MENU
メニュー

腰の関節の痛みに関しては、大きく2種類に分けられます。
「椎間関節」と「仙腸関節」の2種類です

椎間関節というのは、脊柱が積み木のように積み重なっていますが、一つ一つの脊椎をつないで関節をなしているものが椎間関節になります。

仙腸関節というのは、腰椎の下に仙椎という骨が存在しています。仙椎は左右に二枚の骨盤の骨が関節をなしてくっついており、この部分が仙腸関節です。

骨盤と仙腸関節は、上半身の体重を支えるだけでなく、足元からの力を骨盤や仙腸関節を介して上半身に伝達する重要な役割を持っています。

また、骨盤は身体の中の臓器を支える役目も担っているため、臓器が炎症を起こすことで、腰痛や仙腸関節周囲の痛みを引き起こしている場合もあります。

今回は、そんな仙腸関節の痛みに関して詳しく述べていきたいと思います。

仙腸関節性の腰痛の実態とは

仙腸関節は、骨盤と仙椎をつなぐ関節です。関節をなしているということは、動きがあるように思いますが、実際はほとんど動きはありません。

腰の骨盤に手を当てて、仙腸関節部分を前後左右に開こう、動かそうと思っても、あまり動きは感じられません。

仙腸関節の痛みというのは、近年注目されていますが、20世紀ごろではあまり着目されておらず、痛みの原因とは考えられていませんでした。
仙腸関節に動きがあまりなく、痛みに関与しないと考えられていたのです。

では、どうして仙腸関節に痛みが生じてしまうのでしょうか。

仙腸関節性の腰痛の原因とは

仙腸関節は、上半身の体重を支える上から下に向けての力と、下半身からの力を骨盤を介して上半身に伝える下から上の力が加わります。
よって、骨盤や仙腸関節には、上半身と下半身の中継地点として、様々な力が加わります。

姿勢が悪い中で動作を繰り返していると、仙腸関節に対する負荷が集中し、仙腸関節に痛みが生じることがあります。

また、仙腸関節を安定させるために働いている、仙腸関節周囲の筋肉や靭帯に痛みを引き起こすこともあります。

女性は男性よりも身体の組織が柔らかく、妊娠などの過度の骨盤への負荷が仙腸関節への負担となり痛みが出やすいです。
特に、妊娠をきっかけに、仙腸関節に必要以上の動きが生じてしまうことで、仙腸関節が不安定になり、痛みが生じやすくなってしまうこともあります。

同じように、ゴルフやボーリングなど、腰を捻ることが多いスポーツでは、骨盤や仙腸関節に負担が集中し、仙腸関節性の痛みが生じることがあります。

では仙腸関節性の痛みはどういった症状になるのか述べていきます。

仙腸関節性の痛み、症状とは

まず1つ目に、仙腸関節に痛みが生じるだけでなく、その周囲の筋肉や靭帯にも痛みが生じることがあります。
骨盤や仙腸関節に負担が集中することが、仙腸関節の痛みの要因ですから、股関節が硬い場合や、腰の動きが乏しいことで、仙腸関節に負担をかけることがあります。

具体的な筋肉として、腰の筋肉である腰方形筋や、多裂筋、股関節の前にある腸腰筋、お尻の筋肉である梨状筋、太ももの後ろにあるハムストリングスなどの関与が疑われます。

靭帯は過剰な動きが出ないように止めておく作用をしていますが、仙腸関節周囲の靭帯は、後仙腸靭帯や仙結節靭帯等が挙げられます。

このようにあらゆる組織が仙腸関節性の痛みに関与していますから、自身だけで痛みの原因を探り、治療することは難しいでしょう。
必ず整形外科などの専門医に診断をしてもらい、理学療法士などの専門家に評価してもらい治療することが大切です。

お尻の筋肉の硬さが仙腸関節の痛みの原因となることは述べましたが、その梨状筋とよばれる筋肉が硬くなることで、足に痺れ症状が生じることもあります。

いわゆる梨状筋症候群という合併症になりますが、お尻から大腿の外側後面、下腿の外側にまで痺れが生じることがあります。

梨状筋の後方には、坐骨神経が走行しています。人数は少ないですが、梨状筋の中を坐骨神経が通過している方もいます。
ですから、梨状筋が固くなることで坐骨神経による痺れが出ることは、容易に想像できます。

