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腰痛と手足の関節が痛い場合に疑われる病気
手足の関節が痛い場合に疑われる病気は意外とたくさんあります。
関節リウマチ、強直性脊椎炎、リウマチ性多発性筋痛症、線維筋痛症など、なかには難病指定を受けているような病気もあり、放置しておくと症状が悪化してしまい、日常生活動作にも支障をきたすようになるケースもありますので注意が必要です。
それぞれの病気の特徴について、解説していきます。
関節リウマチ
関節リウマチでは、手足の関節の痛みや腰痛が出現することがあります。
本来、体を守るための自己免疫システムが誤作動を起こし、関節の滑膜を攻撃するようになり、炎症や痛みを生じる病気、つまり、自己免疫疾患といわれるものです。
関節リウマチというと手足の関節の痛みやこわばりが特徴ですが、実は、関節リウマチの患者さんでは、4人に1人が強い腰痛を有していると言われるくらい、関節リウマチと腰痛も深い関係があるのです。
ただし、多くの場合の初期症状は、手足の関節が痛いなど、左右両方の手足の関節炎から始まるという特徴があります。
そのほかにも、腫れ、疲れやすさや微熱、食欲低下などの症状がみられることがあります。
関節炎については、放置すると関節が変形してしまうことがありますので早期発見、早期治療が大切です。
早期発見、早期治療ができれば、関節が変形したり、破壊されたりすることは予防できます。
症状が現れてから約2年で関節が破壊されると言われています。
疑わしい症状がある場合は、早めにリウマチ専門医を受診することが重要です。
治療は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服と抗リウマチ薬の内服を開始して、効果がなければ抗リウマチ薬を増量します。
増量しても十分な効果が得られない場合は、生物学的製剤を使うと症状が改善することがあります。場合によっては、ステロイド剤や免疫抑制剤を使用することもあります。生物学的製剤とは、最先端のバイオテクノロジーを駆使してうみだされた製剤です。
特に、関節破壊抑制効果にすぐれた製剤となります。
強直性脊椎炎
強直性脊椎炎は、脊椎や骨盤の炎症が原因のリウマチ性疾患で、現代医療では完治が難しい難病のひとつです。
多くは10歳代〜30歳代に発症し、40歳代以後の発症は稀です。症状としては、背中や首や肩の痛みやこわばり、腰や尻の痛みやこわばり、眼の痛みや炎症、手足の指の痛みや腫れ、手首や足首、踵、足裏の痛みなどが挙げられます。朝方や夜間など安静にしていると痛みが強くなり、体を動かすと痛みが軽減するのが特徴です。
また、ぶどう膜や虹彩炎のような目の病気、クローン病、潰瘍性大腸炎などの腸の病気、乾癬という皮膚の病気などを合併することがあります。
特に、最初は長引く腰痛から強直性脊椎炎が発見されることもあるくらい、腰痛と手足の関節が痛いという症状がある場合は整形外科を受診して検査を受けるのがおすすめです。
検査としては、脊椎、仙腸関節、股関節、踵骨、胸骨などのレントゲン検査、血液検査、骨シンチグラフィー検査などを行います。
これらの結果で診断を下すわけです。関節リウマチと同様、早期発見、早期治療が大切な病気です。進行すると、背骨の後彎変形(前かがみ変形)が起こります。一度、背骨の強直が起きてしまうと元に戻すのは困難です。
高齢になるまでにすべての脊椎が強直してしまう人は1/3程度と言われています。
治療は、基本的には対症療法です。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服、手足の関節の痛みが強い場合は、ステロイド剤を局所注射することもあります。
痛みや腫れがひどい場合は、TNF阻害剤やIL17阻害剤を使用することもあります。
後彎変形の予防として、仰向けに寝ることや高い枕を使わないことなどが重要です。
運動制限が起こらないように、毎日体操やストレッチなどの運動を行うことや入浴もすすめられています。
音が鳴るほど強く矯正する整体やマッサージは、骨折や筋肉・靭帯損傷の危険性があるので避けるべきとされています。
リウマチ性多発性筋炎
60歳代女性に多い病気と言われています。
朝起きるときに首、肩、上腕の強い痛みやこわばりを訴える方が多いですが、腰やお尻、太ももにも痛みが起こることもあります。
痛みやこわばりは、突発的に起こり、左右対称性に起こるのが特徴です。
体重減少、微熱、倦怠感などの全身症状もあらわれます。
こういった症状とともに、血液検査(炎症反応であるCRP上昇、赤沈40mm/時以上の亢進)などをみて医師が診断します。
治療としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの一般的な痛み止めは効果がないことが多く、ステロイド剤を使用すると劇的に効果があります。
線維筋痛症
線維筋痛症の主な症状は、全身の慢性的な痛み、疲れ、倦怠感です。その他、微熱、レイノー現象、寝汗、動悸、嚥下障害、かゆみ、不眠、頭痛、めまい、耳鳴り、むずむず足などさまざまな症状を訴える可能性があります。
