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腰椎分離症は、腰椎の椎弓が分離することで腰痛を呈する整形外科疾患のことです。

一般の方よりも、スポーツ選手に多く発症することが分かっており、特に過度のスポーツを行う10歳以下の青少年少女で発症しやすいことが分かっています。

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腰椎分離症の治療方針には、大きく「保存的治療」と「手術治療」が挙げられます。基本的には保存的治療を優先し、これが奏功しない場合に手術治療が検討されますが、その判断基準にはどのようなものがあるのでしょうか?腰椎分離症にお悩みの方が、最も気になるところだと思います。また、具体的な手術内容も知りたいのではないでしょうか?

今回の記事では、腰椎分離症の手術治療についてお伝えしています。「どのようなときに手術を考慮すべきなのか?」「どのような手術内容なのか?」について、分かりやすく解説しています。腰椎分離症にお困りの方は、ぜひ参考にして下さいね。

腰椎分離症の概要

腰椎分離症は、脊椎の椎弓が分離してしまう疾患のことです。椎弓は脊椎の後方に位置するリング状の構造ですが、その一部は衝撃に弱い構造になっています。そのため、過度な反り腰や着地動作を反復することで、椎弓に負荷が加わると骨がヒビ割れて分離してしまうのです。

腰椎は全部で5つの骨から構成されていますが、腰椎分離症はその中でも、上から5番目の「第5腰椎」での発生率が高い特徴があります。

また、腰椎分離症は「腰椎すべり症」を併発することも多々あります。分離した腰椎近くの椎間板が変性を起こし、腰椎の前方部分がさらに前へ移動することで、腰椎すべり症へ進展する可能性があります。

症状は、骨と骨がどれだけ分離しているかによって、様々なパターンを呈します。初期であれば腰椎にヒビが入るだけですが、進行すると完全に骨が分断されて分離が完成してしまいます。分離した骨は偽関節(本当の関節ではないが、関節のように可動性がある状態)になり、非常に不安定になります。いずれの病期でも、腰痛が主症状に代わりはありませんが、進行すると全く動けないほど痛みが悪化することもあります。

スポーツ選手における腰椎分離症の頻度

日本における腰椎分離症の頻度は4%程度と言われています。しかし、この数値は一般人を含んだ総数で計算した場合であり、スポーツ選手に特化した場合、その発症数は激増します。

例を挙げると、大学相撲選手で約14%、ジュニアアイスホッケー選手で約15.9%、プロ野球選手では54%(無症状も含む)の発症率という報告があります。統計の取り方やスポーツ種目によって頻度に違いはありますが、一般人の4%と比べると、明らかに発症率が高いことが分かると思います。

腰椎分離症の治療は「保存的治療」と「手術治療」の2択

腰椎分離症に対する治療方針は大きく2つに分けられます。すなわち、手術をせず薬物やコルセットなどを用いる「保存的治療」と、外科的に分離した骨を治す「手術治療」の2種類です。

腰椎分離症に対する保存的治療

基本的な治療方針としては、まず保存的治療を試みます。腰椎分離症の中でも、特に新鮮な症例や、骨と骨の分離が軽い症例は、保存的治療だけで骨が癒合することが期待できます。

具体的な保存的治療の内容としては、コルセットによる患部の安静と骨癒合が基本戦略です。これに加えて、腰痛が辛い場合は、鎮痛薬による痛みのコントロールを図ったり、場合によっては神経ブロック治療を追加する場合もあります。また、日常生活や競技スポーツを考慮して、リハビリテーションも指導します。

h3 腰椎分離症に対する手術治療
一方で、分離部が完全に離断されて「偽関節」の形成に至った症例では、保存的治療での完治が難しい場合も多くあります。保存的治療で骨の癒合が期待できない症例に対しては、手術治療を考慮しなければなりません。手術に関しての詳細は、次の章で解説したいと思います。

腰椎分離症の手術治療

手術治療のメリット

手術治療の最大のメリットは、保存的治療を続けていても競技に復帰できない選手が、「再びスポーツに復帰できる」ことにあります。早期の競技復帰を目指して、早い段階で手術を決断するスポーツ選手も多くいるのです。

また、「痛みのコントロール」という観点からも手術治療が奨められる場合があります。手術治療によって、分離してしまった組織を物理的に除去することで、痛みが緩和される例もあるのです。

手術治療の判断基準は?

先ほどもお伝えしたように、手術を考慮する大前提として「保存的治療が奏功しない症例」という条件があります。手術治療は「病気を治すため」とは言え、全身麻酔を施した上で身体にメスを入れる行為です。心身ともに大きな負担になるため、保存的治療で完治できるのであれば、それに越したことはありません。

また、「分離症による腰痛がひどい症例」も手術適応になりえます。「手術治療のメリット」にも出てきましたが、手術治療で分離した組織を除去することで疼痛が緩和されるケースがあります。具体的には、「腰を固定することで痛みが軽くなる」「腰椎の椎弓を押すことで痛みが強くなる」などのケースでは、腰椎分離症が痛みを惹起している可能性が示唆されます。この場合は、手術治療によって痛みが根本的に改善される可能性があるのです。

加えて、手術治療による成績は、特に年齢が若いときに結果が良いことが分かっています。年齢が若いほど骨の変性具合が軽いことも多く、手術治療が奏功するケースが多いのです。

具体的な手術方法

具体的な手術方法は、腰椎分離症の病期によって異なります。

骨にヒビが入っているだけで、まだ「偽関節」を形成していなければ「腰椎分離部修復術」が可能です。スクリューもしくはワイヤーを用いて分離した骨を固定する手術になります。術後は比較的早期に競技復帰を目指せる特徴があります。

一方、腰椎分離症が進行して「偽関節」の段階まで進行すると、「腰椎後方固定術」を行うことがあります。スクリューやインプラントを用いて腰椎を固定する手術で、筋肉への操作も伴うため「腰椎分離部修復術」に比べて高侵襲の手術と言えます。

まとめ

腰椎分離症は早期発見・治療によって、競技復帰も早くなる!
腰椎分離症は、特に成長段階のスポーツ選手に起きやすい脊椎の病気です。

基本的な治療戦略としては、保存的治療が優先されます。保存療法とは主に、外来整形外科でリハビリテーションを受けます。リハビリでは、マッサージやストレッチ、体幹トレーニング等の腰痛体操や運動を行います。しかし保存的治療が奏功しない場合や、痛みのコントロールが不十分な場合では、手術治療が行なわれることがあります。具体的な手術方法は分離症の病期によって異なり、分離の進行が浅い段階であれば、より低侵襲の手術で根治を目指せるのです。

すべての病気で言えることですが、腰椎分離症も「早期発見と早期治療」が大切です。早期からの介入で。競技復帰も早く叶う可能性があります。スポーツ選手の方で少しでも心当たりがあれば、一度専門機関に相談してもよいかもしれません。

参考文献
スポーツ選手の腰椎分離症の手術
野澤 聡 , 清水 克時
臨床整形外科 39巻6号

参考
腰椎分離症・分離すべり症 日本整形外科学会

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

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著者情報

広下若葉
広下若葉

保持資格

医師国家資格・麻酔科標榜医

経歴

2015年:医師国家資格 取得

2017年:初期臨床研修プログラム 修了

2020年:麻酔科標榜医 取得

    麻酔科専門研修プログラム 修了

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