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腰痛をきたす原因はさまざまありますが、ときに尿路結石症や腎盂腎炎など腎臓が問題となって腰痛とともに背部痛症状をも引き起こす場合があります。

腎盂腎炎というのはいわゆる腎臓の感染症ですが、ほんらい腎臓や尿に細菌はいません。そこになんらかの誘引が重なって、感染を起こし腰痛や背部痛といった症状を引き起こしてしまうのです。そしてその原因として、尿路結石が密接に関わっています。

そこで今回は、腰痛・背部痛を引き起こす代表的な疾患である腎盂腎炎や尿路結石についての基本的知識と対処方法について紹介したいと思います。

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腎盂腎炎とは?

腎臓は、血液中の老廃物や有害物質をろ過して排泄するための尿を作る役割をしています。腎臓の中で尿を貯めている部分を腎盂といい、腎盂腎炎は腎盂とその周囲の組織に細菌が感染することで起こります。

腎臓で作られた尿は、腎盂、尿管を経由して膀胱に集められ、尿道を通って排出されます。通常、尿路には細菌はいませんが、細菌が侵入して感染すると尿路感染症が起きてしまいます。ほとんどの場合、細菌は尿の出口から尿路に侵入し、尿道、膀胱、尿管を伝って腎骨盤に移動し、そこで炎症を起こします。

尿路感染症には、細菌感染の場所によって大きく分けて下部尿路感染症と上部尿路感染症の2種類があります。下部尿路感染症は尿道や膀胱の感染症で、主に膀胱炎が多いです。上部尿路感染症は、腎骨盤や腎臓の感染症で、これを一般的に腎盂腎炎と診断します。

また、腎盂腎炎は女性に多くみられます。これは女性の方が男性に比べて尿道が短く、大腸菌が存在する肛門に近いためです。適切な時期に適切な治療を行わないと、細菌が血液中に入り込み、敗血症として知られる生命を脅かす状態を引き起こす可能性もあります。

比較的早く治る腎盂腎炎を急性腎盂腎炎といい、治療に反応せず繰り返してしまうような長く続くものを慢性腎盂腎炎といいます。慢性腎盂腎炎は激しい腰痛などの目立った症状はないことが多いですが、慢性腎不全へと進行することもあるので注意が必要です。

腎盂腎炎の原因と症状

多くの場合、感染は上行性で、尿道から細菌が入り、膀胱、尿道、腎骨盤の順に上っていきます。原因菌は大腸菌が最も多いですが、緑膿菌、腸球菌、ブドウ球菌などもよく見られます。

膀胱炎に続いて細菌性の炎症が尿管を通って腎骨盤に広がることで起こります。尿路に侵入した細菌は排尿によって排除され、免疫システムによって死滅するため、通常は簡単には腎盂腎炎は起こりません。

しかし、前立腺肥大症、神経性膀胱、尿路結石、尿路の悪性腫瘍、尿路カテーテル、糖尿病、ステロイド、その他の全身感染症などが原因で、腎盂腎炎を引き起こしてしまいます。この中でも健康な人の突然の腰痛の原因として最も一般的なものが尿路結石です。

急性腎盂腎炎では、排尿時の痛み、頻尿、残尿感、尿の濁りなどの症状に、発熱、全身の倦怠感、腰や股関節の痛みを伴うことがあります。一方で、慢性腎盂腎炎は一般的に症状が少ないのが特徴で、腰痛があっても軽度でじんわりとしたものが特徴です。長引く食欲不振や疲労感があり、徐々に腎臓の機能が低下して尿を濃縮する能力が低下し、夜間の多飲多尿や淡色尿などの症状が現れます。

腎盂腎炎の診断・治療

腎盂腎炎では、さまざまな検査をして診断し、治療方針を決めます。まず、尿検査では、炎症を起こすと増える白血球の数を調べ、どのような細菌がいるかを調べます。白血球の数が一定以上あれば尿路感染症の可能性が高く、発熱や腰痛などの腎盂腎炎特有の症状があれば急性腎盂腎炎と予想されます。

