MENU
メニュー

腰痛にならないためには、腹横筋を含めた体幹のインナーマッスルを鍛えることが重要だと聞いたことがある人は多いと思います。

見た目では、腹直筋と呼ばれるものがお腹の形を見せていますので、いわゆるシックスパッドと呼ばれるものです。しかし、腹直筋はインナーマッスルではなく、体幹の安定性に対する関与は乏しいです。腹横筋はお腹の深部にあります。

腹斜筋や腹横筋が腹部のインナーマッスルにあたります。腹横筋は、体幹のコルセットと呼ばれることもあり、腹横筋が弱いと腰に負担がかかりやすく、腰痛になりやすいと言われています。

今回は、腰のインナーマッスルの1つである腹横筋に着目しながら、腰痛を引き起こさないために必要な情報をお伝えしたいと思います。

体幹の安定性を向上させるために

少し難しい話をしますが、脊柱の安定性に関与するものとして、骨、関節、靭帯のような筋肉によって動かされるものと、脳による安定性の制御、筋によるものの3つのパターンが存在しています。

1つ目の骨、関節、靭帯による安定性の関与は、骨に変形がある場合や、関節が不安定な状態や、靭帯が緩い場合には、腰の安定性は得られにくいのは想像しやすいと思います。

2つ目の脳による体幹の安定性というのは、脳と身体の神経伝達によって、身体の位置関係や筋肉の状態をコントロールすることによって、体幹の安定性は関与しています。

3つ目の筋肉による体幹の安定性というのは、当然筋肉がないと骨や関節は安定して動かすことができません。人が安定して立っていられるのは、筋肉が関節を固定して安定させることで、まっすぐに立つことができるのです。

この3つの安定させる機能によって、腰は機能的に動かすことができますし、スポーツなどの激しい動作を可能としています。

では、腰を安定して動かすために、筋の活動について詳しく述べていきます。

体幹の筋肉の働きについて

脊椎の安定性を得るためには、関節を動かしている筋肉の働きで制御する必要性があります。

体幹の筋肉は、深部で腰椎と直接つながりがある、腹横筋や外・内腹斜筋と呼ばれる腹筋と多裂筋と呼ばれる背筋のインナーマッスルがあります。

その他には、腹直筋は腹部のアウターマッスルですし、脊柱起立筋や腰方形筋は、背筋のアウターマッスルです。

体幹のインナーマッスルは、腰椎に直接つながりがありますから、細かな運動を制御することが可能です。

反対にアウターマッスルは身体の表面にある筋肉なので、腰や脊柱を大きく動かし、運動方向をコントロールする役割になります。
体幹のアウターマッスルは大きいので、胸の肋骨から骨盤にかけて、幅広く運動方向をコントロールしています。

これらの筋肉が適切に働くことによって、体幹は強固に安定性を得ることができますし、上半身と下半身の力を連動し、協調的に手足を動かすことができるのです。

筋肉というのは、姿勢を保つにも、動作を行うにも単独で1つだけの筋肉を働かせることは難しいです。

例えば、体幹の外腹斜筋と呼ばれる筋肉が働くときには、腹横筋や反対の足にある内側の筋肉が連動して働くことによって、股関節、骨盤、股関節を協調的に動かすことや、安定させることができます。

ですから、体幹のインナーマッスルである腹横筋や、腹斜筋が低下すると、足の力をうまく上半身に伝えることができず、腰の関節に負担をかける要因となってしまいます。

必要以上に骨盤や腰に動きが出てしまうのは、体幹の筋力や骨盤周囲の筋力が低下し、関節の動きをコントロールしきれていない、制御して安定させることができていないと言えるのです。

もう一つ、身体全体は筋膜と呼ばれる組織で連結しています。筋膜は、ウェットスーツのように身体全体を包んでおり、身体が協調的に動くことができるのを助ける作用があります。

体幹でいうと、胸腰筋膜というものがあります。この胸腰筋膜が、お尻の筋肉とも連結を持っていることで、背中の筋肉が働くときには、お尻の筋肉も共同で働きやすくなります。

