ぎっくり腰をした方の中には、くしゃみや咳を行うことで発症したという方もいらっしゃいます。では、なぜくしゃみや咳をすることが腰痛やぎっくり腰につながるのでしょう。
また、腰痛を悪化させないためには、どのようにしてくしゃみや咳を行うことが正解なのでしょうか。腰痛の本当の原因や、腰痛の改善法と併せて紹介します。
目次
くしゃみや咳を行うときに腰痛が出るのはなぜ?
くしゃみや咳を行うときに、腰痛が出たことがあるという方は少なくないのではないでしょうか。では、なぜくしゃみや咳を行うことで腰痛が出るのでしょうか。
腹圧が上がるため
腰痛を予防するためには腹筋を鍛え、腹圧を高めることが効果的とされています。腰痛の時にコルセットをすると痛みが緩和するのも、コルセットによって腹圧を高められるからだということです。
ただ、くしゃみや咳をした場合のように、一気に腹圧が高まると、腰の筋肉に負担がかかり、結果として腰痛のリスクを増してしまいます。
直立した状態でくしゃみや咳を行うため
くしゃみや咳を行う際、自然に身体が前に倒れることがあると思います。これは、くしゃみや咳による衝撃を逃すためだと考えられます。
ところが、直立した状態でくしゃみや咳を行うと、身体にかかる負荷を逃がすことができなくなります。その結果、腰痛のリスクが増すと考えられるのです。
身体を曲げることが腰痛を招くケースも
前述したように、くしゃみや咳を行うときに身体を折り曲げるのは、くしゃみや咳による衝撃から筋肉を守るためだと考えられます。
ただ、瞬間的に身体を折り曲げる姿勢こそが、腰痛を招くという考え方もあります。急に前かがみになることで椎間板に負荷がかかり、腰椎椎間板ヘルニアなどのリスクが高くなるとされています。
腰痛があるときにくしゃみや咳を行うときのポイント
腰痛があるときにくしゃみや咳を行うと、腰の痛みを増してしまう可能性があります。そのため、腰痛もちの方がくしゃみや咳を行う際には、次のことに気を付けましょう。
くしゃみや咳を行う際に踏ん張らない
くしゃみや咳を行う際に直立不動の姿勢で踏ん張ってしまうと、急激に増した腹圧がもろに腰にかかります。そのため、くしゃみをするときには上半身の力を抜くようにしましょう。
机や椅子の背もたれなどに手を付いてくしゃみや咳を行う
くしゃみや咳を行う際に、急激に上半身を折り曲げると、椎間板への負荷を増してしまいます。そのため、あらかじめ机や椅子の背もたれなどに手を付き、軽く状態を曲げておくことがおすすめです。
くしゃみや咳を行うときの腰痛を放置するリスク
日本にはたくさんの腰痛もちの方がいらっしゃいますが、くしゃみや咳を行う際にみられる腰痛を放置した場合、次のようなリスクを増す可能性があります。
ぎっくり腰になるリスク
腰は体重の何倍もの負荷に耐えられる強い場所だとされていますが、もともと腰痛をもっているところに、くしゃみや咳を行うなどして急激な負荷がかかった場合、ぎっくり腰を発症する可能性があります。
ぎっくり腰は正式には急性腰痛症と呼ばれますが、これほど多くの方がぎっくり腰を経験しているのにもかかわらず、ぎっくり腰のハッキリとした原因は分かっていません。
くしゃみや咳を行うことで筋線維を断裂したり、椎間関節(腰の骨と骨とで構成される関節)をねんざしたりすることで、激しい痛みにみまわれるのではないかと考えられています。
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腰椎椎間板ヘルニアを発症するリスク
くしゃみや咳を行うと、その衝撃で腰椎(腰の骨のこと)と腰椎の間にあるクッション部分である椎間板から髄核が飛び出し、腰椎椎間板ヘルニアを発症する可能性があります。
飛び出した髄核によって神経が圧迫されることで、腰痛だけでなく足の痛みやしびれを発することもあります。
腰椎椎間板ヘルニアは大きく分けて、神経根型と馬尾型の2種類があり、多くは神経根型とされています。
