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厚生労働省の調べによると、腰痛は日本人男性において健康上一番の悩みとなっており、女性においても二番目の悩みとなっています。

ただ、それほど多くの方が腰痛に悩まされているのにもかかわらず、検査をしてもほとんどの腰痛が原因不明とされます。なぜそのようなことが起こるのでしょうか。

腰痛の種類

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腰痛には大きく分けて、特異的腰痛と非特異的腰痛の2種類があります。それぞれについて簡単にご紹介します。

特異的腰痛とは

特異的腰痛とは簡単にいうと、検査をしたときにハッキリとした原因が分かる腰痛のことを意味します。また、危険性が高い腰痛といわれるケースもあります。

特異的腰痛としては、腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎圧迫骨折、感染性脊椎炎、脊椎腫瘍などがあげられています。

非特異的腰痛とは

非特異的腰痛とは検査をしても原因不明とされる腰痛を意味します。そして、腰痛の多くは原因不明、すなわち非特異的腰痛に分類されています。

腰痛と聞いた方の中にはぎっくり腰をイメージされる方もいらっしゃると思いますが、あれほど激しい痛みをともなうぎっくり腰であっても、そのほとんどは非特異的腰痛=原因不明とされます。

原因不明の腰痛はストレスから?

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皆さんは何らかの症状を訴えて病院へ行き、検査をしても異常がみられなかったときに「ストレスはありませんか?」と聞かれたことはないでしょうか。原因不明の腰痛もストレスと関係があるといわれますが、その根拠はどこにあるのでしょう。

腰痛は気の病?

2013年の朝日新聞朝刊に、「日本の腰痛人口は2800万人」「そのうちの8割は原因不明」という記事が載ったことを、ご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。

紙面ではさらに、急性期の腰痛には痛み止めなどを用いた投薬治療を推奨し、1ヶ月以上続く慢性的な腰痛には、向精神薬や抗不安薬を強く推奨すると書かれていました。

つまり、原因不明とされる腰痛は精神的な問題だと判断したと考えられます。2019年にガイドラインの見直しがおこなわれましたが、そこでもストレス低減法が腰痛の改善に効果的であった旨が記されています。

ストレス低減法で腰痛が緩和することは当たり前

日本整形外科学会と日本腰痛学会が策定する「腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版」によると、ストレス低減法によって、腰痛の緩和がみられたということです。

そこには、『腰痛の予防には健康的な生活習慣と穏やかでストレスが少ない生活が推奨される』と書かれています。

この説明に関してですが、腰痛の部分を「風邪」や「肥満」、「頭痛」に置き換えても意味が通じると思います。つまり、ストレス低減法で腰痛が緩和することは、ある意味、当然のことといえるのです。

ストレスと腰痛との関係

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ストレスは万病のもとといわれますが、腰痛に関して医学的にみた場合、もう少し詳しく説明することが可能です。

ストレスによって脳内物質の分泌に変化が起こる

ストレスが心身にともなってよくない存在であることはなんとなく分かりますが、腰痛に関していうと、ストレスによって脳内物質の分泌に変化が起こるため、腰痛のリスクが増すと考えられています。

脳内ではさまざまな物質が分泌されていますが、心理的なストレスが高まると、痛みを抑えるためのオピオイドなどの分泌量が減少し、腰痛のリスクを増すとされています。

ストレスによって自律神経のバランスが乱される

心理的ストレスが高まると、脳内の神経伝達物質の一種である、セロトニンの分泌量が減少することも分かっています。

脳内にはセロトニンのほかに、ドーパミン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質があり、これらを総称して3大神経伝達物質と呼んでいます。

極めて簡単に説明すると、ドーパミンとノルアドレナリンには、神経を興奮させるアクセルの役割があります。一方、セロトニンにはドーパミンとノルアドレナリンを暴走させないための、ブレーキとしての役割があります。

ところが、ストレスによってセロトニンの分泌量が減少すると、ドーパミンとノルアドレナリンが暴走状態になり、神経の興奮状態が続くこととなります。

神経の興奮状態が続くことで自律神経のバランスが乱され、身体を休める時間になっても神経が落ち着かず、身体の回復力が低下します。その結果、腰痛のリスクを増すというわけなのです。

