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今問題視されているのが、おうち時間の増加に伴う「運動不足問題」です。厚生労働省の健康日本21によると、「1日の平均歩数」は男性で7,243歩、女性で6,431歩と提言されています。しかし現在は、テレワークや外出機会の減少の推奨に伴い、1日の平均歩数が3,000歩未満の方が3割もいるという調査結果があるのです。活動量の低下によって「コロナ太りをした」というエピソードも珍しくなくなっていますよね。

そして今、コロナの二次被害として「運動不足による腰痛」に悩む方が増えている傾向にあります。もともと腰痛はなかったのに、このおうち時間で腰痛となってしまった人、あるいはもともと腰痛があり、腰痛が悪化した人は決して少なくありません。

そこで今回は、なぜ運動不足になると腰痛となるのか、そしてそれをふまえた上で、自宅で簡単に取り組める解消方法をご紹介させていただきます。

どうして運動不足で腰痛って起きるの?

そもそも、どうして運動不足になると腰痛が起きるといわれているのでしょうか?まずはその背景を見ていきましょう。

筋力が衰えて、柔軟性が低下する

まず私たちの身体は「脊柱(せきちゅう)」と呼ばれる背骨があり、脊柱の腰の部分を「腰椎(ようつい)」と呼びます。脊柱は首から腰にかけてゆるやかなカーブを形成しており、このカーブのおかげで、約5kgもあるとされている人間の頭を支えてくれているのです。

一方で運動不足となると、腰まわりの筋肉の衰えや、柔軟性の低下が生じます。これによって、脊柱全体や腰椎のバランスが崩れ、腰回りの筋肉に過度な負担がかかり、痛みが発生してしまうのです。

これがいわゆる「腰痛」です。この腰痛が長期化すると、私たちは無意識のうちに腰をかばって動作をするようになり、肩や膝など、他の部分にも影響をきたす場合があります。

血行障害により老廃物が溜まってしまう

運動不足によって腰回りの筋肉の血行が滞ることで、腰痛を引き起こす場合もあります。

まず、筋肉が凝り固まった状態が続くと、その部分の血流が滞ります。そして硬直した筋肉が末梢神経を圧迫、または損傷し、溜まってしまった老廃物質が神経を刺激することで、痛みを生み出す「発痛物質」が作られます。この発痛物質が放出されることで、さらなる痛みが生まれる、といわれているのです。

ストレスが解消されず蓄積されてしまう

適度な運動はストレスを発散させる効果が期待できます。また、運動することで身体が疲弊するため、その疲弊感こそが良質な睡眠につながるとされています。このことからも、運動不足となるとストレスが発散されないことはもちろん、体力も疲弊しないため、良質な睡眠が取りにくくなってしまうのです。

そして今、「ストレスを抱えていると腰痛が悪化する」という興味深いデータが出ています。研究によると、ストレスを抱えている場合、脳に備わっている痛みの抑制機構の働きが不十分となり、過剰に痛みを感じてしまうといわれているのです。

現在は自由な外出が抑制され、誰しもがストレスを抱えている状況です。そのストレスを発散するための運動機会も制限されているため、まさにストレスフルな状況が毎日続いている、ということができるでしょう。

自立神経が不安定になる

運動は筋力強化の他に、自律神経を整える効果も期待できます。自立神経とは、内臓の血管の働きをコントロールし、身体の状態を整えてくれる神経です。身体を動かすことで、幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」などの神経伝達物質が分泌され、気分が晴れやかになることが期待されます。一方で運動不足となると、自律神経の乱れを招き、そのストレスがさらに腰痛を悪化させる懸念がある、といわれているのです。

運動不足によって肥満を招く

運動不足になると、肥満となりやすい傾向にあります。そして、肥満は腰に負担をかける要因のひとつです。体重が多い分、身体を支える役割を果たす腰への負荷が多いのです。また、お腹が前に出ている分、腰が反り腰となってしまうことも腰に負担がかかり、腰痛を招きやすいといわれています。

これらの背景が単独で潜んでいることはもちろん、複雑に絡まりあっている場合もあります。腰に直接的には関わりがなくても、積み重なると「腰痛」として症状が身体化し、深刻な痛みを招く可能性があるのです。

