「筋・筋膜性腰痛」というものをご存じですか?腰回りの筋肉に持続的に負担がかかることである日突然起こるこの腰痛は、「ぎっくり腰」の原因の1つであるとも言われています。今回は、そんな「筋・筋膜性腰痛」についてご紹介します。
目次
筋・筋膜性腰痛とは?
現代の日本において、多くの方が発症していると言われる腰痛。一概に腰痛と言っても、その原因はさまざまです。例えば椎間板ヘルニアや圧迫骨折などが原因の腰痛であれば、MRIやレントゲンなどの画像検査で特定することが可能です。
しかしこの「筋・筋膜性腰痛」は、その名の通り「筋肉や筋膜」が原因で起こるものであるとされています。そのため、上記の画像検査では異常が現れないのも特徴の1つです。また、筋肉や筋膜の損傷が原因であるため足の痛みや痺れといった症状は見られません。
現在悩まされている方が多い「ぎっくり腰」も、この腰痛が原因であることが多いそうですよ。筋・筋膜性腰痛は画像検査による判断が不可能なため、病院を受診しても湿布等を処方されて終わる場合も多いのが現実です。しかし、根本的な改善がなされないと慢性的な腰痛へ移行する場合もあるので気をつけましょう。
筋・筋膜性腰痛の原因
背骨において、「腰椎」と呼ばれる腰の骨は5個のパーツで成り立っています。それぞれの腰椎同士の間には椎間板と呼ばれる組織があり、これは骨同士がぶつかる衝撃を和らげるクッションのような役割を果たしています。
骨の周りを取り囲むようにして存在しているのが腹筋(腹直筋、内外腹斜筋、腹横筋)と背筋(脊柱起立筋、広背筋、大腰筋)。これらの筋肉が、私たちの身体を支える働きをしているのです。
筋・筋膜性腰痛の主な原因はスポーツであると言われていますが、中でも身体を捻る姿勢をとった際に背筋(とくに大腰筋)に過剰な負担がかかることで発症します。ほとんどのスポーツにおいて筋・筋膜性腰痛になる可能性はありますが、ゴルフやテニスなどの繰り返し腰を捻る動作を行うスポーツは特に注意が必要です。
また、それだけでなく長時間のデスクワークや中腰での作業も筋肉に負荷をかける原因となりますので気をつけましょう。
筋・筋膜性腰痛の症状
一般的な症状としては、腰回りの筋肉が硬くなり非常に強い痛みがでます。また、痛みは腰だけでなくお尻や太ももの裏側にまで広がることも。ひどい時には、咳やくしゃみなどの小さな刺激ですら激痛につながる場合もあるのです。
急性のものであれば、基本的には1週間程度で痛みが軽快することがほとんどです。しかし、腰痛がある上でさらに負荷をかけ続けてしまうと治りが遅くなってしまいます。特に冬場の寒い時期には血行が悪くなるため、痛みを放置すると回復が追いつかずにいつのまにか悪化してしまっているということにもなりかねません。
「ぎっくり腰」の原因であることが多いと言われている筋・筋膜性腰痛ですが、腰に痛みや違和感がある場合には無理に動かさないようにしましょう。
筋・筋膜性腰痛の治療
筋・筋膜性腰痛の治療には、さまざまなものが用いられています。とはいえ発症直後は強い痛みに襲われることが多いため、まずは安静を心がけてください。痛みが引いた場合は、これから紹介する方法で治療を行っていきます。この場合、自身の状態に合った治療法を選択することが重要です。
薬物療法
これは、湿布や内服薬などの鎮痛剤を使用して痛みを軽減させる治療方法です。薬を使用することでいち早く痛みをとることができるほか、市販されている薬もあるため簡単にとりいれやすいというメリットがあります。
鎮痛剤は口から摂取する内服薬と、湿布や塗り薬に代表される外用薬があります。それぞれ効き方や効果の持続時間などが異なりますので、自身の腰痛のタイプに合った薬を選択することが重要です。
医師の診断を受けた上で薬を選択できれば1番良いのですが、中には病院に行く時間がないという方もいらっしゃるかもしれません。ドラッグストアで手に入る市販の薬も多くの種類があるので、どれを選んだらいいか不安な方は薬局に常駐している薬剤師の方に相談してみましょう。
