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バドミントンは腰痛になりやすい?
バドミントンという競技は、体育でのレクリエーションレベルから親しまれ、スポーツ競技としても幅広く行われています。
一度もバドミントンをしたことがない、という人のほうが少ないのではないでしょうか?
2021年現在、多くの日本人が世界ランキングの上位に名を連ねており、テレビでバドミントンのハイライトを見かけることも多くなっています。
そんなバドミントンですが、シャトルを反復して追うことによって怪我が多いスポーツの1つでもあります。
今回は、バドミントンによる腰痛に関して詳しく述べていきたいと思います。
バドミントンの競技特性について
まずはバドミントンという競技の特性に関して知っていきましょう。
バドミントンはシングルスにて奥行きが13.4m、幅が5.18mと狭い範囲ですので、基本的に5歩圏内を移動する競技です。
バドミントンはスマッシュの初速が最も速い競技として有名で、その速さは時速493kmにも達するそうです。
これはギネス記録にも認定されています。
バドミントンの運動量は一見狭い範囲内での動きなので少ないように感じますが、実は1時間に500kcalにも達し、他のスポーツと比較してもかなりハードなスポーツです。
プロの試合では、1試合でフルマラソンを走るくらいのエネルギーを消耗をするようです。
シャトルの速さが早いことと相手との距離感が近いことで、反復した体の身のこなしと動体視力が必要な競技です。
相手との駆け引きがありますので、急に速いスマッシュを打つだけでなく、手前にゆっくりシャトルを落とすような緩急が必要です。
動作としては、フォアハンドやバックハンドで打ち返しますが、打点の高さによってオーバーヘッドストロークやサイドストローク、アンダーストロークで打ち返す必要があります。
また、相手コートの遠くに飛ばすことをクリア、手前に落とすのはドロップといい、コントロールによっても身体の使い方が違います。
スマッシュは、オーバーヘッドの状態から相手のコートに鋭角に打ち込む動作です。
バドミントンのフットワークは、他のスポーツにはない点がいくつか見られます。
狭いコート内での動作ですから、基本的に走ることは必要ありません。
サイドステップやジャンプを反復して行うことによって成立するスポーツなのです。
シャトルを拾いつつ、自陣のコートの真ん中であるホームポジションに戻るということを繰り返します。
バドミントンによる腰痛の原因とは
バドミントンという競技は上記にもありますが、狭いコートの中で反復したストップアンドゴーを繰り返します。
また、オーバーヘッドでの動きやアンダーを拾う動き、スマッシュ動作が主になってきます。
まず、反復するストップアンドゴーに関してですが、急激なストップ動作は下半身だけでなく、体幹の強さが必要です。
シャトルに飛びつく動作も多いため、体幹が弱いとバランスが崩れますし、腰部に負担がかかります。
次に、オーバーヘッドでのストロークを含むスマッシュ動作に関してです。
スマッシュ動作というのは、右にラケットを持っている場合、オーバーヘッドの姿勢で右の後方に腰を回転させて力を貯めてから、前方にラケットを振りながら腰を左回転させて前方に振り切ります。
オーバーヘッドの姿勢は、右後方にラケットを構えるため、右の腰の関節が狭くなる状態となります。
その状態から、貯めた力を前方にラケットを振り抜きシャトルを打ちます。
この際、腰はオーバーヘッドの状態から反対に回転するので、右の腰の関節は開放され開く動作になるのです。
腰の回転が繰り返されることが、腰痛の要因となっています。
最後に、アンダーストロークでシャトルを拾い飛びつく動作ですが、腰を前方に曲げた状態で急激なストップがかかります。
腰を曲げた姿勢では腰の関節は開いた状態ですが、その分背筋を使って関節の安定性を高める必要があります。
アンダーストロークは、腰部の筋肉に負担がかかりやすい動作といえるでしょう。
バドミントンによる腰痛の症状
上記のことから、バドミントンで腰痛が発生したときに考えるべきことは、どういった動作で痛みが生じるかということです。
例えば、オーバーヘッドの姿勢を取り、腰を反るような姿勢になったときに痛みがでますか?
もしくは、腰を屈めるアンダーストロークのような姿勢をとったときに痛みがでますか?
