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テニスは世界中でプレーされ,熱狂的なファンも多い人気スポーツの一つです.

テニスはポイント制であることから,試合時間も長くなり,有酸素運動と無酸素運動を幾度となく繰り返します.
さらに,サーブ,スマッシュ,グラウンドストロークなど,多様なストロークをさまざまな姿勢で繰り出すことで,全身の関節へ反復してストレスを蓄積していくのもテニスの特徴です.
このような競技特性から,テニスプレーヤーのけがは全身で生じます.

この記事では,テニスを続けることで生じる腰痛の原因と,予防や再発防止にかかせない体幹筋トレーニングの方法についてご紹介します.

テニスと腰痛の発症率は?

すべてのレベルにおけるテニスプレーヤーの体の部位別にけがの発症率を調査した報告では,下肢が最も多く(31~67%),次いで上肢(20~49%),最後に体幹(3~21%)と報告されています1).
一見,腰痛はテニスプレーヤーにおいて,発症率の低いけがのように見えます.
しかし,プロテニスプレーヤー143人の疫学的調査を行った研究では,38%が腰痛のために少なくとも1回のトーナメントを欠場したという結果が報告されています2).
さらに,12~18歳のテニスプレーヤーを2年にわたり調査した研究では,けがの再発率で最も多かったのが,腰痛と報告しています3).
つまり,腰痛は一度発症すると選手生命に影響し,再発も多く,予防とケアが重要なケガといえます.

テニスで多い腰痛の原因はなに?

テニスで最も多い腰痛の原因は筋膜性腰痛,ついで椎間板の変性やヘルニアとされています1).
テニスにおける筋膜性腰痛とは,サーブ,スマッシュなどの反復する激しいストロークにより,筋肉が収縮と伸長を繰り返し疲労し,痛みを発症する腰痛です.
筋膜性腰痛の特徴として,急激に症状が出現します.痛みは,立った姿勢から膝を伸ばしたまま,体を前屈した際に,背骨の横の筋肉に出現します.また,痛みは下肢へのしびれは伴わず,腰部に現局することも特徴です.筋膜性腰痛の治療は安静とアイシング,ストレッチなどの緩和的なケアと動作の改善が必要です.
椎間板ヘルニアは背中を後ろへ反らした際に,背骨中央に出現する痛みが特徴的です.
痛みは腰に現局していることもあれば,臀部~下肢へのしびれとして感じることもあります.重度の場合は手術が必要となることもあり,痛みが強ければ近医の受診を行いましょう.

テニスと体幹筋の重要性

テニスにおいて腰部への負担が最も大きいとされるのが,サーブです.
サーブでは肩や肘といった上肢へ目が行きがちです.しかし,下肢・体幹でサーブのエネルギーの実に51%が生成されることが報告されています4).
サーブは下肢から体幹・上肢へと連動する「運動の連鎖」で構成されていて,強力なサーブを繰り返し打つためには局所への負担がかからないように全身の筋肉を協同させて動く必要があります.
その共同運動の核となるのが,体の中心部にある「体幹筋」です.体幹筋がうまく機能しない場合や,体の一部に過度な負担をかけてしまうフォームでは腰痛を発症しやすくなることが考えられます.

腰痛対策で求められる体幹筋の能力とは?

それでは,体幹筋のどのような能力が腰痛と関連するのでしょうか?
その一つの答えが「体幹筋の持久力」です.
テニスプレーヤーで腰痛がある選手と,腰痛のない選手を対象に,4方向の体幹エクササイズのフォームで保持を行い,その持久力と体幹筋肉の活動量を計測しました.その結果,腰痛を経験したことのある選手では各方向において,体幹保持時間が有意に低下し,さまざまな体幹筋の筋活動量の低下が確認されました5).
つまり体幹筋トレーニングは,筋力だけでなく,「持久力」にもフォーカスして行う必要性があることが考えられます.
次の項目から,実際のトレーニング方法についてご紹介します.