神経根型の腰椎椎間板ヘルニアの特徴は、腰痛にともなって片方の足にだけ痛みやしびれが出るということです。また、比較的軽傷例が多く、自然に症状が解消するケースも少なくありません。
馬尾型の腰椎椎間板ヘルニアは重症例で、腰痛だけでな両足に痛みやしびれが出たり、排便障害や排尿障害をともなったりします。もしそのような症状がみられる場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。
くしゃみや咳を行うことでぎっくり腰になった場合の対処法
もしくしゃみや咳を行うことでぎっくり腰になったら、どう対処すればよいのでしょう。もしもの時のために、対処法を知っておいてくださいね。
安静にする
ぎっくり腰を発症して、痛みの余り動くことも困難であるようなら、無理をせずに安静にしていましょう。横になる場合、背中を丸めて寝るとよいでしょう。
アイシングを行う
ぎっくり腰を発症してからしばらくすると、患部が熱をもってズキンズキンと痛み始めます。それは、ぎっくり腰を起こした場所に炎症がみられるからです。
その場合、アイスパックや氷嚢などを用いて患部のアイシングを行うとよいでしょう。冷やすことによって炎症の拡大を防ぎ、痛みを緩和することが期待できます。ただし、冷やすのは発症後48時間までにしましょう。
仙腸関節の可動域を広げる
ぎっくり腰を発症する方の多くに、骨盤の中央にある仙腸関節の可動域減少がみられます。そのため、ぎっくり腰を起こしたらすぐにでも、仙腸関節の可動域を確保することが重要です。やり方はとても簡単です。
1.布団やベッドにあおむけで寝る
2.両ひざを立て左右に倒してみる
3.痛みや違和感がない、もしくは少ない方に両ひざを倒す(30秒間)
4.元の状態に戻したら、反対側に倒して痛みや違和感を確認してみる
ポイントは、痛い方には倒す必要がないということです。痛みのない、もしくは少ない方へ倒すことを繰り返すうちに仙腸関節の可動域が広がり、反対側に倒したときの痛みが徐々に減少していきます。
くしゃみや咳を行うと腰痛が出る本当の原因は?
日本の腰痛人口は2800万人ともいわれていますが、検査をしてもそのほとんどが「原因不明」とか「異常なし」とされます。
それは、検査で骨や神経の異常しか確認していないからです。人間の身体には骨や神経以外にも、筋肉や筋膜、腱、靱帯といった軟部組織があります。
実は、腰痛はそれら軟部組織の緊張によってもたらされるケースが非常に多いのです。例えば、腰痛の原因とされる椎間板ヘルニアは、腰痛全体でみればわずか7%を占めるにすぎません。
また、画像診断でヘルニアの所見が合っても、実際に痛みが出ているとは限りません。そのため、腰痛がある場合には軟部組織の緊張を確認する必要があるのです。
子どもがくしゃみや咳をしてもぎっくり腰になりにくいのは、大人とは違って軟部組織の柔軟性が保たれているからです。ぎっくり腰を予防したり、再発を防止したり知るためにも、普段から軟部組織の柔軟性を高めておくことが重要です。
まとめ
くしゃみや咳を行うことで腰痛が出る場合、それは身体からの黄色信号だと思っておいた方がよいでしょう。その状態を放置するとぎっくり腰や腰椎椎間板ヘルニアなど、さらにひどい状態へと至る可能性があります。
また、慢性的に腰痛をもっている場合、腰に負担がかかりにくいくしゃみや咳の仕方を身につけることも大切です。
腰痛の多くは筋肉や筋膜といった軟部組織の緊張によって起こるため、普段からストレッチやヨガ、筋膜リリースを行うなどして、軟部組織の柔軟性を保っておくことも重要です。
<参考文献>
腹圧を高めて腰痛予防!腹圧を高める3つのメリット|小石川整骨院
コルセットの功罪|平野利栄 寿芳会芳野病院リハビリテーション部理学療法科
腰痛の2大要因「ぎっくり腰」と「椎間板ヘルニア」:予防と体操のすすめ|メディカルノート