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ゴッドハンドと言われる名技術を持つ理学療法士、成田崇矢先生をご存知でしょうか?
成田先生はどんな腰痛でも改善に導けることで有名で、診療の予約は3ヶ月待ちという脅威的な人気を誇っています。

一般的に、腰痛の診療は、痛みを誘発させて原因を判断します。
しかし、成田先生はこれだけでなく、更に痛みを取って腰痛の原因を判断します。

まず原因と思われる部位に対して徒手的に介入し、原因部位にかかる負担を一時的に減らします。そこで痛みが取れた時に、初めてその部位が原因であると判断します。痛みが取れなければまた別の原因を疑い、他の痛みを取る方法で原因を追求します。
この一連の流れを「疼痛除去評価」と呼び、これが成田先生の診療の最大の特徴です。

 今回は特別に、成田崇矢先生の腰痛診療の現場に潜入し、取材することが出来ました。 

今回の患者さん

今回見学させていただいたのは、仙腸関節性腰痛を患っている30代女性の患者さん。(以下Aさん)
以前より成田先生の診療を受けていて、今日は腰の張りが気になるとのことでした。

問診

まずは座って、Aさんの困っていることを聞くところから始めます。

Aさん「仙腸関節がピキピキっとなる前に、腰が張ってくるんですよね。こうする(前に屈む)と痛みが和らぐんですが…。

前にレントゲン撮っていただいた時に反り腰って言われて、それに加えて猫背だなって自覚があって。反り腰と猫背が合わさって痛みを発生させる原因なのかな?と思ってます。

これを根本的に直す方法ってあるのかなって思って今日は来ました。」

成田先生 診察の様子

Aさんの目を見て、相槌を打ちながらしっかりと話を聞く成田先生。
真剣にAさんの腰痛と向き合っているのが伝わりました。

Aさん「(前に指導を受けた)仙腸関節多裂筋のコントロールというのは自分でもできるように
なってきたんですが、仙腸関節と多裂筋の痛みがおそらく、先に上の方が痛くなって発生しています。

原因がおそらく反り腰にありそうで、それを治さない限り永遠に発生し続けるのかなと…」

仙腸関節

仙腸関節

多裂筋

多裂筋

動作による痛みの確認

成田先生「それでは一度立って、前に屈んでみてください。痛みはありますか?」

成田先生は立ち上がったAさんに動作の指示を出し、痛みを確認していきます。

腰を反らした時、「(腰の)真ん中の骨がドンってくる感じ。」とAさんは腰をさすって見せました。

成田崇矢先生 診察の様子

成田先生「それがひどくなると、腰の痛みにつながる感じはしますか?」
Aさん「これが原因ではないと思う。もっと横にあるところ(筋肉)が張ってくる感じがします。」

少なくとも動作の中では痛みが出ないことがわかり、成田先生は「筋肉が張ってくることが原因で仙腸関節の痛みが生じてるんじゃないかと思う」と所見を述べました。

立ち姿勢の確認→悪化因子の特定→動作指導

動作の確認が終わったら、今度は姿勢の確認です。

Aさん「普段仕事(パソコン)は立っている姿勢でも座っている姿勢でも行なっていて、どちらかというと立っている時の方が『嫌な感じ』がします。座っている時は多分、意識的に背中の筋肉が張らないように猫背になっているので。」

この発言を聞いて、Aさんにまっすぐ立ってもらい、成田先生はAさんの両肩に手を置きました。
上から少し力を加えて立位での筋活動を確認しました。その結果、背筋(多裂筋)が緊張しないことを確認しました。

成田崇矢先生 診察の様子

次に、いつも仕事をしている時と同じような、腕を前に出した状態で再度上から力を加えると、Aさんの体がぐらっと倒れました。

成田崇矢先生 診察の様子

Aさん「体がぐいーんと曲がる感じ、膝が曲がる感じがします」

腕を前に出しただけなのにも関わらず、体に大きく変化が出たことにAさんは驚いた様子でした。
成田先生曰く、Aさんは普通に立つのは上手ですが、腕が前に出た瞬間にお腹のスイッチが切れてしまうとのこと。

ここから、成田先生による正しい姿勢の指導が始まりました。

その方法は「普通に立ったら、お腹に力を入れて、それから腕を前に出してください。」

成田先生による『お腹のスイッチの入れ方』はたったこれだけでした。

言われた通りに、Aさんはお腹に力を入れてから腕を前に出し、再び成田先生が上から力を加えました。すると、先程とは打って変わって、全く体幹がブレませんでした。

成田崇矢先生 診察の様子

スイッチを入れることが出来るようにならないと、また腰が張ってきてしまうため、毎日の生活で意識するようAさんに指導を行い、立ち姿勢の確認は終了しました。

座り姿勢の確認→悪化因子の特定→動作指導

立ち姿勢の確認が終わったら、座り姿勢の確認が始まりました。

まず悪い姿勢で座ってもらい、痛みが生じる部分を確認します。

成田崇矢先生 診察の様子

Aさんは座ると、腰の下の方に痛みが生じるようでした。

次に、良い姿勢で座ってもらいます。

成田崇矢先生 診察の様子

姿勢の整え方を見て、成田先生はAさんの体の動かし方が間違っていることに気がつきました。

成田先生「良い姿勢になろうと、今は背筋を使っています。ここを使っているとまたもっと痛くなるので、ここを使わないようにして座れるようになることが大切です。」

自分では、どこの筋肉を使っているなんて中々わかりませんよね。
読者の皆さんの中にも、もしかしたら間違った姿勢の正し方で腰痛を悪化させている方もいるかもしれません。
成田先生がAさんに指導した正しい姿勢の取り方は、以下の3ステップでした。ぜひ読みながら試してみてください。

