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「胸郭出口症候群」という病名を聞いたことはありますか?あまり認知度は高くありませんが、けっして頻度の少ない疾患ではありません。代表的な症状は「手の痺れ」や「肩こり」などで、頚椎疾患との鑑別が重要になります。あなたの慢性的な肩こりも、もしかしたら胸郭出口症候群が原因かもしれません。

今回の記事では、胸郭出口症候群をどこよりも分かりやすく解説しています。症状や治療法はもちろん、「胸郭の出口ってなに?」という素朴な疑問にもお答えしています。肩こりや手の痺れでお悩みの方、胸郭出口症候群の詳細を知りたい方は、ぜひ最後までお付き合いください。

「胸郭の出口」ってどこ?

胸郭出口症候群は、胸郭の出口で神経や血管が圧迫されることで「手の痺れ」「肩こり」「腕の痛み」などを呈する疾患のことです。

「胸郭の出口」と聞いてもピンとこないと思いますので、もう少し詳しくみていきましょう。ヒトの胸部は何種類もの骨と筋肉で構成されており、代表的なものに「前・中斜角筋」「小・大胸筋」「肋骨」 「鎖骨」などがあります。神経や血管は、これら骨と筋肉の間を抜けるように走行しており、この抜け道が「胸郭出口」と呼ばれるのです。

胸郭出口症候群では、この胸郭出口が狭いことにより神経と血管が圧迫された状態です。具体的には、「腕神経叢」「鎖骨下動脈」「鎖骨下静脈」が障害されることが多いのです。腕神経叢は上肢の運動・感覚を支配する神経で、鎖骨下動脈・鎖骨下静脈は頭部と上肢を循環する血管のことです。

よって、腕神経叢が障害されるタイプを「神経性胸郭出口症候群」、鎖骨下動脈・鎖骨下静脈が障害されるタイプを「血管性胸郭出口症候群」と分類するのが一般的です。胸郭出口症候群のほとんどは「神経性」で、全体の95%以上を占めると報告されています。

胸郭出口症候群になりやすい人

研究により、胸郭出口症候群を発症しやすい人には共通した特徴があります。ここでは、具体的な特徴をご紹介します。

首が長い人、なで肩の人

首が長い人や、なで肩の人の場合、上腕が下に引っ張られやすく腕神経叢が過伸展しがちです。そのため、腕神経叢が障害されて神経性胸郭出口症候群を発症すると言われています。近年では、スマホ操作の姿勢が同様のメカニズムで腕神経叢を障害しやすいと報告されているので、スマホの使用時間が長い方は注意してくださいね。

野球・バレーボール・テニスなどのスポーツ選手

これらスポーツの共通点は、「手を高く上げる」ことです。手を挙げる動作をすると、先に説明した胸郭出口部が狭小化するので神経と血管が圧迫されやすくなります。また、スポーツだけでなく、高さの合わない机でのデスクワークやパソコン作業も同じ理由でリスクになります。

先天的な要因

一定する、生まれつき鎖骨と第一肋骨のスペースが狭い方がいます。このスペースが狭ければ、ここを走行する神経・血管も圧迫されやすいのは自明でしょう。

外傷

胸郭出口症候群になりやすい人というよりはきっかけですが、交通事故などの外傷を契機に、胸郭出口部が狭くなることがあります。「事故にあってから腕が痺れる」という場合、胸郭出口症候群が原因かもしれません。

胸郭出口症候群の症状は「頚の疾患」と似ている

先ほどもお伝えしましたが、腕神経叢は頸髄から出た枝の集合体で、主に上肢の運動をつかさどる神経です。そのため、胸郭出口部で腕神経叢が圧迫されると「上肢の痺れ・痛み」「上肢の筋力低下」「肩こり」などの症状が出現します。また、鎖骨下動脈・静脈が圧迫されると、手先の冷感や感覚低下を伴うこともあります。

これらの症状はいずれも、上肢を挙上したり、首を傾けたりすると悪化する特徴があります。また、重量物を背負うなど肩に負担がかかる動作でも症状は増悪しますので注意してください。患者さんの中には、顕著な症状がなく軽い肩こりを主訴に通院したところ、胸郭出口症候群の診断が下る方もおり、症状の強さは個人差が大きいのです。

加えて、症状を放置すると「自律神経失調症」を併発することもあります。自律神経が侵されると、嘔吐や頭痛、めまいなどの症状が出現することが多々あります。

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上肢の痺れや筋力低下をきたす疾患はさまざまです。一般的には「頚椎椎間板ヘルニア」などの頚椎疾患がイメージされやすいですが、胸郭出口症候群も忘れないで下さい。正しい診断をするには、まず疑うことから始まるのです。

胸郭出口症候群の治療は?

胸郭出口症候群に対しては保存的治療が主体になります。具体的な治療法としては、薬物治療・理学療法・温熱療法・リハビリテーションが主体になります。

薬物治療

胸郭出口部の筋肉が緊張していると、神経・血管の圧迫が強まるため症状も悪くなりがちです。そのため、「エペリゾン」「チザニジン」などで筋肉を弛緩させる治療が効果的です。また、痛みが辛い場合、その原因は神経が圧迫されることにあるので、「プレガバリン」など神経障害性疼痛に有効な薬物がよく用いられます。

理学療法・温熱療法

頸周囲の筋肉をマッサージしたり、温めたりすることで緊張をほぐすことも効果的です。薬物療法に加えて、物理的にも筋肉が弛緩すれば、より高い効果が期待できます。
また、理学療法のなかでも「超音波治療」が有効という報告があります。超音波で神経障害部位に物理刺激を加えることがで、神経を修復する効果があると言われています。

まとめ

胸郭出口症候群はあまり認知度の高い疾患ではないですが、その頻度はけっして少なくありません。特に近年では、スマホやパソコンを操作する機会も多いので、他人事ではない疾患と言えるでしょう。

「肩こりがなかなか治らない」「手の痺れも出てきた」などの症状でお悩みの方、それはもしかしたら胸郭出口症候群が原因かもしれません。手の挙上で症状が悪化するようなら、その可能性はグッと高まります。心配な方は、進行する前に医療機関を受診してはいかがでしょうか。

【参考文献】

唐杉 樹(2015)「胸郭出口症候群の理学所見」 脊椎脊髄ジャーナル 28巻4号

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

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