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【金岡恒治先生】動画解説
2021年12月 早稲田大学 金岡研究室急性腰痛とは
腰痛が出るタイミングで分けるとすれば、急に起きる急性腰痛と慢性的にダラダラ続く慢性腰痛に大きく分けられます。
腰の痛みが出る原因となる場所(組織)としては、大きく分けて椎間板(ついかんばん)、椎間関節(ついかんかんせつ)、仙腸関節(せんちょうかんせつ)、筋肉があります。ぎっくり腰とはこれらのどこかの組織が痛みの震源地となって急に発生した腰痛のことを指します。医学的な名前ではなく、急に痛みが起きてしまった“状況”を表す表現で、医学的には、急性腰痛といます。
ぎっくり腰になってしまったら、動ける限り動きましょう
最初動くこともできないくらい辛い場合には、なるだけ痛みが出ないような姿勢で痛みがおさまるのを待つことは、ある程度仕方がないことかも知れません。しかし、痛みが少しでもおさまったら、動ける範囲で動きましょう。じっとしていたほうが治りが早いと考えがちですが、実は安静にしすぎることも腰痛を長引かせてしまうと言われています。
腰痛研究の進んでいるオーストラリアでは、腰痛がおきても“Stay Active!”という言葉でキャンペーンがされました。
ぎっくり腰の治療、検査
痛みが強いときの薬物療法としては、消炎鎮痛剤がよく用いられますが、特に痛みがひどい場合には座薬(おしりの穴から入れる薬)をつかうこともあります。最近では中枢神経に作用する弱オピオイドや神経障害性疼痛に用いられるプレガバリンという薬も使われることが多くなっています。
痛みの場所が、例えば仙腸関節や筋肉の付着部のように一箇所に特定できるようならそこにブロック注射を打つこともあります。ブロック注射は神経の伝導をブロックする薬を痛みをおこしている組織に注入することで、痛みを軽減します。炎症が強い場合には痛み止めの効果は数時間程度のこともありますが、単時間でもブロック注射が効果を示した場合には、注射をした場所があなたの腰痛の震源地(障害組織)であることが確定できますので、病態診断するためにも有効な方法になります。
手を使ったマッサージやストレッチは、腰痛を和らげる方法として一般的だと思います。この徒手療法を震源地の特定に役立てることもあります。何らかの動きのときに腰痛が出る人で、推定障害組織への負荷を徒手的に和らげることで動くときの痛みが軽減される場合には、その場所が震源地であることがわかるとともに、その部位への負担を減らすのに最適なエクササイズが自ずと導き出されてきます。
“ぎっくり腰”の対策
ぎっくり腰は、関節の柔軟性や普段の体の使い方が整っていないために起きることが多いので、1度ぎっくり腰を起こしてしまった人は、2回3回と起こさないようにするためにも、あなたの病態に最もあったエクササイズを行って、自分の体の機能を高めて、次の発作を起こさないように努めていきましょう。
慢性腰痛とは
腰痛が3カ月以上も続いてしまう場合は慢性腰痛と呼ばれます。日常生活での体の使い方や関節の可動性の悪さ、姿勢の問題など、様々な原因から、一度傷めて痛みを出しやすくなっている場所(障害組織)に負担が加わり続けることによって、慢性化してしまいます。
腰痛は心の問題
腰痛がつづいて慢性化すると、気分も落ち込み、自分の価値が低くなったというような心理的な因子も関わり、単なる腰痛が複雑な病態に変わってしまい、難治性になってしまうこともあります。メディアで耳にする“腰痛は心の問題”とは、このような状態です。
しかし、このような状態も、障害組織への繰り返しの負荷が原因となっていることが多いので、できるだけ早い段階で身体機能を高めてあげることが重要です。
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慢性腰痛への対策
慢性腰痛に対しては、消炎鎮痛剤(痛み止めの薬)や注射(痛みを止める注射)はある程度は有効とされています。また、心理的因子が関わってしまったかたにはうつ病に用いられる薬が使われることもあります。しかし、前にも述べたように、障害された組織への負荷を減らすために必要な身体機能改善が最も重要です。
日常生活の何気ない動作の中でも、体の使い方が悪いと、障害組織に負担が加わっていきます。今、慢性腰痛がある人は、日常生活の活動の中で、障害部位への負担がかからないようにするための身体機能改善のためのストレッチ、筋トレ、有酸素運動などのエクササイズを行っていきましょう。