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腰痛の原因はさまざまですが、その中に『椎間板が原因でおこる腰痛=椎間板性腰痛』があります。

みなさんは椎間板がどこにあって、どんな役割をしているか知っていますか?

椎間板性腰痛の場合、間違った対処法をしていると、余計に痛みやしびれがひどくなり、最悪足に力が入らない、尿便失禁してしまう…など恐ろしい事態を招くことも。

今回は椎間板性腰痛を正しく理解し、痛みを楽にする方法を学んでいただきたいと思います。

椎間板とは?

背骨の間にあってクッションの役割を果たしている円盤状の軟骨を椎間板といいます。
背骨は、頭の下から骨盤の上まで、小さな24個の骨(椎骨)が積み重なってできています。
横から見ると緩やかなS字カーブを描いていて、腰の部分(腰椎)では前方に自然なカーブを描いている「前弯状態」です。このカーブは、重い頭を支えたり、歩くときの衝撃を和らげるためにとても重要で、カーブがある状態が最も負担の少ない姿勢です。
この、ひとつひとつの椎骨を支え、腰のS字カーブを保つ働きをするのが、椎間板や筋肉、靭帯で

椎間板は外側にあるコラーゲン線維の線維輪と内側にあって水分を多く含む髄核からなっています。
本来、椎間板は神経が通っておらず、痛みを感じることはありません。

椎間板性腰痛とは?

いわゆる「ぎっくり腰」といった急激に起こるものから慢性的なものまで、椎間板が痛みの原因になって起こる腰痛を総称して椎間板性腰痛といいます。
特に前屈したときに痛みが出るのが特徴で、前屈型腰痛とも呼ばれています。
椎間板は、背骨にかかる力の80%前後を受けているともいわれており、加齢や繰り返す圧迫負荷で椎間板の内側にある髄核の水分が減って、クッション性が低下していきます。
このような状態でさらに圧迫負荷がかかると、外側の線維輪が損傷してしまいます。

線維輪が損傷すると、その部分を修復しようとして線維輪の内側へ神経を伴って血管が入り込んでくるのですが、これが原因で本来痛みを感じる部分でなかった椎間板そのものが痛みを生じるようになります。
このような状態を腰椎椎間板症といい、進行すると腰椎椎間板ヘルニアに移行します。

腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板への負荷で椎間板の内側にある髄核が飛び出して神経を圧迫している状態で、強い痛みやしびれを生じ、最悪の場合、足に全く力が入らず、尿便失禁を伴う場合もあります。

※椎間板ヘルニアは、椎間板が神経を圧迫して起こる痛みなので、椎間板性腰痛には含まれません。神経由来の痛みです。

👉ぎっくり腰とは? 症状、炎症期間、どのくらいで治るか、予防法を解説

どんなときに椎間板に負荷がかかるの?

椎間板にかかる圧は姿勢により大きく変化するのですが、立った姿勢と比較した場合、仰向けや横向き寝では少なく、座位姿勢や前屈姿勢で大きくなるといわれています。

加齢や繰り返す圧迫負荷で傷んだ椎間板が、座位姿勢や前屈姿勢をとることでさらに圧迫され、痛みを生じた状態が椎間板性腰痛なのです。
一度傷んでしまった椎間板は、再び元には戻りません。
できるだけ機能を維持することが大事ですので、椎間板由来の痛みは、椎間板への負荷を減らすことが重要といえます

自分でできる!椎間板性腰痛の対処法

生活習慣の見直し

椎間板性腰痛は、普段から座位姿勢や前屈姿勢を長くとっている方に多い腰痛です。
例えば、デスクワークやドライバー、農業従事者に多く、維持や予防しか対処法のない椎間板性腰痛には生活習慣の見直しはとても重要といえます。
とにかく「長時間座った姿勢をとらない」、「前かがみ姿勢をできるだけ減らす」、これにつきます。

座る姿勢が多い方なら、
・椅子に深く腰掛けることで前屈を減らす
・背もたれを使う
・机に肘を付いて、上半身の重みを両手に分散させる
・時々立って腰を反らす
など、定期的に姿勢を変えることで椎間板への負荷を減らすことができます。

背中や腰、股関節周りのストレッチ

股関節の周りが固くなっていると、足の動きに伴って骨盤が大きく動かなければならず、腰のS字カーブが崩れて椎間板への負荷が大きくなります。
また、普段から前屈姿勢を長くとっている方は猫背傾向となり、腰や背中などの筋肉が常に緊張している状態になるため、血流が悪くなり筋肉の柔軟性が低下します。いわゆる体が固くなった状態です。
背中や腰、股関節の周りのストレッチを行うことで、正しい姿勢をキープでき、椎間板への負荷を減らすことができます。