運動療法
腰痛を根本的に改善したい、またはじっくりと改善していきたいという場合に1番おすすめなのがこの運動療法です。激しい運動をする必要はありませんが、ウォーキングやストレッチなどの軽い負荷で継続することが重要です。筋・筋膜性腰痛におすすめのストレッチについては後ほど紹介します。
筋・筋膜性腰痛になってしまった場合に意外にも重要なのが、痛みが少しひいたら出来るだけ早く腰を動かすことです。腰痛を発症した場合安静にしていたほうが良いような気がしますが、安静時間が長いことで治りが遅くなるという研究結果も報告されています。
たまに運動をおすすめされたことで、ランニングやジムでの激しいトレーニングなどを始める方もいらっしゃいますが、場合によっては余計に腰への負担をかけてしまうこともあるので気をつけてくださいね。
温熱療法
腰痛発症直後は、腰回りの筋肉が炎症を起こしているため冷湿布などで冷やすこと必要があります。しかし痛みが落ち着いた後は腰を温めることで血流が良くなり、損傷した筋肉や筋膜の治りが早くなると言われています。
装具療法
装具療法とは、いわゆるコルセットなどのサポーターを使用して腰への負担を軽減させるものです。コルセットを使用する場合、幅が広く腰全体を覆い隠すことのできるものがおすすめです。
装具は使用することで腰が楽になる一方で長期間使用すると腰周りの筋力低下にもつながるため、長くても2〜3週間に留めるようにしましょう。
筋・筋膜性腰痛におすすめのストレッチ
筋・筋膜性腰痛を軽減、もしくは根本的に改善するために重要なストレッチ。日頃から簡単に取り入れることができるものもあるため、いくつか紹介します。
腸腰筋をほぐすストレッチ
1.足を前後に大きく開き、後ろに伸ばした足の膝を床につけます。
2.両手を前に出している足の膝の上につき、ゆっくりと状態を前に倒していきます。
3.前までしっかりと状態が倒れたら、そのまま再びゆっくりと元の姿勢に戻していきます。4.同じ動作を反対の足でも行います。
このストレッチを行うことで上半身と下半身をつなぐ筋肉である腸腰筋が伸びます。ゆっくりと時間をかけて行うことで、腰回りがポカポカしてきますよ。
腰方形筋をほぐすストレッチ
1.床で四つん這いになります。
2.ゆっくりと息を吐き出し、同時に背中を丸めていきます。
3.元の姿勢に戻ります。
4.今度はゆっくりと息を吸いながら、お尻を突き出すようにして背中を反らします。
5.同じ動作を5セット繰り返します。
腰椎を支える腰方形筋をストレッチすることで、より安定した姿勢をとることができるようになります。
脊柱起立筋をほぐすストレッチ
1.椅子に座り、背筋を伸ばした状態をキープします。
2.その状態のまま、ゆっくりと後ろに腰をひねります。
3.深呼吸しながら、そのまま20秒間キープします。
4.ゆっくりと息を吐きながら、元の姿勢に戻っていきます。
5.反対側も同様に行います。
脊柱起立筋は、頭蓋骨から骨盤まで背骨に沿ってついている長い筋肉。この筋肉が衰えたり硬くなったりすると正しい姿勢ができずに腰への負担も大きくなってしまうので、普段からストレッチを行ってしっかりと伸ばしておくようにしましょう。
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まとめ
「ぎっくり腰」の主な原因として多くの方を悩ませている「筋・筋膜性腰痛」。スポーツをしている方が発症しやすいと言われている腰痛ではありますが、長時間の同じ姿勢や姿勢の悪さから引き起こされることもあります。
特に普段からあまり動かないことが多い方や、良くない姿勢が身についてしまっている方はこの腰痛を発症するリスクが高いため注意が必要です。
発症してしまった後に治療することも重要ですが、1番良いのは「ならない身体」を作ることです。つらい腰痛と付き合わないためにも、日頃からストレッチや筋膜リリース、体幹の筋トレなどを取り入れて気をつけて生活してみてくださいね。
参考:メディカルノート