MENU
メニュー

腰が痛いときはお風呂に入って温めると良くなるというイメージをもっている人も少なくないかと思いますが、腰痛の種類によっては腰を温めない方がいいケースもあります。温めてはいけない腰痛の場合、お風呂に入って血行が良くなると痛みが増強する場合があります。
今回はお風呂に入っていい腰痛なのか、お風呂を避けるべき腰痛なのかを判断する方法と、腰痛におすすめの入浴方法を紹介します。また、シャワーで済ませた方が良い腰痛、お風呂に入った方が良い腰痛についても解説します。

お風呂に入っていい腰痛と、お風呂を避けるべき腰痛の違い

運動後や過度の労働後になる筋肉疲労や筋肉痛による腰痛は、お風呂で温めることで痛みが改善することが多いです。これはお風呂に入り血行を改善することで、腰の筋肉に溜まった疲労物質が血液の流れによって解消されるためです。

しかし腰に対する過度のストレスで、腰がダメージを受けてしまった場合、つまり筋肉以外の関節や靭帯、骨などの組織が損傷してしまった場合の腰痛は、温めることで痛みが悪化してしまいます。これはダメージを受けた組織の炎症症状が、温められることによって悪化してしまうためです。

お風呂に入っていい腰痛と、お風呂を避けるべき腰痛を判断する方法

お風呂OKな腰痛 お風呂NGな腰痛

お風呂に入っていい腰痛と、お風呂を避けるべき腰痛を判断する場合、腰痛になってしまった原因を探り、現在の腰痛の状態をみてみましょう。

腰痛になってしまった原因

まず腰痛の原因が明確かそうでないか考えてみましょう。久しぶりに運動をした、またはいつもより活動量が多かったなど、普段しない運動や活動で腰痛がゆっくりと現れた場合、筋肉が原因の腰痛の可能性が高いです。筋肉が原因の腰痛の場合は、入浴にて腰痛が改善する可能性があります。

また、重たい荷物を持ち上げたときに急に腰が痛くなった場合や、咳やくしゃみをしたら急に腰痛になったなど、何かしらのアクションの後に急に腰痛が起こった場合、腰痛の原因は関節や靭帯、骨などの組織にダメージを受けてしまった可能性があります。この場合、炎症が起こっていることが考えられるので入浴は避けるべきです。

現在の腰痛の症状

腰痛が重だるいような鈍痛の場合、筋肉疲労による腰痛の可能性が高いです。それに対して、姿勢や動作によってキヤッとするような鋭い痛みが走る場合、関節や骨などの組織損傷の可能性が高いです。また、部分的な組織損傷が疑われる場合、炎症症状によって部分的に熱をもつケースも少なくないです。痛みのある腰の周囲を手で触ってみて、熱をもっている場合は炎症症状が起こっている証拠なので、お風呂を含めてその周囲を温めるのは避けましょう。

シャワーの方が良い腰痛

シャワーとは、湯船に浸からずにシャワーだけで頭や身体を洗い、お風呂を済ますことをいいます。
ここでは、腰痛の中でもシャワーの方が、症状が緩和しやすいものを挙げていきます。

急性腰痛(ぎっくり腰)

急性腰痛とは、名前の通り急に腰痛が発生しているものです。主に「ぎっくり腰」がそれに当たります。ぎっくり腰は正式な病名ではなく、広い意味で急性腰痛といいます。主に、腰の筋肉に痛みが発生する「筋・筋膜性腰痛」で起こりやすいです。下記で紹介する「腰椎椎間板ヘルニア」もぎっくり腰(急性腰痛)に含みますが、それは後述します。

筋・筋膜性腰痛とは、姿勢を維持している脊柱起立筋という筋肉が、何らかの負荷により痛みを起こしている状態です。ぎっくり腰では、重たいものを持ち上げたり急に動いたり、無理な姿勢になったりした時に起こりやすいです。

症状が軽い方であれば、ピキッと痛みが走るぐらいで済みますが、重症の方は腰が抜けたような感じになり、立てなくなることもあります。西洋では、「魔女の一撃」とも呼ばれているぐらい、恐ろしい痛みが走ることもあります。

こんな腰痛の時、お風呂はシャワーで済ませましょう。なぜなら、急に痛めたものは筋肉が炎症を起こし、痛みを発生させています。そんな状態にも関わらず、湯船に浸かって身体を温めてしまうと、炎症は助長されてしまします。浸かっている時は気持ち良くても、後から炎症が強くなり余計に痛みが増してしまいますので、注意が必要です。
また、痛みが強い場合は、イスに座って頭を洗わずに、立ってすることをおすすめします。一度座ってしまうと、痛みで立てなくなる可能性があります。下半身を洗う時も、体勢は気をつけましょう。

急性の腰椎椎間板ヘルニア

前述の通り、腰椎椎間板ヘルニアもぎっくり腰に含みます。腰椎椎間板ヘルニアとは、背骨と背骨の間にある衝撃を吸収するクッション(椎間板)が、急激な動作により脱出して神経を圧迫することにより、腰痛や坐骨神経痛を引き起こすものをいいます。特に若い方の方が、椎間板に水分を多く含んでいますので、脱出しやすいため発生します。

