腰痛を訴える方は、夏に比べて冬に増加すると言われています。腰痛持ちの方は、その原因を正しく理解することができていますか?もしかしたらそれは、「冷え」からくる腰痛かもしれません。本記事では、「冷え」からくる腰痛の概要やその対策を詳しく紹介していきます。
目次
「冷え」は身体の不調に繋がる
冬だけでなく、夏のクーラーが効いたところなどでも手足を始めとする身体のさまざまな部分で感じる「冷え」。「冷え」を感じやすい人は一般的に、「冷え性」などと呼ばれています。
自律神経やホルモンバランスの乱れ、筋肉量が少ないことなども「冷え」の原因になると言われています。「冷えは万病のもと」という言葉もあるように冷えを放置してしまうと腰痛や肩こり、不眠などさまざまな身体の不調を引き起こすことも。
腰痛を始めとするつらい症状と付き合わないためにも、「冷え」の初期段階に素早く対処することが重要です。しかし中には冷えの自覚症状のない「隠れ冷え性」と呼ばれる方もいるため、その場合は朝起きてすぐにお腹を触り冷えの有無を確かめてみてくださいね。
腰痛を自覚する日本人は多い
厚生労働省の調査によると、日本では男女ともに多くの方が腰痛を自覚していると言われています。国民病と言っても過言ではない腰痛ですが、実はその8割以上は原因不明の「非特異的腰痛」。
具体的に診断がくだされる椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と異なり、非特異的腰痛の場合は何が痛みを引き起こしているのかが分からないのです。
とはいえ全く原因が分からないという訳ではなく、考えられる要因はいくつか特定され始めています。現在挙げられている要因としては代表的なもので「長時間のデスクワーク」「精神的なストレス」「腰に大きな負担のかかる作業」などが挙げられますが、先程少し紹介した「冷え」もその中に含まれます。
本記事では、「冷え」が引き起こす「冷え腰痛」について詳しく紹介していきます。
「冷え」が原因の「冷え腰痛」って?
冬になると痛みが強くなる腰痛持ちの方は、もしかすると「冷え」が原因の「冷え腰痛」かもしれません。冷え腰痛とはその名の通り手足を中心とする身体の冷えによって引き起こされる腰痛のことを指し、身体が冷えて筋肉がこわばることで腰痛が悪化するケースも報告されています。
お風呂に浸かるなどして身体を温めることで腰痛が軽減する方は、冷え腰痛である可能性があります。その場合、身体の冷えを防ぐことで腰痛を軽減することができるかもしれません。
人間は寒さを感じると、熱を逃さないように身体の筋肉を収縮させます。寒いと感じた時に身体に力が入り、ギュッと身体を縮こまらせた経験はありませんか?そうやって縮こまることで、筋肉が硬くなってしまいます。
筋肉が硬くなると筋肉と筋肉の間にある神経が圧迫され、腰痛を始めとする痛みが生じます。これが、冷え腰痛のメカニズムです。
その他には寒さによる冬の運動不足なども、冷え腰痛を引き起こす原因であるとされていますよ。
「冷え腰痛」の特徴
冷え腰痛は夏に比べて寒い冬の方が痛みが強く出たり、身体を温めることで痛みが軽減することなどが特徴です。
冷えの原因を取り除くことで解消されることが多い冷え腰痛ですが、冷え腰痛を放置することなどで身体に歪みが生じることがあります。その場合、慢性的な腰痛に移行してしまうこともあるので気を付けてくださいね。
夏も注意!
冷えといえば冬のイメージがあると思いますが、夏も注意しなければなりません。夏場の冷房が強く効いている場所での長時間の作業などでも起こり得ます。また、冷房や扇風機を付けたまま眠ってしまい、自覚のないまま冷え続けてしまうこともあります。
夏場であっても油断せず、冷房の温度を下げ過ぎない、寝ているときはなるべく扇風機だけせ済ませたり、冷房をつけるにしてもタイマーをかけるなどの工夫を行ってください。
「冷え腰痛」の対策
冷えが原因の冷え腰痛を引き起こさないために重要なことは、「身体を冷やさないこと」です。日常生活において無意識に身体を冷やしてしまっている方も多いと思いますが、ここでは簡単に取り入れることの出来る「冷え対策」の方法をいくつか紹介します。
適切な衣服を選択する
冷え対策において最も重要なことは、「下半身を冷やさないようにすること」です。そのため、冷えがある場合にはズボンを履くことをおすすめします。スカートの場合も素足で履くのではなく、スカートの下に必ずタイツなどを着用するようにしましょう。
また冷えは足元から来ることが多いため、特に冬の寒い日などにはブーツなどの保温性のある靴を選択するか厚手の靴下を着用するようにしてください。
腰回りを温めたい場合には、腹巻きなどを使用するのもいいでしょう。
冷えにくい食事をとる
普段、冷蔵庫から出したばかりのキンキンに冷えたビールやお茶などを飲む方は多いのではないでしょうか?冷たい飲み物は喉越しもよく美味しく感じますが、飲みすぎると身体を冷やしてしまう可能性があります。
喉が乾いた場合は冷たすぎるものを飲むのではなく紅茶やココア、お酒であれば赤ワインや日本酒を飲むのがおすすめですよ。
