MENU
メニュー

Fascia(ファシア)は、一般財団法人の日本超音波鍼灸協会によると、国際的にも定義は議論中とのことです。さまざまな説の大まかな部分は、共通していますが、細かい部分は意見が異なっています。

近年の研究で、このFascia(ファシア)こそが体を滑らかに動かすうえで重要な役割を果たしていることがわかってきました。今回は、その中でも有力な説に基づいて紹介していきます。

Fascia(ファシア)とは?

Fascia(ファシア)とは、日本解剖学会の解剖学用語改訂13版には、「筋膜を超えたもの」と説明されています。整形外科学会の整形外科学用語集第8版には、「筋膜、あるいは腱膜」と説明させています。(参考;日本整形外科学会(2016)『整形外科学用語集(第8版』南江堂)

身体の全ての神経・筋肉・血管・臓器・骨・腱を覆って、それらを繋げて包む結合組織のことをいいます。身体の中にある、あらゆる組織を繋げているものです。

身体の中に何百または何千も存在していて、身体の複雑な三次元のネットワークを形成しています。

分かりにくいと思いますので、例えてみると鶏肉・豚肉・牛肉などの食用肉を保存する際に、旨味を出来るだけ閉じ込めるためにラップを用いて真空包装すると思います。身体も同じことで、ラップの代わりにFascia(ファシア)を用いて臓器や筋肉、血管などの組織を真空包装しています。

それだけ身体の大部分に関与している組織でありながら、現代医学によってFascia(ファシア)は長い間軽視されてきました。使い捨ての“梱包材”の組織にすぎず、解剖切開の時での除去されるだけの存在でした。

しかし、近年はFascia(ファシア)の重要性を評価する声が高まり、1970年から2010年の間で、学術誌でのFascia(ファシア)に関する論文の年間掲載数は約5倍に増加しました。一般メディアでもFascia(ファシア)は「筋膜」と訳されて注目を浴びています。

Fascia(ファシア)の主成分はコラーゲン!?

そんな現代医学でも見落とされてきたFascia(ファシア)の主成分は、コラーゲンです。コラーゲンは身体中で最も多い“タンパク質”です。

タンパク質は、人体の細胞を構成する主要な成分であり、生体乾燥重量の約50%を占めています。筋肉・臓器・皮膚・毛髪などの体構成成分、ホルモン・酵素・抗体などの体調節機能成分であり、生命の維持に欠くことができないものです。

コラーゲンは、人体のたんぱく質全体の約30%を占め、タンパク質の中で最も多くて硬いタンパク質です。多くは膠原線維(こうげんせんい)というゼラチンが固めて織り合わせた組織で構成されています。骨組織や軟骨組織、筋膜、骨膜、靭帯、関節包、皮膚(真皮)などの主成分となる丈夫な組織です。

例えると、魚の煮物の煮こごりは、コラーゲンが皮・骨・骨膜・靭帯などから煮汁に溶け出して固まったものです。また、コラーゲンを熱湯で処理したものがゼラチンです。

コラーゲンは、皮膚(真皮)や骨組織(骨の弾力性を作る有機質)の主成分であることから、皮膚のシワを防いだり、骨折を防いだり、皮膚や骨を再合成する栄養素になったりしています。そのため、美容や健康の面でも注目されています。

しかし、コラーゲンは体内では溶けない微細な線維を構成し、一見、活動的でないことから特徴の分析が困難でした。1960年代から分子構造・化学的性質・種類・合成過程などが少しずつ分かってきたのです。コラーゲンは、化学的には細胞や組織への海水や酸素の侵襲を防いで、身体を守っています。

また全身的には、細胞と組織を支持し、ダイナミックな身体の運動の大きなエネルギーに耐えて、そのエネルギーを外部に伝えるという機能を持っていることが分かりました。

これは「身体の運動能力の基盤」になり、コラーゲンが伸長性を失い機能が低下してしまうと、身体のあらゆる部分に痛みや機能障害が起きてしまうのです。

参考:eヘルスネット(健康用語辞典)|厚生労働省

Fascia(ファシア)による痛みやしびれ「筋筋膜性疼痛症候群(MPS)」

筋筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome)とは、Fascia(ファシア)の中にある、特に筋肉を包んでいる筋膜の異常から起こる疾患です。何らかの原因で微細損傷が起こり、炎症が生じると、Fascia(ファシア)周囲のコラーゲンなどの物質が増加し、固くなります。その結果、筋膜間の滑走性が低下し、運動機能の低下を招きます。

主に痛み・しびれなどの症状が起こり、筋痛症とも呼ばれます。

通常、急激に重たいものを持ち上げたり、無理な姿勢で作業をしたりして繰り返し筋肉に負荷をかけると、筋肉に僅かな損傷が生じます。それにより痛みが発生し、いわゆる筋肉痛となります。この痛みは数日から数週間で軽減していき、自己回復します。

しかし、筋筋膜性疼痛症候群では、一般的な筋肉痛とは異なり、痛みやシビレの強さがとても激しくなります。更に痛みやシビレの範囲が広範囲に発生していきます。これはFascia(ファシア)が全身に分布しているためです。

筋筋膜性疼痛症候群が発生する原因として、普段の不良姿勢や無理な姿勢の繰り返しにより、筋膜が厚くなったり滑りが悪くなったりして起こります。これらは長い間、原因不明の痛みとしてレントゲンでも発見出来ませんでした。しかし、エコー(超音波観察装置)の発達により痛みの原因が分かってきたのです。

筋筋膜性疼痛症候群の治療は、厚くなったり滑りが悪くなっている筋膜を剥がすために、エコーで観察しながら注射針を筋膜の部分に刺して生理食塩水を注入します。それにより筋膜を剥がすことができます。これを“筋膜リリース”といいます。

