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「腰が痛くて病院に行ったら原因不明と言われた」「原因がわからないので治療はできないと言われた」日常生活にも支障をきたす腰痛の原因がわからないとなると、本当につらいですよね。意外と思われるかもしれませんが、腰痛は原因不明とされる場合の方が圧倒的に多いです。

原因不明ときくと「治らない」「治せない」と思い込んでいる人も多いと思いますが、じつは原因不明と言われる腰痛は、正しい知識をもって向き合えば治せる可能性があるのです。原因不明の腰痛の正体と、対処法について紹介します。

原因不明と言われる理由

腰痛というと、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などが有名ですよね。このように痛みの原因が特定できる腰痛を「特異的腰痛」といいます。これに対し、レントゲン検査やMRI検査などでも痛みと一致する所見がなく、明確な原因が特定しきれない腰痛のことを「非特異的腰痛」といいます。この非特異的腰痛がいわゆる原因不明と言われる腰痛なのです。

原因不明ときくと、治せないというイメージがつよく、悲観的になってしまいますよね。原因がわからなければ、たしかに病院での治療はできません。

しかし、ここであきらめてはいけません。このような腰痛の原因は、検査ではわからないような日常生活での動作や姿勢の悪さ、ストレスなどが関係していることがわかっています。自分の腰痛の本当の原因が何なのかを知り、正しく対処していくことができれば、腰痛は改善することができるのです。

ここでは、病院で原因不明と言われた人に向けて話を進めていきます。もし、まだ病院を受診したことがなく、自己判断で原因がわからないと思っている人は、対処法はこの限りではありません。腰痛にはいろいろな病気が隠れている場合もあるので、病院を受診することも検討してくださいね。

痛みの原因は多種多様

痛みのメカニズムについて、腰痛は実は体のあらゆる部位がいろいろと関わりあって起こっているので、多種多様といわれています。

痛みというのは、痛みがある特定の場所から出ることもあれば、それが広範囲に起こることもあり、痛みを察知する脳自体にも起因する場合があります。
先ほどお伝えした腰椎と呼ばれる脊柱から由来するほか、神経、内臓(内臓疾患)、血管、そして心因性と呼ばれる分類、その他と大きく6つに分かれます。

この「その他」こそが原因不明、まだ医学的に説明ができない、診断や治療も解明できていない部分が含まれます。別な呼び方では「非特異的腰痛」といわれ、診断不明のものがこれにあてはまります。

ただし、かつてはこの原因不明の腰痛が8割を超えるといわれたこともありましたが、国内でその後に報告されたデータからは2割程度以外は原因を特定できたといわれています。

腰自体の不具合からくる腰痛の原因

日常生活での動作や姿勢の悪さが腰に負担をかけることで、腰痛が起こります。よくやってしまいがちな動作を紹介します。

前かがみになる

前かがみなったときに起こる腰痛を前屈腰痛(椎間板性腰痛)といいます。前屈腰痛は、背骨の間でクッションの役割をしている椎間板が圧迫されることで起こります。デスクワークや車の運転などで長時間同じ姿勢でいることが原因となる場合が多いです。

また、床にあるものを拾ったり、重いものを持ちあげたりするときも前かがみになることが多いですよね。この動作は、ぎっくり腰を引き起こす原因にもなるので、かがむのではなく腰を落としてしゃがむようにしましょう。

背中を反る

背中を反ったときに起こる腰痛をのけぞり腰痛(椎間関節性腰痛)といいます。のけぞり腰痛は、背中をかるく反る動作により、背骨のうしろにある椎間関節どうしがぶつかることで痛みが起こります。あまり意識していないかもしれませんが、洗濯物を干したり、電車のつり革につかまったりするような何げない動作が、のけぞり腰痛の原因となっています。

骨盤のゆがみにつながる動作

骨盤のゆがみが腰痛と関係しているという話は、よく耳にしますよね。骨盤と腰痛は密に関係しており、骨盤がゆがむとその上にある背骨もゆがみ、腰痛が起こりやすくなります。骨盤のゆがみは日常生活でのちょっとした癖がきっかけで起こることがあります。片足に体重をかけて立ったり、いすに座っているときに脚を組んだり、いすに浅く座って背もたれにもたれかかったりする動作は、骨盤をゆがませます。

脳機能の不具合からくる腰痛の原因

ストレスにより脳機能の不具合が生じ、腰痛が起こることがあります。腰痛とストレスはなかなか結びつかないような気もしますが、じつは大きく結びついているんです。ストレスの原因を2つにわけて解説していきます。

人間関係や仕事などへの心理的ストレス

脳がストレスを感じると、筋肉などの血流不足が生じ、疲労物質の代謝に影響を及ぼすため、腰痛をひきおこします。また、ストレスが強まると、痛みを抑えるはたらきがある脳内物質の分泌が抑えられたり、精神のバランスをたもつセロトニンの分泌が低下したりすることがあります。その結果、腰痛が悪化したり、長引いたりすることがあります。

腰痛に対するストレス

腰痛があると「この腰痛はいつまで続くんだろう」「だんだん悪化していくのかな」と、いろんな不安が押しよせてきますよね。その結果、腰を必要以上に保護したり、できるだけ安静にしようとしたりしている人も多いのではないでしょうか。

しかし、これが腰痛を長引かせたり、悪化させたりする原因となることが研究で報告されています。腰痛があっても心配しすぎず、できるだけ普段通りの生活をおくることが大切です。