体幹トレーニングのやり方

体幹トレーニングは安定した体幹の土台に,肩・ひじ・手の「上肢」と股関節・膝・足部の「下肢」の連動した動きを獲得することが目的です.これからご紹介する体幹トレーニングは「持久力」の向上を主としているため,ゆっくりとした深呼吸に合わせ,ゆっくりと上肢・下肢を連動させて1種目1~2分を目安に行っていきましょう.

体幹トレーニング1:ニートゥーエルボー

仰向けで床に寝た姿勢から,両膝を立てます.両手を頭の後ろで組み,頭を持ち上げ,両側の肩甲骨を床から浮かせた状態を取ります.
そこから,息を吐きながら上半身を左へ捻ると同時に,左足を持ち上げ,右肘と左膝を体の中央でタッチします.肘と膝をタッチしたら息を吸いながら元のポジションへ戻します.続いて,上半身を右へ捻り,左肘と右膝を体の中央でタッチします.
このように,左右交互に体幹をねじる筋肉「腹斜筋」を使いながら,下肢との連動性を高めていきます.

体幹トレーニング2:サイドブリッジ・ニートゥーエルボー

床に右側を下にした横向きの姿勢をとります.左足と右手で体を支えながら体を持ち上げ,全身を一直線にします.左手は肘を曲げ後頭部に触れ,右足はまっすぐ伸ばしたまま浮かせます.この姿勢から息を吐きながら右ひざを曲げ,上半身は左へねじり,体の中央で左肘と右膝をタッチします.中央でタッチしたら息を吸いながら元の位置へ戻します.
同様の運動を,左側を下にした横向きでも行います.
この運動では体の側面を支える,「腹横筋」,「腰方形筋」を使いながら,下肢との連動性を高めていきます.

体幹トレーニング3:バードドック

四つばいの姿勢から,右上肢,左下肢の対角線の手足をまっすぐ前後へ伸ばします.右上肢はまっすぐ前に伸ばしたまま上に持ち上げ,左下肢は膝をまっすぐ後ろへ伸ばしたまま上に持ち上げます.右足は膝だけを床につけ,つま先は浮かした状態で保持します.この姿勢から息をゆっくりと吐きながら右肘,左膝を同時に曲げ体の中央でタッチします.体の中央でタッチしたら息を吸いながら元の位置へ戻し,これを繰り返します.
運動を行えたら,反対側でも行いましょう.
このトレーニングは,腹部の筋と背部の筋をバランスよく機能させながら体幹を安定させ,上肢と下肢の連動性を高める運動です.
👉腰痛予防におすすめの筋トレ、プランクとは?正しいやり方を一挙紹介!

まとめ

テニスは長時間にわたり,何百回と繰り返されるストロークにより,体の局所への負担が蓄積され,腰痛を発症するスポーツです.発症した腰痛は再発することも多く,予防とケアが重要です.
ストロークの核となる体幹筋は,「持久力」に着目してトレーニングしていくことが,重要な要素です.
今回紹介したエクササイズをもとに,腰痛予防,再発予防を心がけていきましょう.

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【参考文献】
1.Dines J, Bedi A, Williams P, et al. Tennis injuries: epidemiology, pathophysiology, and treatment. J Am Acad Orthop Surg. 2015 Mar;23(3):181-9.
2.Marks MR, Haas SS, Wiesel SW. Low back pain in the competitive tennis player.
Clin Sports Med. 1988 Apr;7(2):277-87.
3.Hjelm N, Werner S, Renstrom P. Injury profile in junior tennis players: a prospective two year study. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2010 Jun;18(6):845-50.
4.Kibler W. Biomechanical analysis of the shoulder during tennis activities. Clin Sports Med. 1995 Jan;14(1):79-85.
5.Correia JP, Oliveira R, Vaz JR, Silva L, Pezarat-Correia P. Trunk muscle activation, fatigue and low back pain in tennis players. J Sci Med Sport. 2016 Apr;19(4):311-6.

【参考】
日本整形外科学会

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

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