少し難しい内容でしたが、体幹のインナーマッスルは身体を協調的に動かすことや、腰が過剰に動きすぎないように安定させるのに重要だと理解いただければと思います。

それでは、体幹のインナーマッスルである、腹横筋や腹斜筋はどういった動作で働くのか述べていきます。

腹横筋の機能、役割とは

まず内蔵を取り巻くように、腹部の一番深くで働いているのが、腹横筋です。

腹横筋は、肋骨の下部から骨盤にかけて、腰からお腹を取り巻くように存在しています。

そのため、腹横筋は、「内臓のコルセット」といった呼ばれ方を何度か耳にしたことがあります。

腹横筋の機能として重要なのが、お腹を背骨の方向に引っ込めるときに作用するということです。
つまり、腹式呼吸でお腹を膨らませたり縮めたりするときには、必ず腹横筋が作用しています。

腹横筋は内臓や体幹を安定させるコルセットの役割を果たしますので、姿勢を保つときにも、激しい動作をするときにも基本的に働きます。

しかし、腹横筋に機能が低下している人は多いのが現状です。その原因は普段の姿勢の悪さや、背中を丸めて姿勢の人が多いためです。
背中を丸めたような姿勢を普段からとっていると、腹横筋は常時緩んだ状態になるので、正常に働くことができません。

普段から正しい姿勢を取ることでも腹横筋は働きますから、姿勢を気をつけて日常を過ごすだけでも、腹横筋は働きます。

腹斜筋の機能、役割とは

次に腹斜筋の働きに関して説明します。
まず腹斜筋は内腹斜筋と、外腹斜筋の2種類があります。

内腹斜筋は、骨盤と肋骨の外側についていますが、腰の筋膜にも付着しています。
内腹斜筋は、腰を丸めながらお腹を引っ込めるときに働きます。
また、内腹斜筋は、左に腰を捻ったときに、左の内腹斜筋が働きます。
同じように右の方を前に出すように、捻ったときに左の内腹斜筋が働いています。

外腹斜筋は、肋骨の外側から、お腹にかけてついています。
お腹の筋肉の位置関係としては、一番表層にある腹直筋の下に位置します。

外腹斜筋が働くためには、お腹を凹ませながら背中を丸める必要があります。
また、右の外腹斜筋が働くのは、右肩を前に出すように屈めたときに働きます。
すなわち左方向に身体を捻ったときには、右の腹斜筋が働いています。

腹部の筋肉を身体の深部から順番に並べますと、腹横筋、その上に内腹斜筋、その上に外腹斜筋、一番表層に腹直筋という順番になります。

背部のインナーマッスルである多裂筋の機能、役割とは

腹部のインナーマッスルである腹横筋や腹斜筋の機能が分かったところで、背部のインナーマッスルである多裂筋についても知って起きましょう。

多裂筋は、腰や背中の一番深くで作用し、一番深層の多裂筋は、脊椎同士を細かくつなぐように存在しています。

表層の多裂筋は腰全体から骨盤をつなぐように存在しています。

多裂筋の働きは、腰を反るときに、左右両方の多裂筋が働きます。
左側に腰を捻るときには、左側の多裂筋が働きます。
多裂筋が、腰椎に直接くっついているので、腰の関節である椎間関節を安定させるために重要な筋肉となっています。

腹部のインナーマッスルである腹横筋や腹斜筋とうまく強調して多裂筋が働くことによって、腰や背中は安定して働くことができますし、過剰に動き過ぎて腰痛になるのを防いでくれます。

腰痛予防になる体幹の安定性を向上させるトレーニング

ドローイン

まず、1つ目にドローインといった方法です。
この方法はリハビリにも多くの機会で使われており、身体に負担をかけずに行えるので、年配の方や、腰部痛があるときに最適です。

