察および画像の検査(X線やMRIなど)で腰痛の原因が特定できるものをいいます。原因としては椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、圧迫骨折、腰椎分離症などがあり腰痛の約15%を占めるとされています。
非特異的腰痛とは医師が診察してもX線検査をしても原因がわからないものをいい、腰痛の約85%占めます。ぎっくり腰は腰椎捻挫や腰部挫傷と診断されることが多く非特異的腰痛に分類されます。このように非特異的腰痛が多いとされており、バスケットボールでの腰痛も非特異的腰痛は発症機序が多岐にわたるとされています。

原因

姿勢

普段の姿勢が猫背であると椎間関節や椎間板へのストレス、腰背部の筋肉が伸張され痛みの原因となります。反対に胸を張りすぎて背中を反る姿勢でも腰背部の筋肉や関節に負担がかかるため正しい姿勢を普段からとることが推奨されます。

関節、筋の機能

関節の可動域や筋の柔軟性が低下していると怪我を発症するリスクが高くなります。バスケットボールでは体幹(腰椎)、股関節、肩関節の機能が重要となります。体幹では屈曲(体を曲げる)、伸展(体を反る)、回旋(体を捻る)の可動域がしっかりあるかどうかが重要です。股関節は柔軟な動きをするため最も重要とされており、大腿部に付着している大腿四頭筋、ハムストリングスに柔軟性があるかどうかを確かめる必要があります。
どちらも骨盤から膝関節にかけて付着しており、骨盤・腰椎の動きに大きな影響を及ぼします。簡単な検査方法として大腿四頭筋はうつ伏せで膝を曲げて踵が殿部につくかどうかを確かめます。ハムストリングスは立位で体を曲げて両手が床につくかどうか、長座体前屈などがあります。体幹機能も非常に重要で特に腹部深層の筋肉の機能が大切です。腹横筋や多裂筋などのインナーマッスルにより体幹・脊柱の安定性が図られ、動作時の安定性が高まることにより障害の予防となります。体幹のインナーマッスルの簡単なトレーニングとしてはドローインという方法が挙げられます。
深呼吸の要領で深く息を吸いこみ、口をすぼめて(ローソクの火を消す時のように)ゆっくりと息を吐きながら(5~10秒程度)お腹をへこませることでインナーマッスルを賦活することができます。さらに息を吐く時にお尻の穴を締めるようにするとより効果的であるとされています。関節や筋肉の機能低下により腰痛発症リスクが高くなるため予防をしっかりすることが必要となります。

動作

バスケットボールの動作では走る、止まる、方向転換、跳ぶ、パスやシュート、投げるなどがあります。また対人プレーも多いため怪我をする場面は多くあります。これらの動作を行うためには下肢・体幹でしっかりと支えることが出来ないといけません。正しく行うためにはスクワットなどが有効です。正しいトレーニング、動作方法を以下に紹介します。

スクワット

体幹を意識(腹筋に力を入れる)して胸を張ります。膝の向きは真っすぐで特に内側には入らないようにします。内側に入る動作を覚えてしまうと前述した前十字靭帯損傷のリスクとなります。お尻を後方に突き出しながら股関節をしっかり曲げていき、殿部の筋肉に力が入っていることを確認しましょう。

*片脚でのスクワットもポイントは同様です。片脚でのスクワットは跳んだ後の着地時の正しい姿勢で制御する練習となります。

サイドランジ

サイドランジとは横へのステップ動作の練習となります。方向転換やパスやシュートの前にも使うことが多い動作です。
姿勢はスクワットと同様で体幹を意識して胸を張り膝と支持する足のつま先は真っすぐ前を向くように心掛けましょう。横へステップする際には足の力を使って蹴り出し、殿部の筋肉が疲れるように行います。

スクワット姿勢からのジャンプ

スクワットの応用動作です。ジャンプから着地の際の正しい姿勢、制御の練習となります。体幹を意識してスクワット姿勢からジャンプし、空中でも力を抜かないようにします。肩幅ぐらいでの着地を意識してお尻を後方に突き出しながら股関節をしっかり曲げるように意識します。体幹・殿部の筋肉にしっかり力が入っていることを確認して下さい。膝が内側に入らないように注意しましょう。

まとめ

今回はバスケットボールの怪我の原因から予防までを紹介しました。正しい知識を持って怪我なくバスケットボールを楽しんで頂けたらと思います。運動前後には、ストレッチや筋膜リリースなどのケアを行い、体幹トレーニング等の腰痛体操を取り入れましょう。

<参考文献>
・頸部・体幹のスポーツ障害の理学療法における臨床推論 p896-903
理学療法Vo.l33 No.10 2016 メディカルプレス
・JBAブロックエンデバー指導者講習会 ジュニア期の外傷・障害の予防
公益財団法人日本バスケットボール協会 スポーツ医科学委員会
・腰部・体幹機能障害とアスレティックトレーニング
日本アスレティックトレーニング学会誌 第1号 p19-25(2019)
・スポーツ外傷・障害予防ガイドブック
公益財団法人スポーツ安全協会 公益財団法人日本体育協会
・バスケットボールにおけるコアスタビリティトレーニングの実際 p1020-1027
理学療法 Vol.34 No.11 2017 メディカルプレス
・現場でのトレーニング法(復帰直前における) 2.バスケットボール p477-481
スポーツ外傷・障害の理学診断理学療法ガイド 臨床スポーツ医学編集委員会

<参考>
アーチフィジカルケアグループ

著者情報

腰痛メディア編集部
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