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看護師をしていると、腰椎の術後に「運動してもよいのか?」と聞かれることが多々あります。その手術内容や患者さんの症状・経過により、運動開始の時期や、できる運動の種類に個人差はありますが、一般的には、術後はさらなる腰痛防止のために、積極的に運動したほうが良いといわれています。

腰椎の手術、種類による侵襲の違い

腰椎の手術で代表的なものは、「腰椎ヘルニア摘出術」「除圧術」「除圧固定術」などが代表的ですが、手術前の神経障害のレベルや、手術侵襲の強度により、術後の安静度は異なります。一般的には「ヘルニア摘出術」<「除圧術」<「除圧固定術」という順で、手術侵襲は高くなりますが、もともとあった筋力や、症状による個人差、回復の状況によりこの限りではありません。

腰椎手術後に使用する固定具について

腰椎の手術では、一般的に術後は何かしらの方法で腰椎およびその周辺の固定(コルセット)をします。当初のうちは患部の安静目的で行われますが、その固定具を見て、自身が求められている安静度の判断もできます。

腰椎ベルト

MAXベルトなどに代表されるマジックテープ(面ファスナー)とナイロン製の支持ベルトで固定がされます。手術侵襲が比較的小さく、手術後でも患者さん自身の筋力が十分残存していることが確認できる場合に使用されます。

ダーメンコルセット

腰椎と上下の胸椎や仙椎にかかる部位まであわせて固定されます。縦方向への支柱が数本入っていて、支柱により腰椎の安静と前後屈運動を制限し、患部の安静を保持します。中等度の手術の場合や大手術の術後回復期に使用されるコルセットです。

ハードコルセット

腰椎の上下と胸椎、仙椎を固定します。コルセット全体がプラスチック(ポリエチレン)製でできているため、腰部の安静がしっかりと保たれます。腰部の前後屈のみならず、回旋運動も制限します。大きな手術の術後急性期に用いられます。

腰椎の手術をした後、運動開始はいつから?

最近では、術後固定を施した状態で早ければ術後翌日から、遅くとも術後の経過に支障がなければ術翌々日にはコルセットを装着して離床を開始します。術後3~4日目にはリハビリも開始されます。入院中は基本的に理学療法士や看護師と一緒に筋力トレーニングやストレッチなどのリハビリをするので心配ないとおもいますが、退院後は自分でなにかしらの運動を継続する必要があります。
心配な方は、外来整形外科に紹介状を書いてもらい、外来のリハビリを受けましょう。

腰椎手術をして、退院した後にできる運動は?

退院後の運動について、正確には主治医に指示を仰ぎ、現在の病状にあわせて可能な運動の範囲を確認したほうが良いのですが、患者さんによっては退院時に確認し忘れてしまった、運動はしては行けないと思っていたという声を聴くこともあります。

基本的に退院ができたということは「術後の急性期を脱し、医学的な管理が不要になり社会生活を送れる」と判断されたためです。すなわち、無理のない範囲での運動は、術後の筋力低下を防ぐためにも積極的に行ったほうがよいでしょう。

どの腰椎手術でも共通してできる運動、「ウォーキング」

おすすめなのが「ウォーキング」です。ウォーキングはコルセットなどで体幹を固定していれば腰部へ負担がかかりにくく、腰椎の前後屈や回旋が起こりにくいのです。ウォーキングすることで体幹の筋肉や太ももの筋力が向上し、腰椎への負担を軽減します。

この時に注意してほしいのが、医師の指示が出るまではコルセットを使用して運動をすることです(多くのケースで術後3~4週はコルセットの装着が必要といわれています)。コルセットを使用しないでウォーキングすることで、正しい姿勢が保たれず、腰椎に負荷がかかる恐れがあります。

また、正しいコルセットの装着方法を習得し、運動により適切な位置からずれてしまった場合に、自身で装着しなおせるようにしておきましょう。

👉腰痛改善のためにウォーキングを始めようと思っている方必見!安全にウォーキングを行うための方法を解説します。

ウォーキングのうれしいおまけ①「ダイエット」

ウォーキングは、筋力を増強し、腰椎への負担を減らすばかりではなく、カロリー消費により肥満の解消へとつながります。太っていること自体が腰部へ負荷をかけているので、肥満の解消は新たな腰痛予防にもつながるのです。コルセットの装着による胃部の圧迫感により、食事摂取が少なくなったことも相まって、腰部の手術後にダイエットに成功する患者さんも多くいます。自分自身の健康と今後起きるかもしれない腰痛予防のためにも、ウォーキングはおすすめです。

ウォーキングのうれしいおまけ②「リラックス効果と腰痛軽減への期待」

ウォーキングをすることによってホルモンが分泌されることが分かっています。20分程度歩いていれば「エンドルフィン」や「ドーパミン」といった快楽を感じるホルモンが分泌されます。これには痛みを感じにくくする作用も認められているため、腰痛の軽減にもつながります。

また「セロトニン」というホルモンも分泌されることが分かっています。セロトニンは自律神経のバランスを整える作用があり、心身がリラックスできるように働きかけるホルモンといわれています。

ウォーキングのうれしいおまけ③「ビタミンDの産生」

ウォーキングのために外出して、日光を浴びることで体内では骨を強化するビタミンDが作られることも知られています。骨を丈夫にすることで、腰椎の破壊や骨折を防ぐことで、さらなる腰椎疾患を予防ができるでしょう。一般的には15分以上日光を浴びることがよいとされています。

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腰部の前後屈や回旋をともなう運動

腰椎の術後は、その手術内容により、腰椎へダイレクトに負荷がかかる前後屈運動や回旋運動は、早くても術後1カ月をめどに開始となることが多いようです(症例により3~6カ月かかることもあります)。中高年に人気のある「ゴルフ」はとくに、回旋による負荷が強くかかるスポーツで、場合によっては術後にプレイすることが困難になることもあります。

術前に主治医としっかりと話し合い、いつから復帰できるのかなどは理解しておいた方がよいでしょう。時間がかかることもありますが、プロではない限り多くの場合きちんと復帰できるケースがほとんどです。復帰までの時間をできるだけ伸ばさないためにも、術後早期からできる運動は積極的におこなうとよいでしょう。

まとめ

いかがでしたか?腰椎術後に運動してもよいのかどうか。たしなんでいるスポーツがあるけれども、術後に復帰できるかどうかお悩みの方。復帰までにかかる時間に個人差はありますが、復帰できることが多い傾向はあります。
腰椎手術を検討しているけれども、スポーツを続けたいなどのお悩みがある方への参考になれば幸いです。運動の前後にはストレッチや筋膜リリースなどで、身体のケアを行うようにしましょう。

参考:腰部手術に対するリハビリテーションのご案内 足立慶友整形外科

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腰痛メディア編集部
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