「筋膜リリース」という言葉をご存じですか?
筋膜リリースは全身のこりや慢性腰痛に効果的であるとして、近年注目されているメソッドの1つとしてメディアなどで話題になっています。本記事では、筋膜リリースと慢性腰痛の関係について紹介します。
目次
そもそも筋膜って何?
筋膜とは、身体全体に張り巡らされている筋肉を包む薄い膜のことを指します。全身を立体的に包む筋膜は実は第二の骨格とも言われており、私たちの身体にとって重要な役割を果たしているのです。
浅筋膜(せんきんまく)・深筋膜(しんきんまく)・筋外膜(きんがいまく)・筋周膜(きんしゅうまく)・筋内膜(きんないまく)といった5種類の連続した層で構成されている筋膜。これらの層は、それぞれ筋肉の保護や筋収縮時に滑りをよくする働きなどを担っています。
コラーゲンと水分が主成分の非常に柔らかい組織である筋膜は組織同士がくっつきやすく、くっつくことで体全体のすべりが悪くなり全身のこりや腰痛を代表とする痛みを引き起こしてしまいます。
筋膜リリースってどんなもの?
常日頃から非対称な姿勢や悪い姿勢をとり続けることで、筋膜が自由に動けなくなりよじれてくっついてしまう状態になります。
そのくっついてしまった筋膜同士を引き剥がしもとの正常な状態に戻すことを、筋膜リリースと言います。筋膜リリースは現在腰痛の治療やリハビリなどの1つとして専門家の中で広く取り入れられている方法で、基本的に指や手のひら全体を使って筋膜同士を引き剥がします。
筋膜リリースはストレッチと同じであると思われることが多いですが、ストレッチは基本的に縦方向の筋膜の癒着にしか効果が現れません。その点、筋膜リリースではさまざまな方向から筋膜にアプローチをすることが可能となっています。
筋膜リリースを行うことで筋膜が元の柔軟さを取り戻し、腰痛を代表とする痛みが軽減されます。
従来この筋膜リリースは高度な技術を必要としていましたが最近は筋膜リリース用の器具が販売されていたり、ネット上にも筋膜リリースの簡単なやり方などが紹介されていたりします。
筋膜と腰痛の関係
腰痛の原因の1つとして、自分では気付かないうちに長年続けてしまっている猫背や悪い姿勢のクセなどが挙げられます。そのような悪い姿勢を続けてしまうと、関節のズレや筋膜の歪み・ねじれを引き起こします。
腰痛が起きている部分に直接原因があることもありますが、筋膜全体が痛みに関係している場合も少なくありません。
そのため腰だけではなく全身の筋膜に筋膜リリースを行うことで、腰のつらい痛みから開放される可能性があります。長引く腰痛とオサラバするために、筋膜の仕組みを理解した上で正しい方法で筋膜リリースを行うようにして下さいね。
筋膜リリースにはこんな効果がある!
筋膜リリースは、ねじれや歪みの生じた筋膜を押し伸ばすことで腰痛を感じにくくするという効果があります。また、筋膜リリースによって筋膜を元の状態に戻すことで腰痛が軽減するだけでなく、身体にとってさまざまな嬉しい効果も。
血液やリンパの流れがよくなる
筋膜のねじれや歪みによって潰れてしまっていた血管は、筋膜リリースを行うことで元の状態に戻ります。その結果血流が良くなると同時にリンパの流れも良くなり、冷えやむくみが改善。冷えは腰痛の大敵でもあるので、間接的ではありますが腰痛改善にとっても効果的ですよね。
内臓の位置が元に戻る
筋膜は全身を覆っているため、その筋膜が歪んでしまうと内臓の位置が下がってしまうことも。内臓が下がると、下腹が出てしまったり便秘になってしまったりします。筋膜リリースを行って下がった内臓を元の位置に戻すことで、それらの症状の改善が期待できます。
身体の柔軟性が上がる
萎縮してしまった筋肉をゆっくりと押し広げることで、こりや全身の緊張がほぐれます。身体の柔軟性が上がると運動時にケガをする可能性が低くなるのは勿論、腰痛も軽減すると言われていますよ。
自律神経が整う
筋膜リリースを行うことで全身のこりがほぐれ、リラックスをすることができます。そのため自律神経のバランスが整うと考えられていますよ。自律神経が整うとストレスの軽減や不眠の解消、自律神経失の解消などにも繋がります。
筋膜リリースはどこでできる?
筋膜リリースは、整形外科や整体院・鍼灸院などで行うことができる場合が多いようです。それらの施設では現在の身体の状況に合わせた施術を提案して貰えるため、まずはカウンセリングを受けて腰痛などの悩みを相談するようにしましょう。
とはいえ、腰痛があまりにもひどい場合や筋膜リリースを行っても全く改善しない場合などにはなにか別の原因があることが考えられます。その際は自己判断せず、早めに専門家の診断を受けるようにしてください。
時間がなくてなかなか整体院などに通うことが難しい方もいらっしゃると思いますが、筋膜リリースには自宅でも気軽に行うことができるものもあります。特別な器具などを使用しないものもたくさんあるため、ぜひ自分に合うやり方を見つけて試してみてくださいね。
自宅でもできる筋膜リリース
ここでは、腰痛に悩む方におすすめの筋膜リリースをいくつか紹介します。丸めたタオルを使用するものもあるので、それだけご準備をお願いします。
腰の両サイドの筋膜リリース
1.腰の下に丸めたタオルを置いて、仰向けになります。
2.左足はそのままで、右足を左足の上にクロスさせます。
3.腰の左側に体重をかけ、10秒から30秒ほどゆっくりと押し伸ばします。
4.左右入れ替えて同じ動作を行います。
お尻上側の筋膜リリース
1.丸めたタオルの上に膝を立てて座り、両手で上体を支えます。
2.左足首を右ひざの上にのせ、腰を少しだけ左に傾けます。
3.左足を上下に動かし、お尻の上側の筋膜を10秒から30秒ほどゆっくりと押し伸ばします。
4.左右入れ替えて同じ動作を行います。
ここで紹介したものはほんの一部で、他にもまだまだ腰痛に効く筋膜リリースがあります!
筋膜リリースのポイント
筋膜リリースを行う際は一点を刺激するのではなく、綿棒で生地を伸ばすイメージでまんべんなく行うことがポイントです。そうすることで刺激が筋膜の深い部分にも伝わるため、より高い効果が得られます。
また、筋膜リリースを行う際には強い力で揉んでしまうと逆効果になることも。そのため、「揉む」というよりは時間をかけてゆっくりと押し伸ばすようにしましょう。
しっかりと呼吸をしながら筋膜リリースを行うことも重要です。呼吸を止めてしまう筋膜が緊張してしまうため、ゆっくりと深い呼吸をするように心がけて下さいね。
👉筋膜リリースで腰痛改善!基本のやり方からストレッチとの違いまで
まとめ
筋膜リリースは、慢性腰痛に苦しむ方にとって非常に効果的です。家にあるタオルなどを使用して気軽に取り入れることもできるので、長らくつらい腰痛に悩む方は是非試してみてくださいね。
また、ストレッチなどの腰痛体操や、有酸素運動と同時に行うとより効果的です。筋膜リリースを行う上でいつもと違う腰痛を感じた場合などは、すぐに整形外科などの専門機関を受診するようにしましょう。
ファシアと筋膜の違いと、筋膜に痛みが発生するイメージ
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参考文献
ビジュアルで学ぶ 筋膜リリーステクニックVol.1 -肩、骨盤、下肢・足部-Til Luchau、 齋藤 昭彦著
筋膜リリース―心身医療における活用について―