腰痛といっても、種類はさまざまです。なぜなら、痛みを起こしている組織はそれぞれ違うためです。
腰の中心には背骨があり、背骨と背骨の間には脊髄神経や椎間板というクッションが、背骨の周辺には骨を支えている靭帯があります。さらに背骨を動かすために何種類もの筋肉が存在していて、下の部分では骨盤が背骨の土台になっています。
どの組織が痛めているかによって、痛い場所が変わってきます。
今回は、腰痛の痛い場所別の原因と対策について紹介していきます。
目次
痛い場所別の原因
腰の背骨の両側もしくは片側の痛み
筋・筋膜性腰痛
背筋、腰の筋肉で主に姿勢を維持している「脊柱起立筋」という筋肉による背中から腰の痛みです。
脊柱起立筋は3つの筋肉で構成されていて、最長筋・腸肋筋・棘筋があります。
これらの筋肉は、体幹を回旋したり後屈したりする時に働きます。
特に背骨の両側に盛り上がっている筋肉の「最長筋」や、すぐ横にある筋肉の「腸肋筋」が痛みを起こしやすいです。
急性と慢性があり、急性では重たい荷物を持った時や、体を捻った時に筋肉を損傷してしまう場合があります。
慢性では、日常生活での猫背などの不良姿勢や、腰が丸くなってしまうことでの骨盤の後傾し、腰の筋肉の血流が悪くなり腰痛が発生します。
症状として、腰の重たい痛みや鋭い痛みが発生します。座っている状態から立つ時、長時間座っている時、寝返り動作等の体位変換の時に痛みが出ることが多いです。
特に前屈時に痛みを訴えることが多く、顔を洗う時や床の物を取ろうとした時に痛みが走ります。
腰の真ん中(背骨)の痛み
腰椎分離症・すべり症
腰は、腰椎(ようつい)という5つの骨が積み木のように重なって構成されています。
腰椎分離症は、その腰椎の椎弓(ついきゅう)という、背骨から後ろ側に出でいる部分が、激しいスポーツ活動や運動により疲労骨折して腰痛が発生するものです。
特に骨が成長過程の子供に多い腰痛です。子供で腰痛があり、背骨が痛いと訴えた場合は一番に疑います。スポーツの練習やトレーニングなどで、ジャンプ動作や体幹の回旋動作の繰り返しにより、椎弓部分に負担が掛かり疲労骨折を起こします。
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地方大会優勝クラスや全国大会出場クラスのチームでプレーしている中学生~高校生の選手は、練習やトレーニングに体が付いていかず、腰椎分離症になってしまう場合が多いです。
症状は、体幹後屈時や回旋時に強く痛みを感じます。分離した部分が神経を圧迫してしまうと、足に痛みやシビレが発生することもあります。
椎弓が疲労骨折を起こしても、痛みがあまり無かったり痛みを我慢したりして治療を行わなかった場合、歳を重ねると分離した腰椎が前方に滑ってしまい「腰椎すべり症」に移行します。特にすべり症は、腹筋の筋力が低下すると前方に滑ってしまいます。
分離した腰椎は、疲労骨折した時期にしか骨がつきません。
すべり症により慢性的な腰痛が引き起こされることが多く、腰椎が不安定なため前方や後方にずれることで神経を圧迫して、足に痛みやシビレが出る場合があります。
腰椎圧迫骨折
高齢者に多い腰痛の一つです。骨粗鬆症により骨が弱くなることで、わずかな外力で腰椎が潰れてしまい圧迫骨折を起こしてしまうことがあります。
くしゃみをした時、尻餅を衝いた時、何もしていないのに骨折している場合も多いです。自重に腰椎が耐えられなくなり起こると考えられています。なかなか骨折に気付かないことから「いつの間にか骨折」と呼ばれています。
症状はいつもの腰痛より、痛みが強いです。急性の筋・筋膜性腰痛と似ていますが、特に動き始めや寝返り動作の時に強い痛みを感じます。大きな特徴として、便秘になり何日も便が出ないという症状が現れることがあります。
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腰椎椎間関節症
