年齢を重ねると腰痛や肩の痛みなど身体が疲れやすくなったり、物覚えが悪くなったりとご自身で加齢を実感する事柄が増えて来る方も多いはずです。
しかし、表面上見えなくても注意しなければならないこととして「骨粗鬆症」が挙げられます。
特に最近の日本人では1000万人以上と骨粗鬆症は増加しています。
骨粗鬆症の方では、しりもちや転倒後に腰痛が続き、実は圧迫骨折だったというケースも珍しくありません。
今回は骨粗鬆症と腰痛の関係について紹介し、注意事項を解説していきます。
目次
骨粗鬆症が腰痛に関係ある理由
骨粗鬆症とは近年日本人に増えている症状の一つです。
具体的には骨の中のカルシウムが減り、骨の量が減って骨がもろくなった状態です。
そのため、高齢者では転んだりした時に、骨が折れやすく骨折する可能性が高いです。
中には、座っただけで腰の骨を骨折する方もいます。
もし、転倒後に腰痛が長く続く場合には整形外科など医療機関を受診するようにしましょう。
骨粗鬆症の症状は?
骨粗鬆症だけでは、痛みなどの症状はありません。
また、外見からは気付くことも少ないでしょう。
そのため、骨粗鬆症になっていても日常生活に大きな変化がある方はいないのです。
骨粗鬆症が問題となるのは、骨が折れやすい状態で生活をするということでしょう。
特に高齢者では、腰骨である腰椎圧迫骨折、太ももの付け根の大腿骨頸部骨折など転倒した際に骨折しやすいというリスクが問題視されるのです。
骨粗鬆症の原因は?
骨粗鬆症の原因の一つは加齢です。骨量は20歳頃がピークです。男子はさらに成長ホルモンや男性ホルモンによって骨が強化されます。
20歳~40歳くらいまではその骨量が維持されますが、その後は増えずに徐々に減少するだけです。
特に女性は閉経後にエストロゲンの分泌が減りますので、50歳前後から急に骨量が減ります。これは65歳前後まで続きます。65歳を超えると減少のスピードは緩みますが、骨量の減少がストップすることはありません。
このように、骨粗鬆症の主な原因は、加齢による骨量の減少により骨が弱くなることです。
骨粗鬆症で注意すべき腰の病気
骨粗鬆症が進行すると、身体を支える背骨の脊椎が弱くなり、衝撃などで背骨が折れたり、つぶれやすくなるのです。
ひどい場合では、骨折した骨が神経を圧迫したり、折れたことに気付かないまま放置していると脊椎が変形したりということもみられます。
特に高齢者では腰痛を放置したまま、徐々に痛みを感じにくくなっていたりすることで症状が進行してしまう可能性があるため、注意が必要です。
腰椎圧迫骨折
骨粗鬆症と腰の病気で代表的なのが腰椎圧迫骨折です。
骨粗鬆症が進行すると、日常生活の中でも自然に圧迫骨折してしまう場合もあるのです。
また、中には骨折した骨が後方に飛び出し神経を圧迫する可能性がある破裂骨折に繋がるケースもみられます。
腰の痛みが強くなると寝返りや起き上がり、歩行といった動作が困難となり寝たきりになる可能性もあるため、医療機関に相談する必要があるでしょう。
変形性脊椎症
骨粗鬆症の高齢者は、圧迫骨折後に脊椎の変形が起こりやすく変形性脊椎症などの問題を抱えてしまう方が多いでしょう。
変形性脊椎症になると、背中や腰部の筋肉のバランスが崩れるため円背や側弯など姿勢に問題が生じます。
また、問題となる姿勢で過ごすことで慢性的な腰痛が生じやすく、悪化すれば日常生活にも支障をきたすため注意が必要となります。
脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症は、脊柱管の神経が圧迫され下肢の痺れを呈する病気です。
上記の2つと同じように脊椎の変形や骨折、姿勢なども関与して引き起こされます。
特に日常生活でも、長く歩くと腰痛や下肢の痺れが強まる「間欠性跛行」と呼ばれる症状がみられるため生活に支障をきたす場合もあるのです。
骨粗鬆症の検査
ではどのようにして骨粗鬆症を調べるかを紹介します。
骨粗鬆症の診断は、レントゲン検査で診断することが可能です。
より詳しく調べる場合には、骨密度検査で骨密度(骨塩量)を測定する検査を受けることもできます。