今回は横になった状態でできるものを3種類ご紹介します。

上体反らし

1.うつ伏せになって両肘を付き、上半身を起こします。
2.おなかを床に付けたまま、痛みが出ない程度に上半身を反らします。
3.慣れてきたら、両掌で上半身を支えるようにします。
4.そのまま20~30秒キープします。

太ももの後面を伸ばすストレッチ

1.仰向けに寝た状態で、太ももの裏をもって膝をお腹に近づけます。
2.この時に、膝をできるだけまっすぐに伸ばします。
3.そのまま20~30秒キープします。

おしりの筋&腸腰筋のストレッチ

1.仰向けに寝た状態で、片方の膝をお腹に近づけて両手で抱えます
2.反対の足が浮き上がらないようにして、そのまま20~30秒キープします。
3.反対足も同様に行います。

持ち上げた方の足のお尻や太ももの裏の筋肉の柔軟性を高めることができますが、伸ばした方の足の鼠径部の筋肉のストレッチとしても効果が期待できます。

👉腰痛改善ストレッチ15選│予防におすすめの筋トレ5選も

体幹の筋力トレーニング

体幹筋は、いわゆる腹筋や背筋といった胴体部分の筋肉の総称で、姿勢の維持に働きます。
体幹筋の筋力が低下していたり、バランスが悪かったりすると、椎間板にかかる負荷が分散されず、部分的に増大した状態になります。

また、背骨をまっすぐに支える力が低下すると、前屈姿勢となるため、椎間板にかかる負荷が増えてしまいます。

体幹筋を鍛えることで、正しい姿勢をキープでき、椎間板への負荷を減らすことができます。

今回は仰向けや四つ這いでできる筋力トレーニングを2種類ご紹介します。

背中~お尻の筋肉を鍛える筋トレ

1.仰向けになって両膝を曲げます。
2.首から膝まで一直線になるように、お尻をもちあげます。
3.そのまま数秒キープします。

四つ這いでの体幹筋トレ

1.四つ這いになります。背中が丸まったり反ったりしないように注意します。
2.左手と右足を伸ばした姿勢を数秒キープします。
3.右手と左足を伸ばした姿勢を数秒キープします。

難しい場合は、まず一方の片手のみ、片足のみで行いましょう。
体幹がフラフラしないように意識して行いましょう。

コルセットや杖を使う

コルセットは体幹筋を補助し、正しい姿勢を保つ働きがあります。また、過度な背骨の動きを封じるため、前屈しにくくなります。
整形外科やドラッグストア、スポーツ用品店で購入することができ、ゴムベルトなどの簡易的なものから、支柱入りのもの、医師の処方が必要なオーダーメイドのものがあります。

また、杖を使うと椎間板にかかる負荷を杖に分散することができ、支持面を広げることで体が安定します。長さや突く位置を調整することで、楽な姿勢がとりやすい効果もあります。
現在の腰痛治療は、過度に安静にするよりも普段と同じように生活する方が、痛みや身体機能の点からメリットが大きいと言われています。
コルセットや杖を利用して、上手に腰痛と付き合っていくことも大切です。

まとめ

今回の記事をまとめると、
・椎間板は背骨と背骨の間でクッションの役割を果たしている円盤状の軟骨。
・椎間板が痛みの原因となって起こる腰痛のことを椎間板性腰痛という。椎間板には負荷がかかりやすく、加齢や繰り返す圧迫負荷で痛みを生じるようになる。
・椎間板への負荷は、座位姿勢や前屈姿勢で大きくなる。一度傷んだ椎間板は元に戻らないため、できるだけ機能を維持することが重要。
・「生活習慣の見直し」「ストレッチ」「筋力トレーニング」「コルセットや杖の使用」で椎間板への負荷を減らそう!

もう一度言いますが、椎間板は一度傷んでしまうと元には戻りません。椎間板性腰痛と付き合っていくには、日々の予防と積み重ねが大事ですので、こちらの対処法を参考にしていただき、上手に腰痛と付き合っていっていただければと思います。

参考文献
・山下敏彦『運動器の痛み診療ハンドブック』南江堂 p82~108
・冨士武史、河村廣幸、小柳麿毅、淵岡聡『整形外科疾患の理学療法』金原出版株式会社 p46~80
・宮城正行、内田健太郎、中脇充章、川久保歩、井上玄、高相晶士『椎間板性腰痛の慢性化機序に関する考察』
腰痛ガイドライン2019改訂版 第2版
腰痛椎椎間板障害について|高知県スポーツドクター協議会 川上照彦

著者情報

腰痛メディア編集部
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