過度な不安は腰痛につながる

腰痛を経験してしまうと「またなるのでは…?」と不安になることもあるでしょう。このような不安な気持ちは「恐怖回避思考(行動)」につながり、腰痛を長期化・重症化させるおそれがあります。

「恐怖回避思考」とは不安な気持ちから腰を過剰に守ろうとして、必要以上に腰を動かさなくなる考え方のことです。

欧米の研究によると、痛みに対する「恐怖回避思考」は回復具合に悪影響を与えることがわかっています。

また、腰を過剰に守って体を動かす機会が減少すれば筋肉の柔軟性は損なわれます。すると腰痛が治りにくくなるだけでなく、再発しやすい状況を作り出してしまうのです。

そのため、過度な不安は腰痛につながりやすいといえます。

腰痛を遠ざける!4つのストレス対策

仕事にストレスはつきものです。また、仕事以外でも日常生活でストレスがかかることはたくさんあります。過度なストレスは腰痛につながる可能性があるため、4つの対策を紹介します。

適度な運動

ウォーキングやランニングなどの有酸素運動には、ストレスを緩和する効果があるといわれています。天気のいい日に外で運動すれば、リラックス効果も得られるでしょう。

運動する際は、軽く汗ばんで「気持ちよかった!」と感じるくらいが良いといわれています。時間の目安は20分程度です。

一度に長時間運動するよりも、定期的に継続することを意識してください。いきなり長時間運動すると、疲れ過ぎて次の日に影響が出る可能性があるためです。

また、運動は腰痛改善や予防にも効果があるといわれています。

運動は最初から無理をせず、こまめに時間を作って継続することが大切です。

認知行動療法

認知行動療法はストレスを軽減するための精神医学療法です。慢性腰痛の治療にも有用といわれています。

認知行動療法は「物事をよりストレスなく、バランス良く考えるための方法を身に付ける」ことが目的です。簡単にいえば「考え方を変える」ということです。

たとえば「腰が痛くて家事ができなかった」と考えれば、ストレスはさらにたまるでしょう。しかし「腰が痛くて掃除はできなかったけれど料理はできた」と考えれば、プラスの面が見えてきます。

物事すべてを悲観的に捉えればストレスはたまるばかりです。しかし、考え方を工夫すればストレスの悪循環を断ち切れます。

快適な睡眠

睡眠不足はストレスの原因になるため、日頃から睡眠に対する意識を高く持つことが大切です。

快適な睡眠のためには、規則正しい生活を送り体内時計を整えることが必要です。とくに夜の光には注意しましょう。

夜の光は体内時計をうしろにずらしてしまうため、快適な睡眠の妨げになります。家庭にある照度100~200ルクスの照明でさえ長時間浴びると体内時計は遅れてしまいます。

そのため、寝る直前までスマートフォンやパソコンを操作する、またはテレビを見るといった行動は控えましょう。

快適な睡眠のためには、明るすぎない光(照度30ルクス以下)でリラックスすることが良いといわれています。

友人に相談する

親しい友人・知人と話したり、悩み事を相談したりすることもストレス対策には有効です。

悩みがある場合、ひとりで悶々としていても良い解決策が浮かぶことは少ないでしょう。ひとりで悩み続けると、より悪い方向に考えてしまってストレスが多くなる可能性さえあります。

しかし人に悩みを話せば考えを整理しやすくなって、解決策が見つかりやすくなります。また、友人から良いアドバイスをもらえることもあるでしょう。

そのため適度に友人・知人と話すことはストレス対策に有効といえます。

ストレス解消の注意点

ストレス解消といっても、方法によっては良くないものもあります。またストレスが大きすぎる場合は、心や体にサインが出ているかもしれません。

最後はストレスを解消する際の注意点を紹介します。

飲酒や喫煙でのストレス解消はNG

適度な飲酒はストレス解消やリラックスにつながりますが、過度のアルコール摂取は体に悪影響を及ぼします。とくに寝酒は良くありません。アルコールは寝付きを良くしますが、早朝に目が覚めることを多くします。

このような状態が続けば睡眠の質を低下させて、ストレスの原因になる睡眠不足を引き起こします。

タバコは一見ストレス解消に役立っているように見えるかもしれません。しかし、タバコには覚醒作用のあるニコチンなどが含まれているため、快適な睡眠の妨げになります。そのため就寝前の喫煙は避けたほうが無難です。