1. まず、背中を曲げたいわゆる『悪い姿勢』で座ります。
成田崇矢先生 診察の様子

2. 体をそのまま前に倒します。
成田崇矢先生 診察の様子

3. 肩甲骨を後ろに寄せます。
成田崇矢先生 診察の様子

4. そのまま上体を起こします。
成田崇矢先生 診察の様子

こうすることで、背筋を使わずに良い姿勢になることができます。
肩甲骨を寄せすぎることで背筋が張るということはそこまでありませんが、やりすぎると今度は他の場所に力が入ってしまうため、楽な感じで行うことがポイントだそうです。

Aさん「背筋(多裂筋)は張っていないけど、胸は張っている」

Aさんは今までと異なる感覚に驚いた様子でした。

その後、最初のように悪い姿勢からそのまま起きあがってもらい、背筋が緊張してしまうことをAさんに再確認してもらい、座る姿勢での悪化因子の説明と、その修正方法の指導は終了しました。

腹筋を鍛えるエクササイズ

立ち姿勢も座り姿勢も、腹筋がきちんと使われることが大事ということで、最後に腹筋を鍛えるエクササイズの指導が行われました。

1. まず、ベッドの上に仰向けで寝て、両膝を立て、お腹の上に両手を起きます。
成田崇矢先生 診察の様子

2. 骨盤を後傾させ、お腹に力を入れ、腰の下のスペースを無くすように背中をベッドに押し付けます。
(腹筋の筋力確認を行うため、確認の際、成田先生は腰の下に手を入れていました。)
成田崇矢先生 診察の様子

3. 起き上がるように頭を起こします。
成田崇矢先生 診察の様子

4. そのままの姿勢でお尻を上げます。
成田崇矢先生 診察の様子

5. お腹に力を入れて背中を押しつけたまま、ゆっくりと頭を元に戻します。
成田崇矢先生 診察の様子

6. お腹に力を入れて背中を押しつけたまま、お尻を元に戻します。
成田崇矢先生 診察の様子

7. 最後に、お腹の力を抜きます。

振り返り

最後に、これからAさんに継続して行なって欲しいことを、診察を振り返りながら説明しました。

  • 立って仕事を行う時は、まずお腹に力を入れてから。
  • 座る時は、体を前に倒し、肩甲骨を寄せてから姿勢を正す。
  • 腹筋エクササイズを行って腹筋の筋力をキープする。

Aさん「最初の頃と比べるとだいぶ良くなっていることは確かで、痛みは自制内になってきているので、あとは生活の中でこの3つを習慣づけることが大事。もう大丈夫かなと思います。」

こうして、この日でAさんは成田先生の診療を卒業しました。

成田先生の診察を振り返って

初めて成田先生の腰痛診療の現場を見学させていただきました。
技術力の高さだけでなく、患者さんを治した先に患者さん自身でマネジメント・コントロールできるところを目指して関わっている姿に感動しました。
どこに行っても治らなかったといった患者さんが成田先生のもとに訪れるのも納得で人気な理由を痛感しました。

筆者も腰痛持ちで病院や整骨院を受診したことが何度もあります。
それでも原因が分からず、あいまいなまま、言われるがままにストレッチを行い、いつ腰痛が悪化するのかストレスな日々でした。

今回、成田先生の臨床の場で一番インパクトに残ったのは患者さん自身が自分で自分の体の状態を理解していたことでした。診療の中でしっかりとAさんの悩みを聞き、実際に動いてもらいながら体の動かし方や痛みの変化を観察し、仮説を立てて、痛みを取れるまで様々な方法を試していました。ただ動作の指示するだけではなく、どういう効果があるのかを説明し、患者さんには感じたことを口に出してもらい、こういったコミュニケーションにより体の状態に対する理解が深まるのだと感じました。
Aさんと同じく仙腸関節性腰痛でお困りの方は、今回出てきた3つのポイントを生活の中に取り込んでみてはいかがでしょうか?

~成田先生、ありがとうございました~
全国に約2,800万人もいる腰痛患者。その中でも約8割の人が見えない腰痛に悩まされています。自分の腰痛がどこから来るのか不安な人はきっと多いと思います。正しい知識を身につけ、自分の腰痛の原因と対策方法を知り、継続することが大切です。ZEN PLACEでは、皆さんの生活の質を第一に考えています。痛みがあれば生活のパフォーマンスが下がってしまいます。腰痛の根本的な原因を取り除くために、今後もコンテンツを通して一緒に解決していけたら嬉しいです。

今回取材にご協力いただいたのは・・・
成田崇矢先生の近影
成田崇矢先生
桐蔭横浜大学スポーツ健康政策学部スポーツテクノロジー学科教授 理学療法士
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
全米公認ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(NSCA-CSCS)日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー

著者情報

庄司 しおり
庄司 しおり

保有資格

看護師

経歴

大学病院にて看護師として勤務。

成田先生の運動療法に出会い、7年間悩まされていた腰痛がみるみる改善。今では自分で腰痛をセルフコントロールできる状態になりました。

同じく腰痛に悩む多くの人々に少しでも役に立てるよう情報発信していきます。

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