発生原因は、日常生活中にも筋・筋膜性腰痛と同じ発生機序で起こりますが、スポーツ中の発生が多いです。野球やサッカーでスライディングなどをした時、柔道で投げた時や投げられた時、ラグビーなどのコンタクトスポーツで相手選手とぶつかった時などで起こります。

筋・筋膜性腰痛と違い、症状は腰痛と共に足の痛みやシビレが出てきます。ぎっくり腰になり、足に症状が現れた場合は、一番に「腰椎椎間板ヘルニア」を疑います。椎間板が脱出した直後は、周囲で炎症を起こしていますので、湯船には浸からずシャワーでお風呂は済ますことをおすすめします。
また、前屈姿勢になると、余計に椎間板が脱出してしまい症状が悪化します。頭や足を洗う時は、特に注意してください。

湯船の方が良い腰痛

シャワー

次は、湯船の方が良い腰痛について紹介します。上記のような急性ではなく、慢性に湯船に浸かると効果的です。

慢性腰痛

慢性腰痛、いわゆる慢性の筋・筋膜性腰痛のことを指します。急激な動作で起こるものではなく、普段の疲労や不良姿勢などにより、腰の筋肉が血流不足となり腰痛が発生します。
このような腰痛の場合、お風呂でゆっくり湯船に浸かり、腰を温めると血流が改善して痛みを緩和させることができます。1 日の疲れを取り、筋肉の血流を良くすると、次の日腰痛が楽になります。

慢性の腰椎椎間板ヘルニア

急性の腰椎椎間板ヘルニアになった後、だいたい 1 ヶ月以上経った場合は慢性の扱いになります。慢性になれば、シャワーではなく、湯船に浸かる方が効果的です。腰の血流を良くすることで、椎間板の修復をサポートしてくれます。また、足の痛みやシビレのような、坐骨神経痛を和らげることもできます。

温めた方がいい腰痛に対するおすすめの入浴方法と一工夫

筋肉疲労の腰痛

筋肉疲労による腰痛の場合、患部をしっかりと温めることで血行が改善し、痛みが早く軽減していきます。入浴は温熱効果があり腰をしっかりと温めてくれるだけではなく、水圧によって腰をマッサージする効果もあります。そのため入浴するだけでも腰痛の改善が見込めますが、入浴に加えて一工夫するとさらに腰痛に効果的です。

温泉に入る

温泉にはミネラルなどの効能成分が含まれていて、温熱効果だけでなく効能成分が皮膚から吸収され、筋肉痛や冷え性、関節のこわばりなどの様々な症状を改善してくれます。温泉の場所によってはそれらの成分が療養に特化していて、痛みの治療に温泉を使う人も少なくありません。近くに温泉がある人は、温泉を活用するとより腰痛が早く改善するかもしれません。

入浴剤を入れる

最近では様々な種類の入浴剤が販売されています。炭酸ガスや温泉ミネラル成分などの温熱効果を高めたり、疲労回復を促進する成分が含まれているものも多く、低温度のお風呂でも体を芯から温めて、入浴の効果を高めてくれます。温泉が近くにないという人でも、入浴剤を使って療養効果を高めることができます。

お風呂のイスを変えてみる

お風呂のイスはどんなものを使われていますか?大抵の方は、低めのイスを使われているでしょう。低いイスに座っていると、ヒザは余分に曲がりますので、腰を丸めなければ座れません。そのような姿勢で座っていると、腰痛は悪化以外しません。どんなに姿勢良く座ろうとしても、腰が丸まってしまいます。

ですので、高めのイスに変えてみましょう。変えてみると、びっくりするぐらい楽に座れて、腰に負担が少なくなります。イスの高さの目安は、ヒザと同じぐらいの高さか、それより少し低いものを選んでください。

入浴後にストレッチをする

入浴後、体が温まって血行がよくなっているときにストレッチを行うことで、よりしっかりと疲労物質の解消を図ることができます。また、ストレッチには筋肉を柔らかくして、疲労物質を溜まりにくくする効果もあるので、長期的な腰痛予防にも効果的です。

腰のストレッチは以下の方法を参考にして、毎日継続して様子をみてください。
1. 仰向けで手で両ひざを抱えて、ゆっくり10秒数えます。
2. 仰向けの姿勢に戻ります。
4. 次に両手を横に開いた状態で、両ひざを立てて右に倒してゆっくり10秒数えます。
5. 左側にも同じように両ひざを立てたままゆっくりと倒して10秒数えます。
6. 仰向けの姿勢に戻ります。
これら3つのストレッチを1日3回ずつ程度繰り返します。

ストレッチは腰痛のでない範囲で行いましょう。

湯船でストレッチをするのも効果的

湯船に浸かっていて、広さに余裕がある場合は、中でストレッチをしてみましょう。広さが足りない方は、銭湯などに行った時に試してみてください。身体が温かい状態でストレッチをすると、ストレッチ効果が上がります。

