普通に過ごしていたはずなのに、ある日突然襲いかかる腰痛。その原因はどこにあるのかご存じですか?腰痛の原因にはさまざまなものがあります。今回はさまざまな腰痛の原因を紹介するとともに、腰痛への正しい対処法を学んでいきましょう。
目次
腰痛の原因は特定できる?
腰痛の中でも原因がはっきりと特定できるものは全体の15%ほどであると言われています。残りの約85%はレントゲンなどで異常を見つけることが難しく、原因の特定が非常に難しいと言われているのです。
現代の日本において40代以上のいわゆるシニア・ミドル世代だけではなく、20代・30代においても腰痛を訴える人は増え続けています。腰に異変を感じてすぐに病院に行ける場合は良いのですが、なかなかそんな時間をとるのは難しいという方も多いのではないでしょうか。腰痛の原因が分からないまま間違った対処法を行い続けているとより悪影響を及ぼすことも。
それでは、実際に腰痛にはどのような種類のものがあるのでしょう?原因によって痛みの出かたや対処法も異なるため、詳しく説明していきます。
原因が特定できる腰痛
一言で腰痛と言っても、その原因はさまざまです。ここでは約15%と言われている原因が特定でき、場合によっては手術で治療が可能な腰痛をみていきましょう。
腰椎椎間板ヘルニア
私たちの身体を支える役割を果たしている脊椎(背骨)は24個の椎骨で形成されており、下の5個の椎骨のことを「腰椎」と言います。そして、椎骨と椎骨の間にあるのが「椎間板」という軟骨です。
本来、椎骨に加わる衝撃を分散させるクッションのような役割を果たしている椎間板。しかし、加齢や激しい運動によって椎間板の一部が変性し、外に飛び出してしまうことがあります。この状態を「腰椎椎間板ヘルニア」と呼びます。
椎間板が飛び出した状態を放置してしまうと神経などが圧迫され、強い腰痛や足の痺れを引き起こしてしまうのです。ひどい場合は足が動かせなくなってしまうことも。
対処方法としては、第一に保存療法が選択されます。基本的に安静にしながら、痛みが強い場合には鎮痛剤や注射を使用します。痛みが軽くなった後、マッサージや運動療法を行い、場合によってはコルセットを装着することもあります。
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腰部脊柱管狭窄症
背骨の中にある神経の通り道のことを脊柱管と言います。脊柱管狭窄症とは、背骨の変形や脊柱管を構成する骨や靭帯の肥厚、椎間板が突き出すことなどが原因で脊柱管が圧迫されて狭くなってしまう病気を指します。先程説明した椎間板ヘルニアが原因で脊柱菅狭窄症が起こることも。
神経が圧迫されるため、起立時や歩行時に腰痛や下半身の痺れが起こります。歩くと症状が悪化し、すこし休むと痛みが和らぐという脊柱菅狭窄症に特有の「間欠性跛行」という特徴も。また、前かがみになると症状が軽減することもあります。
基本的の治療は保存療法です。薬物療法やブロック注射で痛みを取り除いた上で、コルセットなどの装具の使用やリハビリ治療を行っていきます。その他にも、痛みで日常生活に大きな支障が出る場合は手術が必要になる場合もあります。
腰椎圧迫骨折
腰椎圧迫骨折は転倒などで腰椎に外部から大きな圧力がかかり、椎体がつぶれてしまうものです。高齢者や女性に多くみられ、我慢が出来ないほどの激しい腰痛を訴えるのが特徴です。
骨密度の低下が主な原因であると言われる圧迫骨折ですが、ホルモンなどの影響で骨密度が低下しやすい女性に多く見られます。尻もちをつくなどの外部からの圧力だけでなく日常生活におけるささいな動作も骨折の原因になると考えられています。
治療には保存療法と手術療法があります。基本的にはコルセットで腰部を固定し安静にすることにより数ヶ月ほどで症状が軽減することが多いですが、それでも痛みのコントロールが出来ない場合は「椎体形成術」と呼ばれる手術が行われます。
腰椎分離症・腰椎すべり症
