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ご存知のように、現代の日本はとてつもなくスピードで高齢社会に突入しています。総務省の調査によれば、人口に占める65歳以上の割合は28.7%まで増加しています。(2020年9月時点)高齢者の増加に伴い「医療・介護の問題」も大きくなりますが、なかでも「寝たきりの予防」が大切です。

「寝たきり予備軍」とも言われる要支援者の原因のうち、約30%を関節障害や骨折などの整形疾患が占め、骨粗鬆症による腰の圧迫骨折も見逃せない疾患です。

従来、腰の圧迫骨折のほとんどは保存的治療で完治すると考えられていました。しかし、近年の研究では、圧迫骨折を発症してから治癒までに数年以上経過すると、生存率が急速に減少することが報告されています。そのため、保存的治療が奏功しない場合は、積極的な手術治療を検討する必要があるのです。

今回の記事では、腰の圧迫骨折に対する治療法について解説しています。保存的治療が先行されるのは従来通りですが、場合によっては手術治療も必要になります。近年の手術治療は低侵襲化しつつあり、圧迫骨折に対する「Vessel Plasty」もその一つです。小さな傷で手術可能で術後の回復も早いため、高齢者が多い圧迫骨折にピッタリの治療です。

基本的には保存的治療

腰の圧迫骨折に対しては、「保存的治療が第1選択」です。理由としては、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症のように神経障害を併発することは少ないからです。

保存的治療の中心は、薬物治療と装具治療です。特に装具治療は重要で、オーダーメイドの硬性コルセットを作成次第、歩行練習を開始するのが一般的です。硬性コルセットは非常に硬く作られているので、皮膚に食い込んで痛みを引き起こす、皮膚トラブルを合併するなどのデメリットがあります。

そのため、硬性よりも軟性コルセットが好まれがちですが、しっかりとした骨の癒合のためには、硬性コルセットがすすめられます(研究によっては、「軟性コルセットと硬性コルセットで差がない」という報告もあります)。

手術適応

圧迫骨折の大部分は保存的治療で治癒しますが、13%程度は偽関節(骨が癒合せずグラグラした状態)に進行し、約3%は神経障害を合併するという報告があります。このような場合は、保存的治療だけでは完治しないため、手術治療が検討されます。

特に、変形した骨によって脊髄や神経が圧迫され神経障害を呈するケースは速やかな手術が望ましいとされます。一度傷ついた神経は治りにくいため、早めの手術による神経圧迫の解除と骨の再建が求められるのです。ただし、患者さんは高齢者が多く手術への耐性が低い場合も考えられるので、手術の適応は症例ごとに慎重に判断すべきです。

具体的な術式、変遷

圧迫骨折に対する手術治療は、1990年代までは椎体前方の固定をする術式が一般的でした。なぜなら、脊椎前方部分に骨癒合不全が多かったためです。しかし、1990年代後半からは固定器具の改良もあり、椎体後方の固定術も盛んになりました。

また、同時期からは「椎体充填術」といって、椎体内にセメントを注入する手術がおこなわれるようになりました。椎体充填術は、小さい傷で手術可能な低侵襲手術です。状態によっては局所麻酔での日帰り手術も可能で、術後早期から痛みがとれるので、高齢者に適した手術なのです。

最新のセメント治療VP

Vessel Plasty(椎体増幅形成術)は、最新の椎体充填術のことです。従来の椎体充填術は、小さな傷からバルーン(風船様の器具)を挿入して変形した椎体を矯正し、内部へセメントを注入していました。

一方、Vessel Plastyでは、椎体を矯正した箇所に網状のフィルターを設置してセメントを注入します。フィルターを用いることで、骨セメントが椎体外へ漏れ出るのを防ぐ効果があります。

骨セメントが漏れ出て静脈に吸収されると、肺塞栓症(通称エコノミークラス症候群)を引き起こす可能性があるので、セメント漏出を防ぐのは大切なのです。また、フィルターがあることでセメントと骨が適切に絡み合うため、適合性が高くなるメリットもあります。

高齢者に多い腰椎圧迫骨折!治療とリハビリのポイントを解説

まとめ:腰の圧迫骨折は早期介入で予後を改善。場合によっては手術も検討

腰の圧迫骨折は保存的治療が第1選択ですが、状態によっては手術も検討しなければなりません。従来の手術治療は侵襲が大きく、高齢者が多い圧迫骨折の治療としては不利な面がありました。しかし近年では、Vessel Plastyを代表とする椎体増幅形成術が普及したこともあり、低侵襲での手術が可能になりました。患者さんによっては局所麻酔の日帰り手術が可能で、翌日にはリハビリを開始できるのでADL(日常生活動作)を落としにくいメリットがあります。

高齢化の影響もあり、ご自身やご家族が圧迫骨折でお悩みの方も多いと思います。圧迫骨折は早期から介入すれば、治療効果も高まるので、早め早めの行動が大切ですよ。

【参考文献】
戸川 大輔(2015)「Balloon kyphoplasty(BKP)の最新知見」 脊椎脊髄ジャーナル 28巻5号

著者情報

広下若葉
広下若葉

保持資格

医師国家資格・麻酔科標榜医

経歴

2015年:医師国家資格 取得

2017年:初期臨床研修プログラム 修了

2020年:麻酔科標榜医 取得

    麻酔科専門研修プログラム 修了

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