腰の使い方によって、痛みの発生要因が変わってくるので、一度確認してみましょう。
腰を反るような姿勢で痛みが出る場合、腰の関節に負担がかかって痛みが生じることが多いです。
腰の椎間関節の痛みは、腰を反る動きや、腰を回転させる際に関節が狭くなることが原因で起きます。
腰の関節が狭くなることを繰り返すことで、腰の関節に炎症が起き、痛みが生じるのです。
また、屈んだときに痛みが出る場合は、腰回りの筋肉に痛みが生じていることが多いです。
屈んだ姿勢では、腰の椎間関節が狭くなることはありません。
基本的に関節が開く方向になりますので、腰の背筋群が伸ばされて、伸張と収縮を繰り返すことで筋肉に痛みが生じます。
もちろんどちらの動作も痛い場合もあります。その場合は関節も筋肉も痛みが生じている可能性があるので注意が必要です。
筋肉の使いすぎや関節に負荷がかかりすぎることによって、その箇所に炎症が起きます。
炎症が起きることによってその箇所に熱を持つことがありますし、痛みが生じます。
炎症が起きるということは、身体の異常を感知し、できるなら動かしてほしくないという身体の防御反応が働いています。
炎症が起きて痛みが生じているのにスポーツを続けるというのは、腰に負担をかけ続けて悪化させる恐れがあるので注意しましょう。
特に中学生などの成長期の身体は、骨の発達に対して筋肉や他の軟部組織の成長が追いつかず、筋肉に緊張が生じやすい状態です。
筋肉が付着しているのは骨ですから、骨を筋肉が牽引することで、付着部炎を起こすこともあります。
成長期の骨は成長軟骨が柔らかいため、腰では腰椎分離症を引き起こすことがあります。
腰椎分離症というのは、成長期に過度の負荷を繰り返すことで引き起こされます。
その名の通り、腰椎が二つに分離し、前方と後方で亀裂が入り分離する症状です。
腰椎分離症は、疲労骨折の一つとも言われています。また、スポーツ選手の30%が腰椎分離症を経験するといわれています。
一般的には安静にすることでレントゲン上も改善が見られるため、オーバーユースの状態にならないことが最も大切です。
症状は腰の痛みだけでなく、臀部や太ももにかけてのしびれが生じることがあります。
関節性の疾患ですから、腰を反らせることでしびれ症状が強く出ることがあります。
これは、分離した骨が神経に触れることで生じます。
腰椎分離症を放っておくと、腰椎の骨が身体を支えることができず関節にズレが生じ、腰椎分離すべり症を発症することがあります。
腰椎分離すべり症となると、骨の噛み合わせが悪くなるので関節の痛みも生じやすくなり、しびれ症状の悪化も生じます。
将来的にも慢性的な腰痛を抱えながら生活しなくてはならなくなるため、腰椎分離症には適切な治療が必要です。
バドミントンでの腰痛の改善方法 ストレッチ
まず一つ目に、体幹筋の筋力を向上することです。
バドミントンという競技は反復的に腰を反らせたり屈めたりの繰り返しなため、体幹の筋力が背筋だけでなく、腹筋群も非常に重要な要素になります。
腹筋群が弱いことで背筋が過緊張になり、腰の関節に負担がかかる要因となります。
特に成長期は筋力の発達が未成熟な状態でスポーツを行いますので、腰に負担をかけすぎないことが重要です。
そのため、腹部のインナーマッスルである腹横筋を中心とした、外腹斜筋や内腹斜筋を鍛えることをおすすめします。
腹部のインナーマッスルを鍛える運動の例として、うつ伏せの状態から肘と手を付き、つま先で体全体を支える姿勢が有名です。
頭から爪先までを一直線になるように意識しながら、腹部に力を入れることが大切です。
この姿勢保持を10秒3セット程度から始めてみましょう。
二つ目に、腰の可動域を広げることも含めて腰や足のストレッチをすることです。
腰の動きが悪いと動作による負担がかかりやすいので、柔軟性を維持していくことが大切です。
うつ伏せの状態から手を付き、腰を反らせる運動をします。
このときになるべく腰に力を入れないで、腹部側を伸ばすことが大切です。
その姿勢を20秒程度保持すると良いでしょう。
反対に、立位の状態から前に前屈して太ももの裏側を伸ばし、腰を丸める姿勢を取ります。
これにより、背筋群を伸ばすことができます。
太ももの裏側が固くなることで骨盤の動きが低下し、腰部痛の原因となることがあるので、足の柔軟性もバドミントン競技において非常に重要です。
三つ目に、しっかりと休息を取り身体をケアすることです。
お風呂にゆっくり浸かってしっかり睡眠時間を確保することで身体はリセットされ、過度に働いた筋肉を緩ませることができます。
ときにはマッサージや筋膜リリースなどで、筋肉がリラックスできる状態を作ることも大切です。
自分が感じている以上に身体に負担がかかっていることはよくあります。
自身の身体の状態を見つめ直す時間を設けることも、スポーツ選手として大切なことです。
筋肉の緊張が高い状態が続いていないか、身体の可動域は正常か、左右差はないかなど、自身の身体の動きを確認してみましょう。
そうすることで腰部痛の発生を防ぎ、長期的にバドミントンを楽しめる選手になっていきます。
身体に違和感を感じたり痛みが生じているときは、決して無理をせず、整形外科を受診したり休息を取ることも忘れないようにしましょう。
参考:日本整形外科学会