腰痛は遭遇する頻度の高い疾患で、先進国においては、国民の約70%が生涯に一度は経験すると報告されています。もちろん、日本も例外ではありません。
「厚生労働省の平成22年国民生活基礎調査」をみると、男性における有訴者率は腰痛が圧倒的1位を誇ります。女性においても、肩こりについでの2位と高い頻度なのです。
まさに「国民病」ともいえる腰痛ですが、その原因は特的できないことも多々あります。腰椎圧迫骨折や椎間板ヘルニアなどの病名がつかない腰痛は「非特異的腰痛」と呼ばれ、全腰痛の約85%を占めることが分かっています。
病気が特定できれば明確な治療ビジョンを描けますが、非特異的腰痛には標準的な治療が定まっていないのが現状です。
「腰痛は温めると良くなる」「痛くても運動したほうが良い」など、さまざまな情報が散見されますが、「腰痛に対する筋トレの効果」はどうなのでしょうか。腰痛にお悩み方も気になるところだと思います。
そこで今回の記事では、「腰痛と筋トレ(=運動療法)の関係」について医学的観点からお伝えしたいと思います。「医学的」とはいっても、誰でも理解できるような易しい言葉で説明しているのでご安心ください。
記事の中では、医学的に正しい具体的な筋トレ法についても触れています。器具は不要で、今日から実践できる内容なので是非お試し下さい。
目次
腰痛に対する筋トレの意義
具体的な筋トレ法をご紹介する前に、腰痛に筋トレが効果的な理由を2つのポイントからお伝えします。理由が分かれば、トレーニングにも身が入ると思いますので、基礎知識として知っておくと良いでしょう。
痛みの軽減に期待できる
筋トレの最大の効果は、筋力を強化できることです。筋肉量が増えれば腰部を支持する力も増し、腰椎の安定化に寄与します。腰椎が不安定の場合、腰椎周囲の神経が刺激されて痛みが増悪することが分かっています。
そのため、筋トレによって骨盤周囲の筋力増加を図り、安定した腰回りを手に入れれば腰痛が緩和するかもしれません。また、腰痛が改善したあとも歪みが矯正されることで、根本的に腰痛を防ぐ効果にも期待できます。
血流の改善に期待できる
筋肉は血流が豊富な組織です。筋トレで筋量が増えれば、血流の改善が期待できます。血液内には酸素や栄養素が含まれるため、血流の悪化は痛みを引き起こす原因になります。保温が効果的なのも、同様の理由といえます。
医学的に正しい筋トレ「Williamsの体操」
「腰痛 筋トレ」でWeb検索すると色々な筋トレ法が出てくるため、どの方法を試すか迷ってしまいますよね。ここでは、「医学的に正しい」腰痛の筋トレ(運動療法)として「
Williamsの体操」をご紹介します。
Williamの体操は、腰痛に対する運動療法の基本で、4種類の体操から成ります。いずれも腰椎の屈曲が運動の中心で、順に説明いたします。
1.立った状態でお腹をへこませます。体重を足の親指にかけてつま先立ちになり、約5秒その姿勢を維持し、ゆっくりと元に戻ります。1日に5回、朝晩行ってください。
2.仰向けに眠った状態になります。両足のつま先を伸ばす・上げるを20回行う。つま先をピンと伸ばしている時、思いっきり足を真っすぐに伸ばし、太ももに5秒間入れます。つま先を上げているときは、ふくらはぎとアキレス腱を伸ばすようにしつつ、5秒間力を入れてください。
3.仰向けで眠った状態になります。息を吐きながら、へそを縮め、腰(背中の少し上)を底に押しけます。上半身は床に付けた状態で、お尻を少し浮かします。これを1日に10回程行ってください。
4.仰向けになって、両足を抱えたような状態になります(仰向けで体育座りをしている感じ)。この時、膝がわきの下に来るようにします。足を下ろし、また同じように上げるというのを20回繰り返してください。
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まとめ;腰痛は筋トレで改善ができる。「Williamsの体操」は医学的に正しい筋トレ
今回の記事では、腰痛に対する筋トレの効果と、医学的に正しい筋トレ法「Williamsの体操」についてお伝えしました。
腰背部や骨盤周囲の筋肉を鍛えることで、腰椎の支持が安定します。加えて、筋肉の血液循環も改善するため、あわせて痛みの軽減に期待できます。少しでも痛みが軽減すれば活動範囲が拡大し、さらなる筋肉量のアップにつながります。すなわち、腰痛改善の好循環が生まれるのです。
腰痛に効果的な筋トレはさまざまですが、医学的観点からおすすめされる方法は「Williamsの体操」です。6種類のトレーニングは、いずれも身体一つあれば実践できる類のものです。また、腰痛に対する運動療法としては基本に位置するトレーニングなので、だれでも簡単に取り組めるでしょう。腰痛にお悩みの方は、是非一度お試しください。
【参考文献】
白土 修「慢性腰痛症に対する運動療法の効果」 臨床整形外科 41巻7号