やり方を説明します。仰向けの状態で膝を立てて寝ます。大きく呼吸して、息を吐きながら腹部を背中の方に凹ませていきます。
その凹ませたお腹をキープしながら腹部で浅く呼吸を繰り返します。
始めは凹ませたお腹を保ちながら呼吸することに苦しさを感じると思いますが、それが腹横筋を使っているということです。

腹横筋を働かせるトレーニングですので、ドローインを行っているときに、頭を持ち上げてしまうと、腹斜筋や腹直筋も働いてしまうので、呼吸をしながらお腹を凹ませることに集中しましょう。

なれてきたら、仰向けでドローインを行いながら、片足を伸ばして上下に動かしてみましょう。
これでかなり難易度が上がったように感じる方も多いと思います。

足を伸ばしたまま股関節を上下に動かすのは、非常に重たく感じますし、ドローインの状態では呼吸が浅くなるためです。

この運動の意義としては、常に動作の中でインナーマッスルである腹横筋が働くことを想定しています。
始めは5回を休みながらでも構いませんので、自分のペースで無理なく継続していくことが大切です。

ドローインは立っているとき、姿勢良く座っているときでも行うことができます。
例えば満員電車の中やデスクワーク中でも行うことが可能です。
やり方は仰向けで行うときと同じで、息を吐きながらお腹を凹ませて保持し、その状態で浅い呼吸を繰り返すことです。

仰向けのときよりやや難易度は高いですので、立っているときも座っているときも姿勢を正して行うことが大切です。
日常で無意識に腹部に力が入っているくらい何度も練習するといいですね。

ブリッジトレーニング

ドローインは、腹横筋に特化した筋力向上運動でしたが、ブリッジトレーニングはインナーマッスルである腹横筋、腹斜筋だけでなく、アウターマッスルの腹直筋も働きます。

あらゆる動作や姿勢保持の中では、様々な筋肉が共同で働くことが重要ですので、このブリッジトレーニングも大切です。
ブリッジトレーニングは、リハビリでも多く取り入れられています。

ブリッジトレーニングは大きく4つに分けられています。「肘とつま先での姿勢」、「手と膝での姿勢」、「バックブリッジ」、「サイドブリッジ」の4つがあり、どれも体幹トレーニングとしては基本的なものですので、積極的にこなしていくといいでしょう。

肘とつま先での姿勢

まずうつ伏せから肘をついた姿勢を取ります。つま先を立てて、お腹を持ち上げ、肩からつま先までが一直線になるように姿勢を保ちます。

このときにお腹が下がる状態や、お尻が上がり、くの字にならないように注意します。
腹部には、常時力が入っている状態ですが、呼吸を止めないように注意して保持しましょう。

始めは10秒程度を2セットでも辛さを感じる人も多いです。少しずつ回数を伸ばすことや、保持時間を長くしてトレーニングしましょう。

「肘とつま先での姿勢」では、主に腹横筋を中心とした腹筋群のトレーニングになります。

手と膝での姿勢

四つ這いの姿勢を取り、右手を前に伸ばしたら左足を後ろに真っ直ぐ伸ばした状態です。
反対に、左手を前に伸ばす場合は、右足を後ろに伸ばして姿勢を保持します。
このときに背中や腰は、まっすぐの状態を意識し、腹部に力を入れます。極端に身体が傾かないように、手足の重みをコントロールしつつ、保持する力を身につけます。

どのトレーニングでも同じですが、姿勢を保つトレーニングでは呼吸を止めがちになりますが、必ず呼吸をしながら行ってください。

「手と膝での姿勢」では、腹横筋だけでなく、腹部の筋肉と背部の筋肉を均等に使うことができます。
背中に棒を置いても落とすことがないくらい体幹が安定するといいですね。

バックブリッジ

仰向けで、膝を立てた状態から、お尻を持ち上げて膝から首の付根までが一直線になるように姿勢を保持します。

初めはこの姿勢で20秒程度を保持し2セット行うといいでしょう。
慣れてきたら、「バックブリッジ」の姿勢から片膝を伸ばして、片足で姿勢を保持するようにします。

この姿勢では、1つ難易度が上がりますので、身体がふらつく方も多いと思います。
片足では姿勢を保てない場合は無理をせず、両足をついた基本的な「バックブリッジ」で回数や保持時間を調整して行うといいでしょう。