遺伝的要因、外傷・手術・ウイルス感染などの外的要因、離婚・死別・解雇などによる心理的要因などが複雑に関与しているのではないかと言われています。
男女比では、女性が男性の5倍です。発症年齢は50歳代が多いのも特徴です。
診断には、特定の圧痛点で痛みを感じるかどうかという基準もあります。
治療としては、てんかんの治療に使う薬であるガバペンチンという薬を使うところが特徴です。それ以外には、NSAIDs、ステロイド剤などを用います。
うつ状態を伴うものでは、抗不安薬など精神科で使われるお薬を使うこともあります。
ロコモティブシンドローム関連疾患
まず、ロコモティブシンドロームという概念ですが、運動器と呼ばれる体の動きをつくる骨や関節は、老い(加齢)によって体は個人差はあっても必ず誰しも衰えがでてきます。移動の機能が低下する状態を意味します。
この関連疾患は、上に述べた以外にも複数ありますが、なかでも診断された患者さんが一番多いのが変形性関節症といわれています。腰痛に関連する変形性腰椎症では40歳以上で3000万人以上との報告もあります。骨粗鬆症は聞いたことがある方も多いと思いますが、骨の密度が下がっていく状態による病気の概念で、これも変形性関節症にも関わります。
この疾患の発症は軟骨が摩耗していくことによりますが加齢と同様これを止めることはできませんので最終的には手術治療もありますが、リハビリや日常からのコントロールが長い運動機能を維持して生きていく上で必要な治療になります。
更年期障害
これは特に女性では比較的身近な話題ですよね。骨粗鬆症とも関連しますが、閉経に伴いエストロゲンというホルモンの著しい低下もしくはホルモンの変化からいろいろな症状がでてくるため、中には腰痛や手足の関節が痛いという方も含まれます。痛みの管理はもちろん、ホルモン補充や骨粗鬆症の治療を併用することで症状を和らげることができる場合があります。
膠原病(こうげんびょう)
聞きなれないこの疾患の概念も、リウマチ性疾患と重なる部分もあるのですが、とりわけタンパク質である全身のコラーゲンに炎症がだらだら起こる病気の総称になっています。
主にはコラーゲンである神経や血管、皮膚にも炎症が起こる病気を総まとめにした名前です。自己免疫が関わる点、関節や筋肉にも関係することもあり、リウマチ性疾患も、膠原病に分類されていることもあります。
関節リウマチの患者さんにシェーグレン症候群の症状もあわせて起こるという場合も珍しくないのです。特に頻度が高いものがシェーグレン症候群ですが、主には関節痛と関節炎が複数の関節に起こります。とりわけ女性に起こる率が高く、50代にピークがあります。
膠原病の多くは、根治は今のところ望めず、病気が悪化しないように薬や日常生活を見直してコントロールしていくという治療になります。
手足の関節の痛みと腰痛がある場合に必要な検査
このように、手足の関節の痛みと腰痛がある場合には、さまざまな病気の可能性があります。
整形外科、もしくは、リウマチ専門医を受診し、必要があれば精密検査を受けると安心です。
早期発見、早期治療がなにより症状を悪化させないためには重要です。
検査の種類としては、レントゲン検査、CT検査、MRI検査、血液検査(CRP、血沈、リウマチ因子やHLA検査など)を行うことが多いものです。これらは、それほど強い苦痛を伴う検査ではありません。
血液検査の項目に関しては特殊なものがありますが、検査の方法自体は、他の病気でも、よく行われる一般的な検査です。
疑わしい病気によっては、骨シンチグラフィーなどの特殊な検査も行います。
受診するならどこ?
これをお読みになり、自分はもしかしたらと思われている方、次に悩むのはどの科にかかったらよいのかという点ではないでしょうか。
先ほど列挙した疾患を診る専門科はそれぞれ分かれています。
ロコモティブシンドローム関連は整形外科、リウマチ性疾患や膠原病については、リウマチ科、別名膠原病内科または一般内科というように。
だ、クリニックや病院によっても診療科の呼名は異なりますし、リウマチ専門外来を開設しているところもあります。あらかじめ、受診される前にホームページを確認したり、電話でリウマチ専門医、膠原病専門医の診察が受けられるのか、予約もできるかを含めて問い合わせられるのが手間はかかりますが最善の受診方法かと思います。
また、コロナウイルス流行中は病院にかかるのも心配でという声もありますので診断までには至らぬとも、オンライン医療相談でご自身の方向性を医師に相談するという方法もあるでしょう。ただし、診察や検査には、やはり受診が必要不可欠です。
手足の関節の痛みと腰痛が改善しない場合は適切な検査を受けましょう
手足の関節の痛みと腰痛が続く場合、さまざまな病気の可能性があります。
特に、難病といわれる種類の病気もあり、関節の変形や強直が一度起きてしまうと治せなくなりますので、早期発見、早期治療が非常に重要です。
病気であったとしても、早期発見できれば、生活の質を保つことができます。
怖がらずに、まずは整形外科やリウマチ専門医を受診して相談してみましょう。
参考文献
川上俊文、図解 腰痛学級 第5版、医学書院、2011
日本整形外科学会
腰痛ガイドライン
難病情報センター
日本リウマチ財団リウマチ情報センター
RA患者の4人に1人が強い腰痛、疾患活動性が主なリスク因子|日経メディカル