「いつも腰が重い」
「何ヵ月も腰痛が続いている」
こんな悩みをお持ちの方は、慢性腰痛かもしれません。パソコン作業やスマホ操作など、現代人は腰痛になりやすい環境で過ごしています。
この記事では、慢性腰痛の原因や治し方、ストレッチ方法を紹介します。慢性腰痛にお悩みの方は、腰の重だるさを改善するために一緒に見ていきましょう。
目次
慢性腰痛とは?
痛みを感じ始めてから3ヵ月以上経過している腰痛を「慢性腰痛」といいます。慢性腰痛に悩む方の年齢層は小学生~高齢者までと幅広いことが特徴です。
痛みはそれほど強くありませんが、腰全体が重だるく感じるようになります。臀部や下肢にしびれや痛みを伴うケースも多く見られます。
しかし、医師の診察や画像検査で異常が見られない場合がよくあります。
急性腰痛との違い
急性腰痛は、痛みを感じ始めてから4週間未満の腰痛を指します。一般的に「ぎっくり腰」といわれる状態です。
物を持ち上げようとしたり、体をひねったりしたときに起こることが特徴です。強い痛みを感じるため腰を曲げることが難しくなり、場合によっては動けなくなります。
20歳以下の方ではほとんど見られませんが、30歳以上の方や過去に経験された方は注意が必要です。
ほとんどのケースでは2日~1週間程度で痛みは治まります。
ぎっくり腰以外では、椎間板ヘルニアや腰椎の圧迫骨折などで強い痛みが発生する場合があります。
慢性腰痛の原因
では、なぜ慢性腰痛になるのでしょうか?
腰痛には原因を特定できる「特異的腰痛」と、原因を特定できない「非特異的腰痛」がありますが、ここでは「慢性腰痛が非特異的腰痛の場合」と仮定して解説します。
長時間のデスクワーク
パソコン作業や事務作業など、長時間のデスクワークは腰に大きな負担をかけます。座ったままの姿勢は筋肉や股関節の柔軟性を低下させ、姿勢が崩れやすいことが特徴です。
長時間座ったままといえば、長距離ドライバーも同様です。運転中の姿勢が悪ければ、体にかかる負担はより大きなものとなります。
長時間座り続けたあとは、立ち上がる際も注意が必要です。筋肉が硬くなっていると、急な動きに対応できず痛みが生じやすくなります。
同じ作業の繰り返し
重い荷物を何度も持ち上げる、決まった方向に腰をひねって作業するなど、同じ作業の繰り返しも腰に負担をかけます。
工場の製造ラインで左右どちらかに体を向けて作業する、といった方は多くいるでしょう。同じ作業を繰り返せば、骨盤に歪みを生じさせて腰痛を引き起こす可能性が高まります。
また、デスクワークなどと同様に同じ姿勢を取り続ければ筋肉が硬くなります。そのため、腰痛になる可能性は高くなるでしょう。
運動不足
運動不足で筋肉が衰えると、背骨のS字カーブを維持することが難しくなります。すると上半身の重さを支えきれなくなり、腰に大きな負担がかかります。
運動不足は筋肉や腰回り全体の柔軟性も失わせてしまうため、なおのこと良くありません。
運動不足になると筋肉が硬くなりやすく、コリや痛みも感じやすくなります。コリや痛みがあれば運動へのハードルは高くなるため、より運動不足を加速させます。結果として悪循環を招いてしまいます。
ストレス
ストレスや不安など心理的要因が影響している可能性もあります。職場や家庭の人間関係、仕事の悩みなど、人によってストレスの元はさまざまでしょう。
ストレスが多いと、脳の仕組みが正常に働かなくなり、痛みを強く感じたり長引いたりすることがあります。
通常の脳は「下行性疼痛抑制系」という仕組みによって痛みを抑え込んでいます。しかし、長くストレスを感じると脳内物質が正しく放出されなくなり、脳の仕組み自体が正しく機能しなくなるのです。
ベッドやソファー
日常生活に使用している家具が原因となっていることもあります。
ベッドや布団
柔らかすぎておしりが沈みこむ布団やベッド、うすすぎて脊柱の生理的湾曲の維持ができない布団などは、腰への負担が増強します。睡眠は毎日何時間も行われる行為です。姿勢や運動を意識しても、就寝する環境が悪ければ、その効果も半減します。今一度自分が就寝する環境を見直し、脊柱の生理的湾曲が維持できるかどうかの確認をしましょう。
ソファー
座面が低く深く沈み込むタイプの椅子はこれも腰に負担がかかります。座面が低く沈み込む姿勢は、一見楽に感じますが、長い時間姿勢を崩して座っていると、どうしても腰椎に負荷がかかります。
また、姿勢を変えたとしても同じように正しい脊柱の弯曲が維持できなので、慢性腰痛がある場合には向きません。座面が硬めの椅子を選びましょう。固い椅子が好みではない場合は、最低限として沈み込みが少ないソファを選ぶとよいでしょう。
慢性腰痛の治し方
ここからは、慢性腰痛の治し方を解説します。主な治し方は次の4つです。