腰椎が加齢により変形することで腰痛が出るものです。誰でも変形は起こります。しかし若い時に立ち仕事が多かったり、重たい物を持ったりして腰椎に人より負担を掛けていると、変形が早く進んでしまい痛みが起こってしまいます。また、体幹の筋肉が低下して腰椎が不安定になり、変形が進んでしまうことも多いです。
症状として変形部を圧迫する動作、つまり体幹後屈時に痛みがあるのが特徴です。また変形した骨が神経を圧迫し、足に痛みやシビレが出る場合もあります。
腰の付け根(仙骨部分)の痛み
筋・筋膜性腰痛
前述した、背筋・腰の筋肉で主に姿勢を維持している「脊柱起立筋」という筋肉による痛みです。
この筋肉は仙骨部分にも付着しており、しばしば痛みが発生しやすい場所になります。
仙腸関節性腰痛
仙腸関節とは、骨盤の後ろ側にある腸骨と仙骨が形成している関節です。この関節は、ほとんど動かないため平面関節と言われています。しかし、長時間の不良姿勢や妊娠、またスポーツなどで関節に負担が掛かり痛みが発生します。
症状は座っている時に痛んだり、運動時に痛んだり、寝ていても痛む場合もあります。
腰から殿部・足にかけての痛み
腰椎椎間板ヘルニア
5つある腰椎の間には、椎間板というクッションのような役割をしている組織が存在します。重たい荷物を持ったり急に体幹を回旋したりして、椎間板が突出してしまい神経を圧迫し腰痛や坐骨神経痛を引き起こします。また、加齢により椎間板が変性し、何も原因が無いのに突出してしまう場合も多いです。
症状は腰痛ともに、片側の足の痛みやシビレも発症するのが特徴です。坐骨神経痛のように腰から殿部・足にかけて症状が出てきます。また、症状が悪化すると片足の力が入りにくくなったり、大腿部(太もも)や下腿部(ふくらはぎ)が痩せて細くなったりしてしまいます。
腰部脊柱管狭窄症
腰椎の後ろにある、脊髄神経が通っている脊柱管が何らかの原因によって圧迫されている状態です。
高齢者に多い腰痛で、50歳以上の方に多いです。
症状として、腰痛もありますが両足のシビレを訴えられる方が多いです。これは脊髄神経を圧迫しているためです。
また最大の特徴として「間欠性跛行(かんけいせいはこう)」という症状が現れます。これは数百メートル歩いていると足が痺れてきて、体幹を前屈して座って休むと、また歩けるようになる症状です。症状が強い方は数十メートルで歩けなくなります。しかし自転車は乗れて、その方が楽なことが多いです。
疾患別の対策
腰の背骨の両側もしくは片側の痛み
筋肉の症状のため、ストレッチをしましょう。朝起きた時と夜寝る前に、ベッドの中で行うと効果的です。
まず。両ヒザを抱え込むようにして、身体を丸めてください。
次に、足を曲げて、身体を左右に捻ることで腰の筋肉を伸ばすことができます。
腰の真ん中(背骨)の痛み
コルセットを着用し、できるだけ安静にしましょう。特にスポーツ活動をしている子供は、今しか分離症は治りません。痛みがある場合は、スポーツ活動を中止し、専門家の指示に従って下さい。
高齢者の場合は、痛みが強く出ていることがあるので、外出せずに安静にしましょう。
腰の付け根(仙骨部分)の痛み
この場所はコルセットを着用しても、あまり効果がありません。なぜなら、痛みが起こっている場所を固定できていないからです。この場合は、骨盤ベルトがおすすめです。骨盤を支えることで痛みが起こっている場所をしっかり固定することができます。
腰から殿部・足にかけての痛み
腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症もコルセット着用が効果的です。腰椎の動きを抑えることで、神経の圧迫も軽減できます。また、普段の姿勢も気を付けると効果的です。腰椎椎間板ヘルニアは、体幹を前屈すると椎間板が後ろにいき神経を圧迫するため、背筋を伸ばしておきます。
逆に腰部脊柱管狭窄症は、体幹を後屈すると神経を圧迫するため、症状が出たら前屈すると良いでしょう。症状がある方は整形外科を受診して医師の診断を受け、ストレッチなどの腰痛に効果的な体操を学びましょう。