「バックブリッジ」では、主に多裂筋を中心とした背筋群と、腹横筋などの腹筋が働きます。

サイドブリッジ

横向きで寝た状態で肘を付きます。肩は90度開いた状態です。そのまま足部の外側をついた状態で身体、骨盤を持ち上げます。床面に接しているのは、片手の前腕と足部の外側のみです。

肩が一直線になるように床面を前腕でしっかり押すことと、肩から足部までが一直線になるように、骨盤の位置を意識して保つことが大切です。

この姿勢を保った状態で10秒3セット程度から始めて見ましょう。

「サイドブリッジ」の姿勢保持が安定してきたら、その姿勢のまま、足を上に開いて保持します。
足を閉じている状態では、足の内側の筋肉が働いて保ちやすいですが、足を開くことで、下側の足のみで、支えることになるので難易度が上がります。

この姿勢では、姿勢を保つことが難しい方も多いと思います。

そういった場合は無理をせずに、「サイドブリッジ」の姿勢を取り、回数や姿勢保持時間を調整し、少しずつ運動負荷量を上げていくようにしましょう。

「サイドブリッジ」は腹横筋や腹斜筋の腹部インナーマッスルが強く働きます。

これらのような姿勢保持トレーニングは、どの筋肉で姿勢を保つことを意識するするのかで成果が変わってきます。

闇雲にバランスを崩しながら行うのではなく、腹横筋や外腹斜筋、多裂筋の収縮を感じながら姿勢を保つことで、さらに効果が増していきます。

もちろん姿勢を保つということは、体幹だけでなく、手足の筋肉を使って姿勢を保っています。

ここで重要なのが、腹部や背筋のインナーマッスルが鍛えていく中で、姿勢を保ちやすくなるのは当然ですが、手足に力が入りやすい感覚があると思います。

これが、体幹を鍛えることで手足が協調的に動かすことができるようになり、運動のパフォーマンスが上がることを実感した状態になります。

ここまで行くと、スポーツ選手であれば、体幹の運動を疎かにしてしまう人は少なくなるのではないでしょうか。

姿勢を保つような体幹のトレーニングは、地味なものが多いため、長く続けることに苦痛を感じる方も多いです。

しかし、明らかに姿勢を保つ力が上がったことを実感した瞬間や、フィジカルが強くなったと感じた瞬間、動作が俊敏になったと感じた瞬間を大切にすることで、体幹トレーニングは習慣になります。
無理のない範囲で少しずつ繰り返して行くことが大切です。

腰痛予防になる筋肉と関節の動きのバランスとは

腹横筋や腹斜筋、多裂筋などのインナーマッスルの機能の重要さは感じていただけたかと思います。
しかし、体幹の筋力だけでなく、足や手の筋力も乏しいと、必然的に股関節の支えが足りず、少なからず骨盤が動揺します。

また、体幹トレーニングだけ行って、腰の動きが乏しいと、腰の筋肉が過剰に働き過緊張による腰痛になってしまうこともあります。

ですからバランス良く行っているスポーツに合わせた筋力トレーニングと、身体の柔軟性を作っていくことが重要です。

ときには、自身の身体を見つめ直す時間を作ることや、監督や周囲の方の客観的な意見を取り入れてトレーニングすることも重要です。

今回は腹横筋を中心としたインナーマッスルのお話が中心でした。
少し難しい内容で量も多くなりましたが、少しずつ理解しながら、自身の身体を見つめる機会となれば幸いです。

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

痛みや体の不調で悩むあなたへ、役立つ情報をお届け。

自分の体の状況(病態)を正しく理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目的です。

記事のご意見・ご感想お待ちしております。

この著者の他の記事を見る
wholebodyeducator