●薬物療法
●考え方を変える
●適度な運動
●ストレス解消
詳しく解説します。
薬物療法
薬物療法では、抗うつ薬や抗てんかん薬が使用される場合があります。急性の痛みに対して使用される消炎鎮痛薬や筋弛緩剤では効果が期待できないためです。
ほかの治療法で効果が得られない場合は、オピオイド鎮痛薬の使用も検討されます。
痛みの伝達を遮断する神経ブロック療法が用いられる場合もあります。ただし、神経ブロック療法は、すべての慢性腰痛で効果が得られるわけではありません。5~10回程度で改善しない場合は、ほかの治療法が検討されます。
考え方を変える
認知行動療法を利用して、腰痛への考え方を変える方法もあります。認知行動療法とは、ものの見方や受け取り方(認知)を変えることで、気持ちを楽にする治療法です。
腰痛が慢性化すると「腰痛のせいで今日も何もできなかった」といった思考になりがちです。マイナスの面ばかり捉えがちになりますが、考え方を変えれば腰痛への向き合い方も変えられます。
「痛みはあるけど〇〇ができた」と考えれば、腰痛に対するストレスは小さくなります。
道具などは不要なため、誰でもかんたんに取り組める治し方です。
適度な運動
適度な運動をすると、硬くなった筋肉をやわらくする効果が期待できます。また、腹筋や背筋が鍛えられれば、脊柱を支える力を強化する効果も期待できます。
運動内容は、全身をよく動かす次のような方法がおすすめです。
●ウォーキング
●軽いランニング
●サイクリング など
軽く汗ばむ程度で1日20分程度が目安です。慣れてきたら少しずつ距離や時間を伸ばし、日頃の習慣にできればさらに良いでしょう。
適度な運動にはストレスを緩和効果も期待できるため、とくにおすすめの治し方です。
ストレス解消
日頃からストレスと上手に付き合う方法を身につけることも重要です。
心身の緊張を緩めるには、呼吸法やヨガなどが有効です。呼吸法なら短時間でできるため職場でもすぐに取り組めます。
筋肉の緊張を緩めるにはストレッチがおすすめです。運動はハードルが高いと感じる方は、まずはストレッチから取り組んでみましょう。
親しい友人や信頼できる知人と話すことも重要です。人に話すことでスッキリできますし、自分では思い付かないようなアドバイスがもらえるかもしれません。
ただし、飲酒や喫煙でのストレス解消はおすすめできません。飲酒は適度な量であればストレス解消にもなりますが、習慣にするのは避けたほうが良いでしょう。
慢性腰痛を改善する方法
腰の周りの筋肉を鍛える・伸ばす・緩める
慢性腰痛は、腰を支える周囲の筋肉が衰えたり硬くなってしまったりして痛みを感じます。そのため、腰の周囲の筋力を上げたり硬くなった筋肉をほぐしたりするストレッチや体操を行うと痛みは軽減できます。
注意点は、やりすぎないこと。痛みを感じるまですると逆効果です。ゆっくりと痛みを感じない範囲で行いましょう。
ツボを押す
腰痛に効果がある、とされているツボを押すと痛みが緩和されます。
ツボには神経や毛細血管が集まっているため、ツボを押すと血管が拡張され血行が良くなったり、脳に信号を送って痛みを緩和する働きがあるエンドルフィンという物質を分泌させたりする働きがあることが、研究の結果判明しています。
低周波治療器を使う
低周波治療器は、電気による刺激で筋肉を収縮させたり弛緩させたりします。すると、その作用で血行が促進されるため、腰痛を緩和します。
電気を通した後、しばらく効果が続くのもおすすめポイントです。身体を動かす必要がなく、テレビを見ながらでも本を読みながらでもできるので、忙しい人や運動が苦手な人、面倒くさがりな人にとくにおすすめです。
温める
痛い部分の筋肉を温めると血行が良くなってこわばりが弱くなるのため、腰痛が緩和されます。
最も効果的なのは入浴ですが、ドライヤーや使い捨てカイロを痛い部分や周辺に15分程度あてても効果があります。ホットパックを使用しても構いません。
なお、急性の腰痛は、患部に炎症が起きているため冷やします。間違ってしまうと痛みが強くなってしまうので注意しましょう。
冷やした方がいいのか温めた方がいいのかわからない場合は、少し試してみて気持ちがいい方を選んでください。
腰痛改善に効果がある食べ物を食べる
ビタミンB1には、筋肉の疲れを取る働きがあります。ビタミンEには血行を良くしたり筋肉の緊張を取ったりする働きがあるので、腰痛の改善に効果が期待できます。
また、骨や筋肉を強くする働きのある成分を摂ることも腰痛対策に効果があります。骨を作るために必要なカルシウムや筋肉を作るアミノ酸、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを摂取すると効果が期待できます。