原因不明と言われる腰痛の対処法

腰痛の女性

腰自体に不具合がある場合も、脳機能に不具合がある場合も、対処法としておすすめなのは、筋トレやストレッチをおこなうことです。筋トレやストレッチには肉体的に腰痛をやわらげる効果もありますが、自律神経をととのえる効果もあります。継続しやすい簡単なものを紹介するので、ぜひやってみてくださいね。

簡単ストレッチ「これだけ体操」

東京大学附属病院松平浩特任教授考案の「これだけ体操」は、1回3秒でできるシンプルなストレッチです。どこでもおこなえるため、日常生活にも取り入れやすく、厚生労働省からも推奨されています。

腰痛予防の場合は1日に1回から2回、腰痛改善の場合は10回を目安におこなってください。もし、体操中にお尻から太ももにかけて痛みやしびれを感じた場合は中止しましょう。

1.足を肩幅より少し広めに開いて立つ
2.両手をそろえてお尻の少し上に当てる
3.息をはきながら両手で腰を前に押しだす
4.ゆっくりと息をはきながら胸をひらき、3秒キープ

ポイントは腰を反らせるのではなく、骨盤を前に押しだすイメージでおこなうこと、重心はつま先におき、膝はできるだけのばして、あごをひくことです。間違ったやり方では腰痛を悪化させる可能性もあるので、気をつけましょう。

インナーマッスルを鍛える「ドローイン」

腰に負担をかけない姿勢を維持するためには、体の深い位置にある筋肉であるインナーマッスルが必要です。ドローインは、インナーマッスルを鍛えるためのトレーニングですが、寝ながらおこなうことができ、動きもじゃ簡単なので、誰でも実践することができます。まずは、1回10秒以上、1日で合計3分を目安におこないましょう。

1.仰向けに寝て膝をたてる
2.息をゆっくり吐きながらお腹をへこませる
3.息を吐ききってそれ以上お腹がへこまないところでキープしながら浅い呼吸をくり返す
4.10秒から30秒キープしたらもとに戻す

放置していけない腰痛とは?

みなさんの腰痛は放っておけば治るのかは気になりますよね。腰痛が始まってから病院やクリニックを受診するまでに急いだほうがよいのか、仕事を休んでも今すぐ受診したほうがよいのか、悩まれますよね。

頻度からお話すると、放っておいても安静などで自然によくなる腰痛の方が多いです。では、時に命に関わり、早めの受診がその後の人生にかかわる腰痛があることについてご存じでしょうか。

腰痛の中には、事故などのきっかけがあって起こるものもあれば、加齢のような徐々に起こってくる痛みもあります。対応に急ぐほうがよい腰痛にも、大きく2種類にわけることができます。

一つ目は、内臓から起こる腰痛です。腰部には腎臓、膵臓、大動脈血管、子宮など、さまざまな臓器があり、重大な病気が隠れていることがあります。これらは基本的に安静にしていても痛みがあり、動作で痛みが強くなることはありません。

病院やクリニックを受診する場合には、その窓口は整形外科ではなく、内科や外科になります。規模の大きな病院には総合診療科が対応するところもあります。

安静でもよくならない痛みを腰に感じる方、とりわけ、ひと月以上腰痛が続いている方は一度、早めの受診をおすすめします。

二つ目は、骨折かもしれないという状況で、安静でも痛みが続いている場合です。事故やきっかけになる出来事があってもなくても、日常生活でお困りでしたら元気でも骨折している場合があります。
痛みでトイレにいくのもつらい、歩けないなど、生活に支障が出ている場合は早めに整形外科の受診をお勧めします。

くわえて、整形外科で扱われる病気にも、その後の生活に関わる病気がいくつかあります。
病名を上げると、感染性脊椎炎、転移性脊椎腫瘍(がんの転移)、馬尾症候群があてはまります。
腰痛の他に、熱がある、夜に痛む、体重が減ってきているという症状があれば、仕事を休んででも早めに受診した方がよいでしょう。特に50歳を超えている方で上記にあてはまるという方は要注意です。

まとめ

病院で検査をしたのに「原因がわからない」と言われると途方にくれてしまいますよね。しかし、「原因不明の腰痛」イコール「治せない腰痛」ではありません。正しい知識をもって、しっかり行動にうつすことができれば治せる可能性があるんです。

たかがストレッチ、たかが筋トレと思われがちですが、続けることで大きな効果を期待できます。腰痛のない生活をとり戻すために、一歩踏みだしてみましょう。

【参考文献】
新しい腰痛対策Q&A 21 非特異的腰痛のニューコンセプトと職域での予防策(公財)産業医学振興財団,2012 https://kokoro.mhlw.go.jp/column/body001/ 松平浩先生
腰痛改善!インナーマッスルを鍛えて腰に良い姿勢を維持 https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_952.html 松平浩先生
ハレバレ 痛みと向き合うはじめの一歩 https://hc.kowa.co.jp/vantelin/harebare/first_step/vol02/ 吉田 一也先生
約85%は原因不明といわれる腰痛痛みのメカニズムと最新治療 https://www.yakult.co.jp/healthist/234/img/pdf/p20_23.pdf 大谷 晃司先生
医療法品社団 平成医会筋トレがメンタルヘルスに及ぼす影響 https://heisei-ikai.or.jp/column/muscle-training/ 塩入祐亮氏

腰痛ガイドライン2019
日本整形外科学会ホームページ,腰椎(こし)の症状一覧

著者情報

腰痛メディア編集部
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