高齢者とお住いの皆様、こんなお悩みありませんか。
「おじいちゃんの腰が痛くて、歩くのも大変そう。何かサポートできるものはないかしら」
ぎっくり腰や椎間板ヘルニアなどの腰痛に悩んでいる自分の親や祖父母をみているのは、つらいものです。何か手助けできることがあるのなら、手助けしたいと感じる方も多いのでないしょうか。
そこで腰痛に悩む高齢者には、杖がおすすめです。
杖を使うことで、腰に掛かる負担を軽減し、歩行を楽にしてくれます。
ただ杖と言っても、その種類は多くあるので、どれを選んだらよいか分からない方も多いでしょう。そこで、介護の仕事に10年携わった筆者が杖の選び方と使い方を徹底的に解説します。
目次
杖を使う目的
杖を使う目的は2つあります。
1.歩行のサポート
2.疲労を軽減
杖がどのような役割を果たすことによって、歩行や疲労のサポートができるのか、次の項で詳しく説明します。
歩行のサポート
「転ばぬ先の杖」ということわざがあるように、杖を使うことで転びにくくなります。これは、身体を支える「支持基底面」が広くなることで安定感が増すからです。
例えば、片足で立つよりも、両足で立つ方が安定しているのは、両足で立つ方が「支持基底面」が広いからです。これと同じように、杖を使うことで「支持基底面」が広くなるので、安定感のある歩行ができるようになります。
疲労を軽減
体重の一部を杖に預けられるので、足腰に掛かる負担を軽減できます。
杖の形状によりますが、1本杖の場合、体重の1/6を支えられると言われています。つまり体重60kgの人であれば、10kgもの体重を預けることが可能です。
足腰に掛かる負担を軽減することで、疲労改善の効果が期待できるでしょう。
杖の種類
杖は、大きく分けて5種類に分けられます。
1.1本杖
2.多脚杖
3.松葉杖
4.肘指示型
5.ロフストランドクラッチ
杖によって、特徴が異なるので、自分にあったものを選ぶようにしましょう。
1本杖
1本杖とは、街でよく見かける形の杖で、1本の棒のような形をしています。手軽さが魅力で、持ち運びに便利です。中には折り畳みができて、カバンに入るサイズの杖もあります。持ち手の形もさまざまで、持ちやすいT字型、取っ手に掛け置きができるC字型があります。実際に使ってみて、握りやすいものを使うようにしましょう。
多脚杖
多脚杖とは、床に接する部分が4つある杖です。1本杖に比べて安定性が高く、体重を掛けてもしっかりと体を支えられます。「腰が丸い方」や、「歩行が不安定でより強力なサポートが必要な方」におすすめです。
しかし、床に接する点が4つになったため、1本杖に比べると重くなっています。小柄で力の弱い女性には、扱いにくいものと言えるでしょう。
松葉杖
松葉杖とは、脇の下から体を支えることで、より多くの体重を支られる杖です。「足を怪我した場合」や「体のバランスが悪い方」におすすめです。
しかし松葉杖は大きい杖なので、幅の狭い自宅では使いづらいというデメリットもあります。また、体を支える上半身の力も必要なので、上半身にマヒがある方や非力な女性にも不向きと言えるでしょう。
肘支持型杖
肘支持型杖とは、前腕で体重を支える杖で「リウマチ杖」とも呼ばれます。手首に掛かる負担がないので、「関節リウマチ」のように関節に負担が欠けられない方におすすめです。
ロフストランドクラッチ
前腕をカフと呼ばれる輪に通して、グリップを握ります。多脚杖よりも軽くて、安定感があるので「力が弱い方」や「歩行が不安定で多くのサポートが必要な方」におすすめです。
杖の選び方
身長に合った長さの杖を選びましょう。目安として「身長÷2+2~3㎝」の大きさのものが適切な大きさと言われています。
正確な身長がわからない方は、杖を持って立った時の位置に注目しましょう。目安となる場所は太ももの横にある「大転子」と呼ばれる出っ張りに杖の高さを合わせます。
「大転子」を確認する方法は、腰骨に手を当てて、そのまま下に手を下ろします。太ももの付け根にある出っ張りが「大転子」です。
杖を安全に使うためにも、身長にあった杖を選ぶようにしましょう。
杖の使い方
杖には二つの使い方があります。
1.3点歩行
2.2点歩行
3点歩行は安定感に優れ、2点歩行は速く歩けます。自分にあった使い方を選びましょう。
持つ手は、麻痺やケガをしている側と反対の手に持ちます。
3点歩行
1.杖を前に出します。
2.杖を持つ手と反対の足を前に出します。
3.残りの足を出します。
2点歩行
1.杖と反対の足を同時に前へ出します。
2.残りの足を出します。
杖の持ち方
それぞれの杖には正しい持ち方があります。安全に杖を持つには、正しく杖を持ちましょう。
T字杖の持ち方
人差し指と中指で挟むようにして持ちます。挟めない方は、人指し指を杖に添えて持つようにします。
多脚杖に持ち方
持ち手を握るようにして持ちます。
松葉杖の持ち方
脇の下に杖を置いて、体重を掛けます。ただし脇のくぼみに体重を掛けると腕が痺れてくる恐れもあるので注意が必要です。脇のくぼみから5㎝ぐらい下のところに杖を置くと、痺れを防げます。
肘支持型杖の握り方
肘支持型杖の持ち手には横木があります。横木に前腕を置いて、グリップを握ぎりましょう。
ロフストランドクラッチの持ち方
ロフストランドクラッチには「カフ」と呼ばれる腕を通す輪っかがあります。「カフ」に腕を通してから、グリップを握りましょう。
杖の購入方法
多くの杖は、介護用品店やネット通販で購入ができます。しかし、前述したように握り心地が大切なので、一度は手に取って使い心地を確認するようにしましょう。
最近では百円均一やスーパーの介護用品売り場でも、杖が購入できるようになったので、気軽にお試しができます。
自分にあった杖がわからない方は、医師やリハビリの専門家、担当のケアマネージャーなどに相談してみましょう。
痛みが続くなら無理を通院
杖は、足腰に掛かる負担を軽減するもので、腰痛を治すものではありません。腰痛を改善するには、適度な運動をすることが大切です。
「運動と言っても、何をしたらよいか分からない」という方もいるでしょう。そんな方には「腰痛ドクターアプリ」がおすすめです。「腰痛ドクターアプリ」は、登録をして質問に答えるだけで、腰痛症状に合わせた体操を提案してくれます。
ただし痛みが強くて動けない場合や、体操を続けても改善が見られない場合は医師や専門家のもとを受診するようにしましょう。
まとめ
杖は歩行をサポートしたり、足腰に掛かる負担を軽減したりする働きがあります。腰が痛くて悩んでいる方は、杖の使用を検討してみましょう。
どんな杖がいいか分からない方は、医師やリハビリの専門家、担当のケアマネージャーに相談をしてみるとよいでしょう。
しかし杖を使うだけでは、腰痛は治りません。腰痛を治すには適度な運動をすることが効果的です。ただ、運動を続けても、腰痛の改善が見られない場合は、医師の診断を受けるようにしましょう。
杖は高齢者の体に掛かる負担を緩和する効果があります。「杖なんて年寄りくさい」と敬遠して、自宅に引きこもるぐらいなら、杖を使ったのびのびと外出しましょう。
いつまでも若々しく元気でいるためには、社会との繋がりは欠かせません。あなたの親や祖父母らしい生活を送れるように、自分にあった杖選びをサポートしてみましょう。