参考:金岡恒治(2016年3月)『腰痛の病態別運動療法』文光堂

筋膜リリースによる腰痛・肩こり対策

では、筋膜性疼痛症候群になる前の対策やなってしまった後の対策は、どうしたらいいのでしょうか?
対策としては、なる前もなった後も方法は同じです。

厚くなったり滑りが悪くなっている筋膜を、リリース(剥がす)していく方法を紹介します。

不良姿勢や無理な姿勢をしない

筋膜が厚くなったり滑りが悪くなる最大の原因は、不良姿勢や無理な姿勢によるものです。

良い姿勢とは、前から見ると左右対称で、横から見ると頭部はまっすぐで背骨のラインが綺麗なS字型になっている姿勢です。背中が曲がっているから姿勢が悪いとは限りません。

人間の背骨は正常でも生理的に前後に曲がっています。首は前に曲がり、背中は後ろに曲がり、腰は前に曲がっています。これらのカーブが強くなったり逆の方向にカーブしたりしてしまうと不良姿勢になります。また、前から見ると背骨はまっすぐですので、左右に傾いてしまうと不良姿勢です。

さらに腰の背骨のカーブが異常を起こすと、土台となっている骨盤の位置まで異常が広がっていきます。例えば、腰の背骨のカーブが強くなると、骨盤は後ろに傾き、骨盤は上を向きます。そうなると膝(ひざ)は曲がってしまい、足にまで負担が掛かるようになります。不良姿勢の悪循環になってしまいますので、まず背骨の不良姿勢を改善する必要があります。

適度な運動を行おう

筋膜の滑りが悪くなってしまう原因の1つに、運動不足が考えられます。常日頃から筋肉を動かしていると、筋肉を包んでいる筋膜も動き滑ってくれます。“適度な”というところがポイントです。その人に対して、負担が掛かり過ぎる負荷は、逆効果です。

例えば、普段から運動をしていて、毎日10000歩のウォーキングをしている人が、30分のランニングに変えるのであれば問題ないでしょう。しかし、何もしていない人が、いきなり毎日10000歩ウォーキングしようとしても、それは負担が大き過ぎるため逆に痛みが引き起こされてしまいます。

また、無理な運動の負担は、継続する事も困難になりやすいので、あまりオススメ出来ません。

自分に合った運動をして、効果的に筋膜の血流を良くしていきましょう。

身体をリラックスした状態にしよう

身体が緊張したり興奮状態になったりすると、交感神経が優位になります。そして、心臓の心拍数が上昇し、血管が収縮することにより血圧が上昇します。このような状態が続いてしまうと、筋肉と包んでいる筋膜も緊張し、動きが悪くなります。

もちろん運動時は、興奮状態でなければ身体が動いてくれません。しかし、運動時以外の日常生活でも、興奮状態で有り続けると、ストレスにより身体は疲弊します。ストレスによって身体に現れる症状はさまざまですが、その1つに筋肉の虚血状態があります。虚血とは、血管の収縮により血行が悪くなった状態です。筋肉の血行が悪くなり、動きが悪くなったり柔軟性が低下したりします。

まずは身体をリラックス状態にしていくために、規則正しい生活を心掛け、早寝早起きを行いましょう。特に寝る前は、むやみな食事は避け、ブルーライトが出る液晶画面を見るのは控えましょう。寝る前にゆったりした音楽を聞いたり、ホットミルクなどの消化が良くて身体を温めるような飲み物を飲むと効果的です。

筋膜リリースによるストレッチ

肩こりに対するストレッチ

左右行いますが、今回は右側をリリースする方法をお教えします。
① イスに座って、首を左側に回して、左手を右肩に置いて下側に押さえておきます。
② 右手は指先までしっかりと伸ばした状態で、体幹と腕が30°ぐらいになるように横に上げていきます。
③ その状態から、首は鼻と左肩を付けるようなイメージで倒していき、右手は遠くの物を取るようなイメージで伸ばしていきます。
④ だいだい1回で20〜30秒ほどリリースしましょう。これを左右1回を1セットとして3セット目安に行いましょう。
下側に押さえている右肩が上がってしまったり、身体が左側に倒れてしまったりすると効果が半減してしまいますので、注意して下さい。

腰痛に対するストレッチ

① 腰の高さぐらいのテーブルの前に立ちます。
② 肘を伸ばした状態で、手のひらをテーブルに置きます。
③ 足は肩幅ぐらいに開いて、膝(ひざ)は伸ばしておきます。
④ 身体を前に傾けて、両手に体重をしっかりと乗せて身体を支えます。
⑤ その状態から、テーブルに置いている手を滑らせながら腰をL字に曲げていきます。首は曲げずに顔はテーブルと平行に保って置いて下さい。
⑥ そして伸ばしている腕の方向に上半身をリリースしていきます。
⑦ だいたい1回30秒を目安に3セット行いましょう。

首を曲げてアゴが上がってしまったり、腰が丸くなってしまったり、お尻が前や後ろに出てしまったりしてしまうと効果が半減してしまいます。

まとめ

Fascia(ファシア)について紹介してきましたが、まだ解明されていないこともあります。しかし、Fascia(ファシア)は人体にとって重要な組織であり、これに異常が起こると、さまざまな痛みを引き起こすのは確かです。
今回紹介した筋膜リリースによるストレッチ等で、対策していきましょう。

ファシアと筋膜の違いと、筋膜に痛みが発生するイメージ

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

痛みや体の不調で悩むあなたへ、役立つ情報をお届け。

自分の体の状況(病態)を正しく理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目的です。

記事のご意見・ご感想お待ちしております。

この著者の他の記事を見る
wholebodyeducator