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コルセット治療は施設によって異なる

コルセット治療は施設によって異なる

腰椎圧迫骨折のほとんどは、保存的治療が第1選択になります。具体的には、「安静」「鎮痛薬」「装具治療(コルセット・ギプス)」「運動リハビリ」などが挙げられ、なかでも装具治療は保存的治療の中心に位置付けられます。

ただし、保存的治療には確立した治療ガイドラインがないのが現状です。そのため、施設や担当医師によって腰椎圧迫骨折の治療方針が異なることも珍しくありません。

装具治療も例外ではなく、施設によって、固定方法(硬性コルセットor軟性コルセットorギプス固定)、固定期間、安静の必要性などに違いがみられます。

アンケート調査によると、”骨粗鬆症による腰椎圧迫骨折に対する装具固定の内訳は、「軟性コルセット 43%」「硬性コルセット 40%」「体幹ギプス 32%」で、固定期間は「7.5~12週間」と報告されています。(倉都滋之、他:骨粗鬆症性椎体圧迫骨折に対する外固定治療の現状と課題 より)

コルセット治療の最大の目的は、「骨折部の安静化」です。コルセットで骨を固定することで、痛みを抑えつつ、骨が癒合(折れた骨が固まること)するのを待ちます。一般的には、治療開始から2~3ヶ月で骨が癒合することが分かっています。

ただ、安静だけでは足腰の筋力が低下したり、認知症の進行が早まったりするかもしれません。近年では、コルセットが完成次第の早期リハビリが広まってきたのも、高齢者の寝たきりを予防するためなのです。

コルセットのメリット

コルセットをすることのメリットは、骨癒合が期待できるだけではありません。ここでは、コルセット治療のメリットについて つのポイントから解説したいと思います。

痛みが軽減する

腰回りのを固定することで、折れた腰椎の可動性は小さくなります。骨折箇所が動かなければ、痛みの軽減に期待ができます。また、コルセットが腰を支えることで、腰回りの筋肉の負担軽減にもつながるので、筋・筋膜性腰痛を合併している方の腰痛軽減にもつながります。

姿勢の安定化

体表から腹部を圧迫することで腹圧(お腹にかかる圧力)が上昇します。腹圧が上昇すると腰椎が固定化され、姿勢が安定化します。発症早期にリハビリを開始するためにも、姿勢の安定化は欠かせません。。

保温効果もある

特に冬場に問題になりますが、冷えは腰痛の大敵です。硬直した組織には血流が循環しにくく、痛みが増強する要因になります。同時に、筋肉が硬直した状態でのリハビリは、別のケガを引き起こすリスクもあります。

コルセットは腰周りを保護ことで、保温効果に期待できます。カイロ等を用いなくても腰部の筋肉を温められるので、一石二鳥ともいえるでしょう。

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コルセットのデメリット

コルセット治療には、いくつかのデメリット・注意点が存在します。注意点を理解した上で、ほかの治療法を組み合わせれば、お互いにデメリットを打ち消し合うことができます。

骨癒合しない場合がある

過去の研究によると、保存治療を行った患者350例のうち13.5%が骨癒合せず、偽関節(骨と骨が接合しないままのグラグラ状態)に進展したと報告されています。(Tsujio T, et al:Characteristic radiographic or magnetic resonance images of fresh osteoporotic vertebral frac- tures predicting potential risk for nonunion:a prospec- tive multicenter study より)

保存的治療では完治が期待できな場合は、手術治療を検討しなければいけません。近年の腰椎圧迫骨折手術は低侵襲化が進み、状態によっては局所麻酔での日帰り手術ができるようになりました。

ただ、身体にメスを入れることには変わりなく、特に高齢者に対しての手術には危険がつきものです。可能ならば、保存的治療での完治が望ましいでしょう。

腰回りの筋力が衰える

コルセットは腰回りの筋肉に変わり、腰部を支持する機能があります。これは姿勢の安定化や腰の安静につながる一方で、腰の筋肉の働きを奪うことになります。そのため、必要以上にコルセットを使用すると、筋力の低下を起こしかねません。また、コルセットの長期使用は、精神的なコルセットへの依存も強めてしまいます。

骨の癒合を確認次第、コルセットを外して積極的に筋肉を働かせることも大切なのです。

まとめ:腰椎圧迫骨折において、コルセット装着は保存的治療のかなめ

腰椎圧迫骨折を保存的に加療する過程で、コルセットの装着は欠かせません。腰の安静と骨癒合のためには「必須」ともいえる治療方法で、疼痛の軽減化や保温効果にも期待できます。

残念ながら、コルセット装着だけでは完治しえない圧迫骨折も一定数います。しかし、腰椎圧迫骨折において、コルセット治療が重要なことに変わりありません。早期にリハビリを開始し寝たきりを予防するためにも、正しくコルセットを装着して骨の安定化を図りましょう。

【参考文献】
加藤 剛「骨粗鬆症性椎体骨折に対する装具療法の検討」 臨床整形外科 53巻4号

著者情報

広下若葉
広下若葉

保持資格

医師国家資格・麻酔科標榜医

経歴

2015年:医師国家資格 取得

2017年:初期臨床研修プログラム 修了

2020年:麻酔科標榜医 取得

    麻酔科専門研修プログラム 修了

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