それにタバコを止めるとストレスが増えると考えるのは間違いです。バーミンガム大学の研究では、禁煙はメンタルヘルス改善に効果的であることが報告されています。

過度の飲酒や喫煙はストレス解消にはつながらないため、控えたほうが良いでしょう。

腰痛が原因不明とされる理由

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日本人の多くが腰痛に悩まされているのに、なぜ、そのほとんどは原因不明とされてしまうのでしょうか。

筋肉の緊張をみていない

整形外科など腰痛を専門としている診療科では、基本的にレントゲンやMRIといった画像診断をおこない、その結果をもとに治療が進められます。

ただ、原因が分からなければ治療法を決定することもできません。そのため、対症療法的にシップや痛み止めが出されるわけです。

画像診断では主に骨や神経の異常を確認しますが、ほとんどの腰痛において骨や神経の異常はみられません。そのため、多くの腰痛が原因不明とされるのです。

ただ、現実に痛みや機能障害が出ている以上、どこかに必ず原因があるはずです。その原因として考えられるのが筋肉の緊張です。

私たちが一般的に筋肉ととらえているものは骨格筋です。骨格筋はその名の通り、骨格を支えたり、関節を動かしたりするときに用いられます。

ところが、何らかの理由によって筋肉が緊張して硬くなると、関節の動きが悪くなり、その結果、腰痛の発症リスクを増すというわけなのです。

筋膜の緊張をみていない

筋膜というと、筋肉を覆う膜をイメージされるかもしれません。確かに筋膜は筋肉を覆う膜なのですが、それ以外にも骨や神経、血管、内臓などを覆っています。

全身をボディスーツのようにすっぽりと覆う筋膜は「第二の骨格」と呼ばれることもあり、最近になって注目を集めるようになっています。

例えば、シャツの裾を下に引っ張ると、背中や肩の部分も引っ張られると思います。つまり、背中のこりや肩のこりが、腰や臀部(お尻)に起因していることも考えられるというわけです。

腰痛の改善や予防になぜヨガやストレッチ、ピラティスなどが有効とされるかというと、腰痛の原因となっている筋膜を緩めることができるからなのです。

腰痛がある場合の対処法

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腰痛の中には、残念ながら手術を必要とするものもあります。反対に、自分で努力をしたり、施術を受けたりして改善が可能な腰痛もあります。その簡単な見分け方をご紹介します。

病院でみてもらうべきケース

腰痛にともなって、明らかに日常生活に支障を来すような場合、なるべく早めに病院でみてもらうことが重要です。

例えば腰椎椎間板ヘルニアには、馬尾型のヘルニアといって、歩行障害や排便障害、排尿障害などをともなうものがあります。このような症状が出ている場合、最悪の場合は手術が必要となります。

一方、腰椎椎間板ヘルニアの中でも神経根型のヘルニアは比較的症状が軽く、自然と治ってしまうケースも少なくありません。

自分で改善が可能なケース

腰痛が自分で改善できるかどうか、簡単にチェックする方法が、湯船に浸かってみることです。湯船に浸かったときに腰痛が楽になるようであれば、その腰痛は自分で改善が可能です。もちろん、整骨院や整体院などで施術を受けるという手もあります。

まとめ

かつては腰痛のほとんどが原因不明とされていましたが、腰痛を専門的に扱う医師の増加などにともない、骨や神経以外に腰痛の原因があることも分かってきました。

これまで原因不明とされてきた腰痛の多くが、筋肉や筋膜の緊張によって起こると考えられるようになってきているのもそのためです。

日常生活に支障を来すような腰痛は速やかに病院でみてもらうべきですが、それ以外の腰痛に関しては、適切な対処をすることで改善が期待できます。

「病院で原因不明といわれたから」「腰痛は付き合っていくしかない」とあきらめず、腰痛の本当の原因と向き合い、自分にあった方法で改善していくことが重要です。

<参考文献>

非特異的腰痛とは・22世紀医療センター

腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版・日本整形外科学会、日本腰痛学会

国民生活の基礎調査・厚生労働省

著者情報

腰痛メディア編集部
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