検査時間は10分~15分で行えるようになっています。
骨密度を測定することで骨粗鬆症はもちろん、関節リウマチや、ホルモン分泌異常の検査も行え、治療効果や経過観察にも用いられています。
医療機関では骨密度測定以外にも、問診や骨粗鬆症診断チェックリストに記入し日常生活のリスク因子を把握します。
具体的な習慣を見直し、予防にも活かす事ができるため骨粗鬆症のチェックリストの確認は大事です。
骨粗鬆症の診断基準
骨粗鬆症の診断は、若年成人(20~44歳)の骨量の平均値(YAM値)との比較によって行います。骨量がYAM値の70%未満であれば骨粗鬆症、70~80%であれば骨量減少と判断されます。骨量がYAM値の80%未満の人は注意が必要です。
骨粗鬆症になりやすい人
骨粗鬆症は高齢者に多いですが、男女比では女性の割合が多いです。
理由としては老化に加え閉経後に骨密度や骨の形成に関与するエストロゲンなどの女性ホルモンが減少することが関係しています。
そのため、閉経後の女性でも生活習慣の基盤で運動不足やカルシウム不足の場合は、骨粗鬆症になりやすく注意が必要でしょう。
他にも特定の疾患や薬の影響で骨粗鬆症になりやすくなる事が知られています。動脈硬化や糖尿病、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患など、原疾患の影響や治療の過程で使用するステロイドなどの薬剤も関係します。
骨粗鬆症は自覚症状がなく発見されにくい病気です。
そのため、定期的に骨密度検査を受けることが早期発見のためのポイントです。
骨粗鬆症の治療と予防
骨粗鬆症は薬物療法や生活習慣の改善を行い治療や予防をしていきます。
自分自身の骨の健康状態を知り、食事・運動など生活改善をすることは予防にもなります。
薬物療法
薬物療法では、骨の新陳代謝を促進するような効果がある薬を用います。
骨粗鬆症では、この骨の新陳代謝のサイクルが正常と異なるため、脆くスカスカな骨となってしまします。
具体的には、骨が壊れるのを予防する薬や骨を作る効果がある薬に加え、カルシウムやビタミン類の薬剤が用いられます。
生活習慣の改善
骨粗鬆症は予防が重要な病気です。
食習慣の改善も大切で、具体的には牛乳などのカルシウムの摂取や魚や納豆など骨の形成や再吸収に関与するビタミン類やタンパク質が含まれる食物をバランスよく摂ることが大事です。「カルシウム」「ビタミンD」「ビタミンK」などを意識して摂ってください。
カルシウムを多く含む食品は、小魚、海藻、乳製品、根菜類、緑黄色野菜などです。ビタミンDはキノコ類や魚介類に多く含まれます。ビタミンKを取ろうと思えば、小松菜、キャベツ、ほうれん草、ニラ、納豆などがおすすめです。
骨を作るためにタンパク質も必要です。肉、魚、牛乳などをバランスよく食べましょう。また栄養素を破壊する喫煙や過度な飲酒は控えた方がいいでしょう。コーヒーも多量に飲むのはおすすめできません。
加えて日頃から適度に運動しておくことも予防に繋がります。
なかでもおすすめは日常生活に散歩する機会を定期的取り入れることです。
日光浴をすることで、健康な骨を維持するために必要なビタミンDをつくることができることが明らかにされているため、散歩で日光浴を兼ねるとなおよいでしょう。
さらに、腰回りや臀部の筋肉を鍛えることも大切で、転倒予防はもちろん骨粗鬆症になるリスクを下げることが明らかにされています。
家でできる簡単な筋トレとして「片足立ち」はいかがでしょうか。1分間片足立ちになることを交互に行うのですが、歯磨きをしながらでもできるでしょう。もし、上体がふらつく場合は無理せず、椅子の背などに手を置いて片足立ちを行ってください。
まとめ
腰痛が長く続いた結果、整形外科を受診したところ骨粗鬆症と診断されることもあるでしょう。
腰痛と骨粗鬆症は密接な関連があり、気付かないまま放置しておくと痺れや痛みの増悪を引き起こす神経症状に繋がる可能性もあるため、注意が必要です。
骨粗鬆症も腰痛も日頃の生活習慣を見直すことが予防のポイントですので、ぜひ一度骨粗鬆症チェックリストに沿って生活習慣を省みてはいかがでしょうか?