腰痛の原因にもなる「骨粗しょう症」には、女性ホルモンが関係していることをご存じですか?女性が更年期以降に骨粗しょう症を起こしやすいのは、女性ホルモンが変化しているからなのです。今回は女性ホルモンの働きと骨粗しょう症の関係、症状、予防・対処法についてご紹介します。
目次
骨粗しょう症とは
骨粗しょう症とは、簡単にいうと「骨がスカスカになる病気」です。骨は「皮質骨」と呼ばれる外側の白い殻に相当する部分と、「海綿骨」と呼ばれる皮質骨の中身、スポンジのような部分に分かれます。
このうち、骨粗しょう症では、特に海綿骨の密度が低下します。骨の中身の部分がスカスカになると、外力に対して骨が非常にもろくなります。よって、容易に骨折してしまうのです。症状が進行すると、自身の体重を支えるだけでも骨がつぶれ、骨折してしまうことも。気づかぬ間に起こる腰痛の原因として考えられる疾患が骨粗しょう症なのです。
一般若年成人(20~44歳の健康な成人の骨密度を100%ラインとしている)の骨密度量の70%を下回ると「骨粗しょう症」の診断がつきます。骨粗しょう症自体は、発見が早ければそんなに大きな問題にはなりません。早期に治療することで、骨密度を上昇させることができるのです。
骨のリモデリングとは
骨には、支持機関として骨の機能の維持、生体内の電解質(Ca,P)のバランスの維持という2つの役割があります。そのため、骨は、成長を終えた後も、常に骨吸収と骨形成を繰り返して、すこしずつ生まれ変わります。これを骨のリモデリングと言います。
・骨吸収とは、劣化した骨を破骨細胞が分解・吸収する働きです。
・骨形成とは、骨吸収の起こった場所に骨芽細胞が誘導され、骨をつくる働きです。
このように、骨は骨吸収と骨形成を繰り返して更新されますが、これらのバランスが崩れて骨吸収が優位になってしまうと、骨量の減少が起こります。この主な原因には、閉経と加齢があります。
骨粗しょう症の要因となる女性ホルモン「エストロゲン」
女性ホルモンにはエストロゲン、プロゲステロンなどがあります。このうち、骨粗しょう症に密接に関係しているのがエストロゲンです。
エストロゲンの作用
エストロゲンには、主に以下のような作用があります。
・子宮内膜の増殖・肥厚
・排卵促進
・骨吸収作用の抑制
・脂質代謝改善作用
・血液凝固能促進
エストロゲンには、骨吸収を抑制する作用があります。よって、エストロゲンが低下すると、骨の吸収を抑制できなくなるため、骨がもろくなり、骨粗しょう症となります。
更年期と女性ホルモンの変化
閉経とは、卵巣の活動が消失していき、月経が永久に停止した状態のことを指します。月経がない状態が1年以上続いた時に、1年前に閉経したと判断します。閉経時期については、個人差が大きく、40歳前半から50歳後半にかけて閉経を迎えると言われています。
更年期とは、閉経前の5年間と閉経後の5年間のことを指します。この時期には、自律神経のバランスが崩れるため、火照り、のぼせ、発汗、めまい、動機、頭痛、肩こり、気分の落ち込み、意欲の低下など、様々な症状が起こります。
近年の栄養摂取状況や環境要因から初経の年齢に若年化していますが、更年期の平均年齢だけは、昔と大きくずれてはいないのが実情です。これは遺伝子に組み込まれた自然の摂理ともいえます。
40歳以降になると徐々に生理周期も遷延し、エストロゲンの分泌は、閉経の2~3年ほど前から緩やかに減少し始めます。この時期から骨粗鬆症の対策を始めておくことが大事です。
エストロゲン以外で女性が骨粗しょう症になりやすい理由
加齢
骨粗鬆症の原因として、加齢による影響がとても大きくなっています。加齢による骨量の減少の理由には、老化によりカルシウムを吸収する器官である腸や腎臓の機能が低下し、カルシウム不足になってしまったり、骨芽細胞の機能に異常が見られたりすることが挙げられます。