運動不足度をチェックしてみよう

ここまで運動不足と腰痛の相関関係を見ていきました。この章では、あなたの運動不足度を見ていきます。いくつ当てはまるか、チェックしてみましょう。

□身体を動かすことが億劫だ
□寝起きから動き出すまで時間がかかる
□エレベーターやエスカレーターがあれば、階段ではなくそちらを使ってしまう
□少し階段を使っただけでも息切れする
□少しの距離でも歩くと嫌になる
□慢性的な疲れがある
□休日は起きているよりも、ゴロゴロしていることが多い
□夕方や夜になると疲れを感じやすい
□運動する時間を確保できていない
□しばらく体重を測っていない

・チェック数が0〜2個の場合
素晴らしいです。運動不足ではありません。ぜひこのままの習慣を維持してください。

・チェック数が3~7個
少し運動不足な傾向があります。このままの生活スタイルを続けていくと、腰痛が発生したり、悪化したりする可能性があるでしょう。免疫力の低下や、生活習慣病となるリスクも考えられます。意識して運動機会を設ける必要があるでしょう。

・チェック数が8~10個
深刻な運動不足といえます。このままでは、腰痛の発症や悪化はもちろん、生活習慣病になるリスクが高いです。意識的に身体を動かす機会を作る必要があるでしょう。

特に動かしてほしい筋肉3選

ここまでで運動不足と腰痛の関係、そしてあなた自身の運動不足の程度を見ていきました。チェックリストの結果はいかがでしたか?運動不足にはなっていなかったでしょうか?もしかすると、ここまで読んで「運動をしよう」と決意されているかもしれません。

あるいは「運動する必要はわかったけど、どんなことをすればいいの?」、あるいは「どこを鍛えたらいいの?」と悩んでいるかもしれません。そこでこの章では、3つの筋肉にフォーカスをあてて、運動方法をご紹介していきます。

腸腰筋

ひとつめは「腸腰筋(ちょうようきん)」と呼ばれる筋肉です。この筋肉は、背骨の腰のあたりから始まり、骨盤の内部を通って、太ももの内側に付着している筋肉です。動きとしては、股関節を曲げたり、足を外開きにしたり、骨盤を前傾させる働きを担っています。

この筋肉は筋肉の中でも奥深くにある筋肉であるため、こわばりをマッサージでほぐすことは容易ではありません。そのため、腸腰筋はストレッチでアプローチする方が簡単です。腸腰筋のストレッチを行うことで、股関節周りの柔軟性が向上し、腰回りの筋肉の血流を保つことが可能になります。

ストレッチ方法

(1)足を前後に開き、後ろ足の膝は床につけましょう。
(2)両手を前足の膝の上に起き、ゆっくりと息を吐きながら徐々に上体を前方へ動かしましょう。
(3)ゆっくりと息を吸いながら、上体を元に戻します。
この(1)~(3)の動作を、左右の足を入れ替えて5〜10回行いましょう。

腹直筋

続いては「腹直筋(ふくちょくきん)」と呼ばれる筋肉です。この筋肉は、恥骨部分から始まり、胸の肋骨にかけて付着している筋肉です。動きとしては、腰椎を前や横に曲げたり、骨盤を後傾させたりする働きを担っています。

また、腹直筋は、腹腔内圧を高めたり、排便を助けたり、内臓の位置を安定させてくれる役割も担っています。表層にあり、筋トレなどでも視覚的にわかりやすく、一般的には「シックスパック」と呼ばれることが多いです。

また、ストレスを抱えていると、我々は防衛本能として腹壁が緊張すると言われており、その場合には腹直筋が常に緊張状態にあることになります。つまりストレスを抱えていると、腹直筋が常に緊張状態にあり、腰痛を招きやすいともいえるのです。

腹直筋は鍛えやすい筋肉でもあり、腹直筋を鍛えることで、腰椎のもつS字カーブを維持できます。

腹直筋のトレーニング

(1)仰向けになり、両膝を立てましょう。
(2) 両手を前方に伸ばします。
(3)息を吐きながら、ゆっくり上体を起こしましょう。
(4)そのまま1~3秒静止します。
(5)息を吸いながらゆっくり元に戻ります。
この(1)~(5)の動作を3〜5回繰り返します。