またナスやほうれん草などの野菜も料理に使用する頻度が高い一方、身体を冷やす野菜であると言われています。野菜であれば人参やれんこんなどの根菜類が身体を温めてくれます。
入浴を習慣に
お風呂に入った時に普段シャワーのみで終わらせることが多い方は、できるだけ毎日お湯に浸かる習慣をつけるようにしてください。短時間のシャワーだけでは十分に身体が温まらず、冷えを余計加速させてしまう可能性があります。
お湯に浸かる場合も、お湯の温度に気を付けてくださいね。熱すぎるお湯に短時間浸かっても、温まるのは身体の表面部分のみです。できれば、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かるようにしてくださいね。
温罨法(おんあんぽう)に活用しよう
冷え腰痛に限らず、多くの腰痛は温めることで血流を改善し、筋肉の緊張が緩み腰痛は緩和します。筋性疲労物質である乳酸も流れることで疲労感も軽減します。この温めることを「温罨法」といい、患部の安静や安楽のためばかりではなく、心地よさによってリラクゼーション効果も得られ、ストレスを軽減する効果も期待できます。適切な方法で行うことで腰痛軽減につながります。
温罨法とは
温罨法とは身体の一部に温度刺激(今回は温熱刺激)を加え、血管・循環器系・筋系・神経軽に作用させ鎮痛や消炎を図る治療法です。安静や安楽、リラクゼーション目的で手軽に実施できますが、症例を見誤ると症状を悪化させ、有害事象を引き起こす可能性があります。
温罨法による代表的な有害事象は低温やけどです。一般的に、健康な肌である場合、直接肌に触れる温度は42度以下とされています。43度以上で低温やけどの可能性が高くなり、45度以上で肌の痛覚が刺激されます。直接貼用して温める場合には、42度を超えないように気をつけましょう。
温めてはいけない腰痛があることも忘れずに!
多くの慢性腰痛は、温めることで血流が改善し、腰痛が緩和しますが、温めることがかえって腰痛を増強させかねない場合もあるので、注意が必要です。突然腰痛が出現した、急に腰痛が悪化したなど、劇的に症状が変化した場合には要注意。急性の炎症が起きていることによる腰痛である可能性が高いため、この場合には温めることは逆効果です。外観上、腫れている、赤みを帯びている場合にも避けた方がよいでしょう。化膿性脊椎炎などの感染が原因となっている場合にも、温めるのは禁忌です。
温罨法の相対的禁忌
前述したとおり、腰痛の状態そのものでも温めることが禁忌の症例もありますが、腰痛には関係がなくても、全身状態によっては温罨法を施行するにあたって、病状を悪化させてしまうことがあります。基本的には、急性期炎症症状がある場合は、温罨法を行うことで症状が悪化します。また、消化管の炎症や出血症状がある場合にも、病状を悪化させることがあるので避けた方がよいでしょう。血圧が高い場合にも注意が必要です。
腰痛以外の基礎疾患を有していて、炎症反応が強い場合や、循環動態の異常がある場合には、担当の医師に温罨法の実施について一度相談してみることをおすすめします。
自宅で温罨法を実施する場合
自宅で手軽に行える罨法で、患部に直接貼用できるものの代表に「カイロ」があります。そのほかに温めたタオルをビニール袋に入れて使用する「手作り温シップ」もよいでしょう。湯たんぽや貼付剤としての温シップなども有効です。前述したとおり42度以下で用いるのが原則ですが、快適な温度は人によって異なります。自分で実際に使用してみて、快適な温度で使用をするとよいでしょう。
身体を冷やさないためのストレッチ
冷え腰痛を予防するために、普段から「冷えにくい身体」を作るようにしましょう。冷えの改善には、第二の心臓とも呼ばれるふくらはぎを中心としたトレーニングが効果的ですよ。
ふくらはぎを伸ばすストレッチ
1.両手を肩幅よりも少し広げ、その両手を壁につけます。
2.左足を後ろに出し、そのまま体重をかけます。
3.その状態を10秒程キープします。
4.左右の足を入れ替え、同様の動きをします。
つま先立ちストレッチ
1.つま先立ちをして、最もふくらはぎに負荷がかかるポイントで静止します。
2.15秒程静止した後、ゆっくりとかかとを下ろしていきます。この際、床に完全にかかとがつかないようにすることがポイントです。
3.同じ動きを5回ほど繰り返します。
まとめ
毎年冬に腰痛に悩まされている方は、もしかしたら「冷え腰痛」かもしれません。今は腰痛が出ていない冷え性の方でも、ある日突然腰痛が発症する可能性も大いにあります。
身体にさまざまな不調を引き起こす「冷え」ですが、少し気をつければ予防・改善することもできます。本記事ではそんな冷えを少しでも改善できるように、いくつか対策を紹介しました。
冷え性の自覚がある方はできるだけ身体を冷やさないような生活を心がけ、この機会につらい腰痛とおさらばしましょう!
参考URL
腰痛の原因は手足の冷え?原因と対策をご紹介
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