カルシウムが多い小魚や乳製品、ビタミンEを多く含む大豆製品、血行を良くする働きがあるDHAやEPAを多く含む青魚、疲労回復効果がある豚肉、レバー、海藻類、ウナギ、などがおすすめです。
自宅でできる!かんたんストレッチ
最後は、慢性腰痛の方におすすめのストレッチを紹介します。誰でもかんたんにできるストレッチですので、毎日の習慣として取り入れてみてください。
腰まわりのストレッチ
タオルを使用して腰回りの筋肉の動きを回復させるストレッチです。
●やり方
1.仰向けになる
2.両膝を立てる
3.固く丸めたタオルを床と背中の間(腰の上)に置く
4.両ひざを左右に何度も倒す
5.体全体を上方向にずらしていく
6.タオルの位置が少しずつ腰の方に移動するように行う
7.タオルが骨盤まできたら終了
8.1日3回程度行う
腸腰筋のストレッチ
腰痛の方が硬くなりやすい腸腰筋のストレッチです。
●やり方
1.足を前後に開く
2.うしろ側の足は膝をつく
3.前側の膝に両手を置く
4.足をさらに開いて上体を下げる
5.元に戻る
6.反対側も同様に行う
背骨周りのストレッチ
体をねじることで背中の奥深くにある筋肉にアプローチするストレッチです。
●やり方
1.壁を背にして20~30cm離れる
2.肩幅程度に足を開いて立つ
3.右足を壁と平行にする
4.左足は45度内側に向ける
5.上体を壁に向かってねじる
6.胸の高さで両手を壁につける
7.顔は左を向ける
8.壁に上体を近付けてゆっくり3~5回呼吸する
9.左右2回ずつ行う
慢性腰痛の予防法
慢性腰痛は、日常のちょっとした動作を注意することで予防できます。
物を持つ時は腰を落とす
腰を痛める時は重い物を持った時、と言いますが、床に落ちたハンカチを拾っただけでグギッとなることもあります。
物を持ったり拾ったりする時には、腰をかかめずに腰自体を落としましょう。どうしてもかがまなくてはならない時は、腰に意識を集中させてかがむと痛めにくくなります。
同じ体勢で寝ない・楽な体勢で寝る
寝る時の姿勢には、仰向け、横向き、うつ伏せがあります。どの姿勢でも同じ姿勢で寝続けると、腰の同じ部分に負担がかかり痛くなります。
寝返りをひんぱんに打つことが1番良い方法ですが、寝ている間のことなので自分ではなかなか改善できません。
寝返りをあまり打たない場合や朝起きた時に痛みを感じる場合は、寝る姿勢に工夫すると痛みが軽減されます。
仰向けの場合は膝を立てたり、膝の下にクッションを入れたりしましょう。横向きの場合は、膝にクッションを挟むと腰の負担を少なくできます。
うつ伏せは身体が反対方向に反ってしまうので、腰や背中に負担がかかります。腰痛がある場合はうつ伏せで寝るのは避けましょう。
同じ姿勢を続けない
寝る時だけでなく、起きている間も同じ姿勢を続けないことが大切です。とくにデスクワークをする人は、同じ体勢で作業を続けると腰に負担がかかり筋肉が硬くなってしまい、腰痛の原因となります。
1~2時間に1度は休憩を取り、腰を左右にひねったり、席を立って歩いたりしましょう。
猫背にならない
猫背になると頭や肩が前方に引っ張られます。そうなると、腰の筋肉や靱帯にかかる負担が大きくなるため、腰痛の原因となります。
猫背の人は、頭をまっすぐにして真上に引っ張るように常に意識すると姿勢が良くなります。
風呂は湯船につかる
毎日の入浴は、シャワーではなく湯船に湯を張ってつかりましょう。ぬるめのお湯に長くゆっくりとつかると、血行が良くなり筋肉のこわばりが取れます。
毎日続けることが大切
腰痛を予防・改善するさまざまな方法を紹介しましたが、これらの方法は実行したからと言ってたちまち腰痛がなくなるわけではありません。
腰痛を予防・改善するためには、毎日続けることが1番大切です。また、ひとつの方法だけ実行するのではなく、できるだけ多く取り入れるとより効果が発揮されやすくなります。
紹介した方法を続けても改善しない、痛みが引かない、ひどくなった、手足のしびれがある、麻痺する、失禁する、熱が出た、などの症状が出た場合は、慢性腰痛ではない可能性があります。
速やかに病院へ行き、医師の診察を受けてください。
まとめ
慢性腰痛は長時間のデスクワークや同じ作業の繰り返し、運動不足、ストレスが原因と考えられます。自分ですぐできる治し方は、腰痛に対する考え方を変える、適度な運動、ストレスを解消することです。
今回紹介したストレッチなら予防にも役立ちます。自宅でできるストレッチですので、慢性腰痛にお悩みの方は、ぜひ試してみてください。
ただし、慢性腰痛にも病気などが原因と考えられるケースがあるため、まずは医療機関を受診することが大切です。