腰椎の後方部分にある椎弓(ついきゅう)と呼ばれる部分が分離した状態を腰椎分離症と呼びます。ジャンプや腰をひねる動作などを繰り返すことで起こり、中学生や高校生のスポーツ選手に多く見られる腰椎分離症。疲労骨折として椎弓に亀裂が入り、さらにそれが進行すると椎体と椎弓が分離してしまうのです。
さらに椎弓の左右両側が分離してしまうと腰椎が前にずれてしまい、腰椎すべり症という状態になることもあるため注意が必要です。腰を反らした時に起こる腰痛が主な症状ですが、進行すると下肢に痛みが出ることもあります。しかし、安静時に無症状であることが多いため発症に気づかないケースもよくあります。
治療の際にはまず激しい運動を中止し、保存療法を行う必要があります。痛みが出る場合は鎮痛剤や湿布などを使用します。腰痛自体は2週間程で軽快することが多いですが、保存療法に効果が見られない場合は骨盤の移植や金具による腰椎の固定といった手術を行う場合も。
原因の特定が難しい腰痛
一般的に腰痛というと、原因の特定が難しい腰痛=非特異的腰痛であることが多いです。非特異的腰痛の治療法は手術などではなくストレッチやマッサージなどの保存療法が中心となっています。そんな非特異的腰痛にはどのようなものがあるのでしょう。
筋性腰痛
筋性腰痛は、いわば腰の周囲が筋肉痛のようになっている状態を指します。筋肉の使いすぎによって起こる腰痛で、肉体労働や長時間のデスクワークを行っている人がなりやすい腰痛です。痛みが起こる場所をピンポイントで特定できるのも特徴で、マッサージなどで痛みが軽快することがほとんどです。
もし筋性腰痛になったしまった場合は、しっかりと筋肉を休ませた上で痛みが起きている箇所をじっくりマッサージしてみてください。
椎間板性腰痛
椎間板性腰痛は「前屈腰痛」とも呼ばれており、前に屈む動作をとった時に椎間板が圧迫されることで痛みが起こります。猫背やデスクワークの方がこの腰痛になりやすく、また、背筋が弱いことも1つの原因であるとされています。この腰痛の場合は、揉みほぐしても軽快しません。
そんな椎間板性腰痛を改善するためには、即効性はありませんが毎日少しずつストレッチや背筋を鍛えるトレーニングをすることが効果的です。
椎間関節性腰痛
身体を後ろに反らした姿勢をとった時に、腰の後ろ側にある椎間関節同士がぶつかることで痛みが生じるのが椎間関節性腰痛。腹筋が弱く反り腰になっている方がなりやすく、女性に多く見られるのが特徴です。
この腰痛も揉みほぐしでは改善しませんが、腹筋を鍛えることで次第に軽快していきます。
仙腸関節性腰痛
お尻の近くにある仙骨の歪みや炎症が原因であると言われています。この腰痛を発症するほとんどの方は産後の女性。妊娠中に生じた仙骨靭帯の歪みが産後も元に戻らないことで起こることが多いようです。その他には、尻もちをつくことなどでも発症します。
この腰痛にもストレッチが効果的ですが、産後の方などは骨盤体操や整体院で骨盤矯正をしてもらうのも良いかもしれません。
自分の腰痛を知ろう
ここまでさまざまな腰痛の種類を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。腰痛を改善するための近道は、まず自身の腰痛の原因が何なのかを知るところにあります。とはいえ自身のみで腰痛の原因を探るのは難しいと思うので、迷った時や悩んだ時は整形外科病院を受診してみてもいいかもしれません。
また、腰痛は日々の姿勢改善や簡単なストレッチで軽減できる場合もあります。自分でも気が付かないうちに姿勢の悪い癖がついてしまっていたり、身体の歪みが原因で姿勢が悪くなったりしていることも。特に身体が硬い方は腰痛になりやすいとも言われているので、お風呂上がりや寝る前に少しでも良いのでストレッチや筋膜リリースをしてみるのもおすすめです。
現在多くの方が悩まされている腰痛。そんなつらい腰痛を改善するためには自分の腰痛の原因を正しく理解し、その上でそれぞれの原因に合った治療方法や正しいストレッチを選択しましょう。
参考:腰痛 日本整形外科学会