女性特有のがんに、子宮がんがあります。
子宮がんは、子宮頚がんと子宮体がんの2つに分けられ、腰痛を伴うことがあります。
発症率は子宮頚がんの方が圧倒的に多く子宮がんの約7割が子宮頚がんと言われています。
目次
子宮頚がんとは
子宮頚がんは、子宮の入り口である子宮頸部と呼ばれる部分から発生します。子宮の入り口付近に発生することが多いので、子宮がん検診や婦人科の診察で観察や検査がしやすく、発見されやすいがんです。
また、早期に発見すれば比較的治療しやすく予後のよいがんですが、進行すると治療が難しいことから、早期発見が極めて重要です。子宮頸がんが進行すると、骨盤の中のリンパ節に転移したり、子宮を支えている靱帯を伝って広がったり、また血管やリンパ管を通って腎臓や骨盤、腰の骨に転移したり、肺などの離れた臓器にも転移することがあります。
以前は発症のピークが40~50歳代でしたが、最近は20~30歳代の若い女性に増えてきており、40歳代がピークとなっています。 国内では、毎年約1万人の女性が子宮頚がんにかかり、約2800人が死亡しており、また2000年以後、患者数も死亡率も増加傾向にあります。
近年、ブライダルチェックが盛んになっており、その際に子宮頚がんが見つかるケースが増えているようです。がんの進行具合によっては、子宮を全摘しなければいけないケースもあり、命が助かっても子供を産むことができなくなってしまう可能性もあります。
子宮頚がんの症状
子宮頸がんは、正常な状態からすぐがんになるのではなく、異形成といわれるがんになる前の状態を何年か経てからがんになります。異形成の時期では症状がなく、おりものや出血、痛みもありません。
子宮頸がんが進行すると、月経中でないときや性交時に出血したり、濃い茶色や膿のようなおりものが増えたり、水っぽいおりものや粘液が多く出てきたりすることがあります。
さらに進行すると下腹部や腰が痛んだり、尿や便に血が混じったりすることもあります。
これは、子宮の近くにある膀胱や直腸、骨盤や腰椎にがん細胞が転移して、出血や痛みを引き起こすからです。
また腎臓と膀胱を繋ぐ尿管にがん細胞が広がると、尿管を塞いでしまい、水腎症になってしまうことがあります。腎臓は背中側にある臓器なので、水腎症になると背中や腰の辺りに痛みを感じることがあります。
子宮頚がんの痛みの多くは下腹部ですが、腰や背中に痛みが出ることもあります。
少しでも気になる症状があるときは、ためらわずに早めに婦人科を受診してください。
子宮頚がんの検査方法
通常まず細胞診を行います。ブラシで子宮頚部を擦って細胞を取ります。その結果によっては、子宮頸がんの発生する危険性が高い種類のHPVの感染を検査するハイリスクHPV検査を行うこともあります。
精密検査として、コルポスコープ(腟拡大鏡)下の組織診、さらに円錐切除術による組織診を行います。
子宮頚がんだと確定診断された場合、がんの広がりをみる検査が必要になります。
内診・直腸診、超音波検査。続いてCT検査、MRI検査、PET検査などで全身を調べます。
また膀胱や直腸を内視鏡で観察し、浸潤の有無を確認することもあります。
その他、診断の補助、治療効果判定、再発の早期発見のために、腫瘍マーカーの検査を行うこともあります。
子宮頚がんワクチンに関して
子宮頸がんの95%以上は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因です。子宮頸部にHPVが侵入する主な原因は、性的接触です。HPVはごくありふれたウイルスで、性交渉の経験がある女性のうち50%~80%は、HPVに感染していると言われています
。男性も同じぐらいの感染率です。性交渉を経験する年頃になれば、男女を問わず、誰でもHPVに感染します。つまり、そのような年頃の女性は誰でも子宮頸がんを発症する危険性があるのです。
国内で承認されているHPVワクチンは2価と4価の2種類があります。2価ワクチンは子宮頸がんの主な原因となるHPV-16型と18型に対するワクチンです。
一方4価ワクチンは16型・18型と、良性の尖形コンジローマの原因となる6型・11型の4つの型に対するワクチンです。これらワクチンはHPVの感染を予防するもので、すでにHPVに感染している細胞からHPVを排除する効果は認められません。
ワクチンの接種は、初めての性交渉を経験する前に接種することが最も効果的なのです。
現在世界の80カ国以上において、HPVワクチンの国の公費助成によるプログラムが実施されています。なお、海外ではすでに9つの型のHPVの感染を予防し、90%以上の子宮頸がんを予防すると推定されている9価ワクチンが接種され始めていますが、日本ではまだ承認されていません。(2019年12月時点)
最近の報告では、HPVワクチンと子宮頸がん検診が最も成功しているオーストラリアでは2028年に世界に先駆けて新規の子宮頸がん患者はほぼいなくなるとのシミュレーションがなされました。世界全体でもHPVワクチンと検診を適切に組み合わせることで今世紀中の排除が可能であるとのシミュレーションがなされました。
HPVワクチンには、日本国内では今なお副作用や全てのウイルスを防ぐことができないなど批判的な声が上がります。しかし、ワクチンの有効性は世界中で認められています。
日本でも新潟県で行われた研究では、20~22歳の女性において、ワクチンによる子宮頸がんの予防効果は90%以上であったという報告がなされています。
秋田県、宮城県における研究では、20〜24歳の女性の子宮頸がん検診において異常な細胞が見つかる割合が、ワクチン接種者と非接種者と比較した場合、明らかに少ないことが判明しています。
日本対がん協会のデータを用いた研究からは、20〜29歳の女性において子宮頸部の前がん病変と診断される割合はワクチン接種者では有意に少ないことが示されました。
接種することで確実に救われる命があります。また命が助かっても子供が産めない体になってしまうこともあります。
未来ある女性の命と幸せな人生のためにもHPVワクチンの接種が広まることを願っています。
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