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現代日本は高齢化社会を迎えており、それに伴って「高齢者疾患」の予防・治療の重要性も高まりつつあります。もちろん、心臓・肺・肝臓など内臓疾患も大切ですが、「寝たきり予防」「日常生活動作」という観点からは「腰の圧迫骨折」も見逃せない疾患の一つです。

加齢によって骨粗鬆症が進行すると、骨組織が脆弱化し骨折を起こしやすくなります。ただ、骨粗鬆症だけでは無症状のことが多く、圧迫骨折や手足の骨折を併発してはじめて痛みを自覚します。そのため、症状が出現したときには、かなり骨粗鬆症が進行していることも珍しくないのです。

今回テーマの「腰の圧迫骨折」も、骨粗鬆症が原因で起こる疾患です。症状としては腰痛・背部痛が多く、痛みのため姿勢の維持や歩行が困難になることもあります。同じ腰の疾患でも、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症のように神経症状を合併することは少ないですが、まれにあります。

腰の圧迫骨折の治療は、薬物治療やコルセット装着を中心とする保存的治療が先行されますが、神経症状を伴う場合は話は別です。神経症状がある場合は、早期の手術が必要なケースもあるため、同じ圧迫骨折でも注意が必要です。

今回の記事では、「腰の圧迫骨折の症状」について解説しています。圧迫骨折に神経症状が少ない理由、もし合併した場合は要注意な理由についてもお伝えしています。ご自身やご家族が圧迫骨折にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

腰椎圧迫骨折とは?!3つの原因とその対処方法について

腰の圧迫骨折の症状は2段階

圧迫骨折には、「高齢女性に多い」「軽い外傷がきっかけに発症する」「胸椎から腰椎にかけてが好発部位」などの特徴があります。症状で最多のものは「痛み」です。

腰から背中にかけての痛みを訴えることが多いのですが、一方で足の神経症状を合併することは比較的まれです。

腰の圧迫骨折の場合、椎体の前方部分が潰れることが多いのですが、脊髄などの神経組織は椎体の後方を走行しています。そのため、圧迫骨折の影響が神経に及ぶことは少ないので、神経症状の出現もまれなのです。

また、腰の圧迫骨折は急性期と慢性期に分けられることも多く、症状にも違いが見られます。

急性期の症状は痛みがメイン

転倒やしりもちなどの軽微な外傷が原因になり、圧迫骨折を発症してから間もない状態のことです。腰痛のほか、立位や体を動かすのが難しくなり、骨折箇所を押しても痛みが強くなる特徴があります。また、痛みは安静にしていると軽快する場合がほとんどです。

慢性期になると円背に

急性期を抜けると、強い痛みは消失します。代わりに、椎体の前方部分が圧潰されることで背中が丸みを帯びます。医学的には「円背」「亀背」と呼ばれる状態で、特に治療の対象にはなりません。圧迫骨折の経験がある方で、「最近背が縮んだ」と感じるのはこれが原因です。ただ、治療不要といっても、「背中が当たって仰向けになれない」「背筋が萎縮しやすい」などの問題点もあります。

腰の圧迫骨折でも神経症状を合併する

先にもお伝えしたように、腰の圧迫骨折に神経症状を合併することはまれです。しかし、場合によっては麻痺などの神経症状が出現することがあります。圧迫骨折が進行すると、椎体の後方部分が脊柱管内に突出することがあります。脊柱管には脊髄・神経根などの神経組織が納まっているので、骨によって圧迫されると神経麻痺が生じるのです。

神経症状の多くは、圧迫骨折の進行に伴って出現します。そのため、圧迫骨折の発症から時間が経過してから神経症状が現れることが多く、医学的には「遅発性麻痺」と言われます。

腰の圧迫骨折で手術が必要!神経症状に要注意

神経症状を合併した圧迫骨折に対しては、手術治療を検討する必要があります。一般的な圧迫骨折と同様、保存的治療で症状の改善がみられるという報告もありますが、「状態が許す限り手術治療はおこなわれるべき」という主張が強いのです。なぜなら、脊椎の物理的な変形が原因であることが多いため、根本的な解決には手術による骨の矯正が必要だからです。

よって、手術は「脊椎の矯正と安定化」「神経機能の回復」の2点を目的におこなわれます。具体的には「脊椎前方固定術」が施行されることが多く、突出した骨を削ったり、インプラントを用いて脊椎を固定したりなどの手技をおこないます。

圧迫骨折の患者さんは高齢者が多いため、手術後は寝たきり予防が重要です。傷の痛みは辛いと思いますが、なるべく早期から離床やリハビリを開始することで元の生活に戻れる可能性が高まります。

一般的な腰の圧迫骨折では、「安静とコルセット」というイメージが強いかもしれません。しかし、神経症状を伴う場合は手術も考慮されるので、このポイントは注意してください。

まとめ:腰の圧迫骨折で神経症状ありの場合は要注意

腰の圧迫骨折では、「急性期の痛み」「慢性期の円背」が一般的な症状です。

しかし、遅発的に神経麻痺を合併することがあり、その場合は手術を検討する必要があります。

腰の圧迫骨折でお悩みの方は、「足の麻痺症状」にも気をつけて生活してください。

【参考文献】
西山 正紀「骨粗鬆症における脊椎圧迫骨折による脊髄麻痺」 臨床整形外科 25巻11号

著者情報

広下若葉
広下若葉

保持資格

医師国家資格・麻酔科標榜医

経歴

2015年:医師国家資格 取得

2017年:初期臨床研修プログラム 修了

2020年:麻酔科標榜医 取得

    麻酔科専門研修プログラム 修了

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