また、尿検査と並行して尿の細菌培養を行い、病原体の種類を特定します。これは抗生物質に対する尿の感受性を調べるためにも必要です。血液検査では、白血球の増加、核の左シフト、CRPやプロカルシトニン(PCT)の上昇、血液沈降の増加などの炎症所見が見られます。また、排尿困難や腎臓の機能低下が疑われる場合には、腹部超音波検査や腹部造影CT検査など、患者さんの状態に応じてさまざまな検査が行われます。

腎盂腎炎の治療の中心は抗菌薬の投与です。軽度の場合は経口抗菌薬が使用されますが、中等度・重度の場合は注射や点滴が使用され、入院が必要になることもあります。腎盂腎炎が尿路結石や前立腺肥大などの尿路閉塞が原因の場合は、カテーテルで尿路閉塞を取り除き、膿を体外に排出する必要があります。

ほとんどの場合、1~2週間の治療で回復しますが、決められた期間中は薬を服用し続けないと効果がありません。症状がおさまっても菌が残っていることが多く、中途半端に服用すると菌が増殖して再発したり、慢性化したりしてしまうこともあります。処方された薬は必ず飲むようにしましょう。

腎盂腎炎は尿路結石症が原因となることが多い

腎臓から尿路の閉塞により逆行性に細菌が侵入し、感染を起こすタイプの腎盂腎炎では尿路結石症が原因になることも多いです。尿路結石症とは、腎臓から尿道に結石が形成された状態のことです。

腎臓で排泄された尿は尿道を通って膀胱に入り、1日に数回、尿道を通って排泄されます。この過程で、体内で不要になった物質が結晶化して成長し、尿石を形成します。尿路結石は泌尿器科外来で最も多い疾患の一つであり、年間の尿路結石の発生率は年々増加しており、特に壮年期の男性や閉経後の女性に多くみられます。

結石ができても、結石が非常に小さい場合や膀胱内にある場合は特に症状が出ないこともあります。しかし、尿管内に結石が落ちて留まってしまうと、結石による閉塞や腎盂の急激な圧力上昇により、腰から脇腹にかけての激しい痛みや、下腹部への放射性の痛みが発生することがあります。

したがって激しい腰痛と血尿が典型的な症状です。これが進行し感染をきたすと発熱を呈し腎盂腎炎を併発します。夜間や早朝に目覚めるぐらいの激しい腰痛を訴えて、救急車を呼ぶ人も多いぐらいの激しい症状と覚えておいてください。

尿路結石症の治療や予防方法

尿路結石症の治療としては痛みの緩和と、結石の除去の2通りに分かれます。痛みの緩和としてはNSAIDなどの非ステロイド系抗炎症薬やオピオイドが用いられます。これは発症後すぐの急性期に使われ、痛みの軽減をはかります。

結石の除去としては、自然に排石できないほどの大きい石に対して行われいくつかの種類があります。具体的には外から衝撃波を当てるESWL(体外衝撃波結石破砕術)、尿道から尿管鏡を挿入しレーザーで結石を割るTUL(経尿道的結石除去術)がメインの治療方法です。それらが困難な症例では背部から穿刺し直接結石を取り出すPNL(経皮的結石除去術)も行われ、医師の判断により症例に合わせた治療方法が選択されます。

尿路結石は予防が大切

結石の出来やすさは遺伝や体質によるとされており、初めてカルシウム結石が出た人の15%はその後1年以内に結石が再発し、10年以内に再発する人は80%にも高まるとされています。1)

したがって過去に尿路結石症にかかった方はもちろん、家族歴のある方なども予防をすることが大切です。具体的には約300ミリリットルのコップで1日8~10杯程度の大量の水を摂取することが、予防法として推奨されています。ぜひ急な腰痛で朝方目覚めるという経験をしないためにも、日頃から水分の摂取を心がけてください。

1) MSDマニュアル 05-腎臓と尿路の病気/尿路結石/尿路結石
https://www.msdmanuals.com/ja-jp

参考:その腰痛は「腎臓の病気サイン」かも。見分け方は?病院は何科?医師監修 メディカルック

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腰痛メディア編集部
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