ヒザを真っ直ぐ伸ばせる場合は、長座体前屈のようにストレッチしてみてください。太ももの後ろが伸ばされます。太ももの後ろと腰痛には、深い関わりがあります。太ももの後ろの筋肉は「ハムストリングス」といい、骨盤の後ろに付着しています。ハムストリングスが硬くなると、骨盤は後傾していまい、腰が丸まり腰痛が発生するのです。腰痛がある方の半数以上は、ハムストリングスが硬いので、ストレッチして柔軟性を高めましょう。

もう一つストレッチの方法があります。文字にすると少し分かりにくいですが、チャレンジしてみましょう。例えば、左足を伸ばして、右足は曲げて左足のヒザの外側に置きます。次に、左肘を右足のヒザの外側に当てて、体幹を右に回します。その状態で 30~1 分程キープします。このストレッチをすると、左側の腰が伸ばされます。反対側も同じ要領でしてください。

入浴しながらマッサージをする

痛みのある部位に強い刺激となるマッサージは腰痛悪化のリスクにもなるため注意が必要ですが、入浴しながら痛みのある部位を優しく撫でる程度のマッサージは安全かつリラクゼーション効果が期待できます。

お風呂を避けるべき腰痛

炎症による腰痛が疑われる場合は、お風呂に入るのは避けた方がいいですがシャワーは浴びても大丈夫です。患部が温められないようにぬるめのシャワーで、短い時間でシャワーを終わらせるように心がけるといいでしょう。また、シャワーや通勤などの日常生活動作で仕方なく体が温められてしまった場合は、アイスパックや湿布などを活用して炎症の悪化を抑制するといいでしょう。

どれくらいの期間お風呂を避けるべき?

腰部の炎症はその程度によっても異なりますが、一般的に2日〜1週間程度と言われています。炎症による腰痛が疑われる場合は、この期間はお風呂を避けた方が無難です。痛みが落ち着いてきて、患部の熱っぽさがとれてきているのが確認できる場合、お風呂を再開してもいいでしょう。

低温、短時間のお風呂からはじめて、腰痛が悪化しないのを確認しながらお風呂の温度を上げて、入る時間をのばしていきましょう。炎症期を過ぎた後の腰は痛みや活動量の低下によって筋肉や関節がこわばっているケースが多く、お風呂を上手く活用することで痛みがずるずると長引く慢性腰痛への移行を防ぐことができます。

腰痛の原因が何かわからない場合はどうするの?

腰痛の原因が筋肉疲労によるものなのか、炎症によるものなのかわからない場合は患部を温めない方が無難です。また、万が一入浴後に腰痛がひどくなる場合もしばらくはお風呂を避けた方がいいでしょう。原因のわからない腰痛がある場合は、早めに医師の診断を受けた方がいいでしょう。

妊娠や生理、ストレスなどからくる腰痛の場合はお風呂に入っても大丈夫?

上記で記載した整形外科的要因以外にも、腰痛は原因のはっきりしているものから原因のわからないものまで様々です。妊娠や生理でホルモンバランスが不安定なって起こる腰痛や、ストレスから自立神経のバランスが崩れて起こる腰痛もあります。ホルモンバランスや心因的要因で起こる腰痛の場合、お風呂で血行を改善することで腰痛が改善する可能性があります。お風呂にはリラックスする効果もあるため、好きなアロマオイルなどを楽しみながら入浴するのもいいでしょう。

まとめ

腰痛には様々な原因があり、対処法もその原因によって異なります。温めたり、冷やしたり、腰痛の対処法は間違えてしまうと状態を悪化させてしまう可能性があるので、対処法を自分で判断できない場合は専門家に相談した方がいいでしょう。腰痛は早めの対処で早期回復が見込めます。長引く腰痛を避けるためにも、しっかりと腰痛の原因を評価して、正しい対処法を選択していきましょう。

参考文献

ぎっくり腰のときはお風呂につからない方がいい理由
お風呂に入っていい腰痛の特徴は?
急性腰痛と慢性腰痛
妊婦の腰痛!

〇公益社団法人全国柔道整復学校協会・教科書委員会 柔道整復学・理論編改訂第 6 版(2018) 公南江堂
〇国分正一・鳥巣岳彦「標準整形外科学 第 10 版」(2008 年) 医学書院

著者情報

腰痛メディア編集部
腰痛メディア編集部

痛みや体の不調で悩むあなたへ、役立つ情報をお届け。

自分の体の状況(病態)を正しく理解し、セルフマネジメントできるようになることが私たちの目的です。

記事のご意見・ご感想お待ちしております。

この著者の他の記事を見る

著者情報

森 亜実
森 亜実

保有資格

理学療法士、ケアマネージャー

経歴

理学療法士として7年、老人保健施設を併設した回復期病院で子供からお年寄りまで幅広い年齢層の方に関わってきました。

腰痛で来院される患者様も多く、腰痛の予防と痛みのセルフコントロールは今後の大きな課題だと感じています。

健康で明るい生活を維持できるように、読者の皆様に少しでも役立つ記事を発信できるよう努めていきます!

この著者の他の記事を見る
wholebodyeducator