妊娠・出産
女性は多くの場合、妊娠出産を経て更年期に突入します。妊娠・出産によりカルシウムが胎児に移行するため、カルシウム不足に陥りやすくなります。
過度なダイエット
過度なダイエットによる栄養不足で、カルシウムの損失がおこり、骨密度が低下します。
日光
女性は日焼けを避ける傾向があります。日光に当たる時間が極端に少ないと、体内でビタミンDの合成が行われません。ビタミンDは、カルシウムと同様に、骨の形成に重要な役割を果たします。よって、ビタミン欠乏によっても、骨密度の低下が起こりやすくなります。
筋力
女性は、男性に比べて筋力が低い傾向があります。骨粗しょう症による腰椎圧迫骨折が多いのは、このことも原因であると考えられています。
つまり、女性の方が男性よりも骨がもろく、筋肉も脆弱で、自分自身の体重を支えきれずに脊椎の椎体が圧迫骨折し、腰痛の原因となっているのです。
腰椎圧迫骨折に注意
思い当たるきっかけがないにもかかわらず骨折をした場合は、自身の体重で骨がつぶれ、骨折に至ったのだと考えられます。この場合は、その他の椎体も連続して骨折が起こるケースも見られます。多椎間で骨折が起こると、腰痛はもちろんですが、身長が低下したり、円背が激しくなったりと、外観上からも変化がみられることもあります。
特に高齢者では、腰痛があっても激しくないために、気付かないまま自然治癒するケースもあります。ときどき身長を測るなどして、脊椎の健康の目安にするとよいでしょう。
骨粗しょう症予防法
閉経や加齢の影響により、多くの女性が骨粗鬆症に悩まされています。運動や食事は、骨粗鬆症の治療だけでなく、発症予防にも効果的です。
早いうちから予防を行うことで、閉経後も骨密度を維持できます。また、閉経後に開始した場合も骨粗しょう症の発症を遅らせることができます。
カルシウムを摂取しよう
まずは、栄養不足にならないよう、十分な量の食事をとることが大切です。適正体重の維持と痩せの防止が、予防に重要です。その中でも特にカルシウムを多く摂取することで、骨粗しょう症予防となります。カルシウムは乳製品や小魚に豊富に含まれています。
できれば毎日行いたい「運動と日光浴」
適度な運動を日常的に行うとよいでしょう。運動により骨が刺激されることで、骨代謝が行われます。また、筋力を維持することで、骨を支える力がアップし、骨折するのを防いでくれます。女性は男性よりも筋肉がつきにくいので、日常的に簡単に行えるものを取り入れるとよいでしょう。
また、ビタミンDは、日光を浴びることで体内で合成されます。手の平だけ、15分程度でも十分ですから、日光浴の習慣をつけましょう。
禁煙しよう
喫煙者は骨粗しょう症を起こしやすいことがわかっています。タバコを始めないこと、禁煙することが大切です。
飲酒を減らそう
習慣的に飲酒をする人もまた、骨折のリスクが高くなります。飲酒は、エタノール量で1日24g未満におさえることが推奨されています。これはビール600ml程度に相当します。
まとめ
いかがでしたか?高齢者に多いと思われている骨粗しょう症ですが、早ければ閉経後の50代のうちに発症する人もいます。骨粗しょう症予防には「栄養・運動・日光浴」がキーワードです。今からでも遅くはありません。一度発症したら改善しにくいのが「骨粗しょう症」です。できることから少しずつ取り組みましょう。
【参考】
「骨粗鬆症(骨粗しょう症)」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる (joa.or.jp)
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/30_kounenki/
病気が見える vol11運動器・整形外科 第一版 p.430-437