脊柱起立筋

3つ目は「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」と呼ばれる筋肉です。この筋肉は頭の付け根から始まり、骨盤まで背骨にそって付いている長い筋肉です。また、作用としては背骨をまっすぐに保つ働きを担っており、この筋肉なしに我々は重力に逆らって上体を起こしていることはできません。

反対に脊柱起立筋が弱くなると、脊柱のS字カーブを保てなくなるため、腰痛が生じてしまうといわれています。

脊柱起立筋のトレーニングは、腰痛の疼痛緩和だけではなく、猫背の予防や改善にも効果的です。日頃から意識して鍛えることで、腰痛と猫背の改善が期待できるといえるでしょう。

脊柱起立筋のトレーニング

(1)うつぶせになり、両肘を立てましょう。
(2)ゆっくりと息を吐きながら肘を伸ばし、上体を起こします。
(3)上体を起こしたまま、5~10秒保ちます。
(4)息を吸いながらゆっくりと(1)の姿勢に戻りましょう。
この(1)~(4)の動作を5〜10回繰り返します。

運動療法の腰痛再発予防効果

筋肉をつけることによって腰痛は予防できるのでしょうか。

2010年に運動療法が腰痛の再発を減らすことができるか検証した研究が発表されました。  1113人が参加した5件の研究を検証したこの研究では。腰痛の発症した後の治療後の運動は、運動を行わない場合よりも1年後の再発率を減少させる効果的であるという結果が得られました。(0.5 95%信頼区間0.34~0.73)

この論文でいう運動とは、医師と相談のもと行われる運動で、どんな運動をしてもいいとは書かれていませんでしたが、予防法として運動が評価された形になります。

運動はどうやら腰痛の予防に効果がありそうですね。

せっかくやるなら楽しい運動習慣を取り入れよう!

前章では、筋肉にフォ―カスしたトレーニング方法についてご紹介させていただきました。しかし、こういった「クローズドな筋トレが苦手」という方は、この通りに筋トレをしなくてもかまいません。大切なことは「運動習慣を獲得すること」です。そこでこの章では、自宅でも簡単に取り入れやすい運動方法をご紹介させていただきます。

有酸素運動をしてみよう

有酸素運動とは、「酸素を使って時間をかけてする運動」のことを指します。有酸素運動の代表として挙げられているのがウォーキングや水泳、ジョギングです。しかし屋外での運動がはばかれる今、自宅で行える有酸素運動が望ましいといえるでしょう。

自宅で行える簡単な有酸素運動といえば「スロースクワット」や「階段昇降」、「(エア)縄跳び」です。特別な機器を用意する必要もありません。おうち時間を活用して、テレビを見ながらスクワットをしたり、縄跳びをしたりすることで楽しく運動ができます。

動画配信サービスを利用してみよう

最近では、動画配信サービスを通じてエクササイズをすることが主流となってきました。有料コンテンツはもちろん、YouTubeなら無料でエクササイズを行うことができます。こういったサービスを利用することで、自宅にいながら本格的なエクササイズを受講できるのです。自分ひとりでは挫折してしまい、長続きしない方にもおすすめです。

腰痛ドクターを使ってみよう!

ここまで読んでみて、あなたの腰痛の悩みは少しでも解決しましたか?実は今、病院に受診する前に、簡単にスマートフォンで腰痛の診断ができるアプリがあるのです。それがこの「腰痛ドクターアプリ」です。腰痛ドクターアプリでは、自動問診で自宅にいながら、詳細な問診を受けることができます。

その他にも、腰痛に悩める人にとって嬉しいコンテンツがたくさん掲載されているのです。もしかするとあなたの腰痛の悩みが解決するヒントがあるかもしれません。
よろしければぜひチェックしてみてくださいね。

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

痛みや体の不調で悩むあなたへ、役立つ情報をお届け。

自分の体の状況(病態)を正しく理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目的です。

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