骨盤と仙腸関節は上半身と下半身の中継地点ですから、仙腸関節に痛みが生じることで、あらゆるところに痛みや痺れが出現することがあります。
多くの症例でお尻の痛みが中心ですが、太ももの外側や、股関節の前にある鼠径部痛が続いて多いです。
また、下腿の後面や、足底の外側に痛みが生じることもあります。
仙腸関節の炎症が続くことで、腰部にも負担がかかり、腰部の筋肉や椎間関節に痛みが生じてしまうこともあります。

では仙腸関節を含めた腰に痛みが生じた際にはどうすればいいのでしょうか。

仙腸関節性の痛みが生じた際の治療、改善策とは

まず腰の痛みというのは、複雑です。骨盤周囲のあらゆる組織が関与していますし、腰椎の痛みなのか、仙腸関節の痛みなのかを判断するのは自身では難しいことが多いです。

適切に診断を受けることが大切で、整形外科で医師に見てもらうことが重要です。医師がリハビリ治療の必要性を判断する場合には、理学療法士が具体的に評価し、痛みの原因について治療してくれます。

次に、どういった動作で痛みが生じるのか確認しましょう。基本的には痛みが起きたすぐは痛みの生じる動作は避けることが大切です。
痛みが起きている時期というのは、組織に炎症を引き起こしていることがあり、安静期間を怠ると、かえって痛みが続くことや、炎症が治まらないことも多いです。
1週間、2週間程度で、痛みは軽減してくるものが多いですので、安静期間はしっかりと休むことが大切です。

医師が骨盤サポーターやベルトを締め、仙腸関節に動きが出ないように処方することもあります。
この場合には、動作をするときや安静期間は、必ず装着し日中を過ごすようにしましょう。

2つ目に、過度に骨盤の動きが出ていないか、客観的にみてもらうといいです。
例えば、歩行中に立っている足側に過度に骨盤が動揺する方もいます。
これは、足からの力の伝達に対して、骨盤周囲の筋力や支える力が足りていないことで生じやすいです。
こういった状態を繰り返すことで、腰や仙腸関節に負担が生じ、痛みが誘発してしまうことがあります。
歩行を見るだけでも、骨盤の動揺が強いのであれば、スポーツ動作となるとさらに顕著に骨盤周囲の動きが過剰になっている可能性があります。

3つ目に、骨盤周囲である、腰のストレッチや股関節のストレッチを行い、動きの幅を確保しましょう。
骨盤周囲のである腰や股関節が硬いことで、体重や足元からの力を骨盤で分散することができず、仙腸関節の痛みになっていることは少なくありません。
日頃から、運動したあとにはストレッチや身体を休めるケアを大切にしましょう。

4つ目に、足にしびれ症状が強く、梨状筋症候群も併発している場合には、臀部のストレッチを行いましょう。
梨状筋を新調するには、仰向けの状態で、股関節を深く曲げ、そのまま少し内側に足を傾けると、お尻の筋肉が伸ばされる感じがあると思います。
ストレッチをするときには、伸びを感じたところで20秒程度は保持するようにしましょう。
ストレッチをしたあとは、仰向けで膝を立てた状態をとり、そのまま足を開くようにすると、梨状筋が使えます。
伸ばしたあとには、軽く筋肉を動かして上げると、さらに柔軟性を保つことができますので、試してみてください。

今回は仙腸関節による痛みに関して説明しました。
腰や仙腸関節の痛みで、スポーツを制限されることや、パフォーマンスが低下して悩んでいるスポーツ選手は少なくありません。
どこが悪くて痛みが生じているのか、なぜ痛みを引き起こしたのか、適切に診断をしてもらい、再発を繰り返さないように治療しましょう。

参考:日本仙腸関節研究会

著者情報

金岡 恒治(かねおか・こうじ)MD,PhD
金岡 恒治(かねおか・こうじ)MD,PhD

早稲田大学スポーツ科学学術院教授

日本整形外科学会専門医・脊椎脊髄病医

日本スポーツ協会認定スポーツドクター

日本水泳連盟理事・医事委員長 ほか

この著者の他の記事を見る
wholebodyeducator